Z世代とは
Z世代の生まれ年に関して明確な定義はありませんが、「1990年代後半から2010年代序盤までに生まれた世代」とされるのが一般的です。もともと米国を中心に「Generation Z」と呼ばれていた世代ですが、日本でもその世代は新たな価値観や傾向を持っているため「Z世代」と呼ばれ区分されるようになりました。
それでは、Z世代とはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
【特徴1】デジタルネイティブである
Z世代が生まれたときには、すでに世間ではインターネットが一般的に使われており、パソコンやモバイルデバイスの利用が当たり前となっていました。Z世代は物心がついたときからデジタルデバイスを使ってインターネットで調べたりSNSで交流したりしてきたため、デジタルの使い方に優れている「デジタルネイティブ」な世代だという特徴があります。
Z世代の一つ上の世代である「ミレニアル世代」は、青春期や成人期にインターネットの普及を経験しています。そのためミレニアル世代もデジタルには慣れ親しんでいる世代ではありますが、デジタルとともに成長してきたZ世代のほうがデジタルに近しい存在と言えるでしょう。
【特徴2】SNSの利用が盛んである
Z世代はデジタルネイティブであるゆえに、SNSも身近に存在している「SNSネイティブ(ソーシャルネイティブ)」だという側面もあります。
2021年に総務省が行った「通信利用動向調査」によると、Z世代が属する13~19歳のSNS利用率は90.7%、20~29歳では93.2%という結果になりました(※1)。他の年代と比較すると非常に高い数値となっており、SNSの利用が盛んであることがわかります。
SNSは自分のことについて発信したり、他のユーザーとコミュニケーションを取ったりするだけでなく、情報収集の手段の一つとしても使われているのも特徴です。テテマーチ株式会社が2023年に全国の15歳〜58歳の男女3,000人を対象に行った調査では、Z世代はモノやサービスの購入・利用において参考にしている情報源として「SNS」を挙げた人が最多でした(※2)。実店舗やテレビCMなどよりも、SNSを参考にして商品購入やサービス利用を検討する人が多いようです。
※2:【男女3000名回答/Z世代の消費に対する意識調査】Z世代が購買時に参考にする情報源「SNS」6割「店頭」は1割にとどまり他世代より低い結果に|PR TIMES
【特徴3】新しい価値観を持っている
Z世代は生まれ育った時代背景の影響で、それより上の世代とは異なる価値観を持っている傾向にあります。
1990年代はバブルが崩壊して経済の低迷が顕著になり、2008年に人口のピークを迎えてから少子高齢化の一途をたどっている日本。リーマンショックや東日本大震災などの出来事もあり、Z世代は激しく変化する時代で生まれ育ってきました。そのため、社会的な課題に対する意識が高いとされています。
株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが運営する研究機関「SHIBUYA109 lab.」がZ世代を対象に実施した調査によると、半数以上の若者が社会的課題の解決に興味があると回答しています(※1)。
また、株式会社電通と株式会社電通総研の調査では、日本のZ世代は「人種差別」「男女格差」「少子化・高齢化」のトピックに関心を抱いているという結果も出ました(※2)。
最近ではSDGsに対する取り組みも注目を集めており、Z世代は社会的課題やSDGsなどへの意識が高い傾向にあることが特徴です。
※1:Z世代の半数が社会的課題に関心/約7割が取り組む企業へ好印象【SHIBUYA109 lab.調査】|Marke Zine
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Z世代へのマーケティングを強化する重要性
なぜZ世代を対象としたマーケティングを強化しなければならないのでしょうか。その理由を解説していきましょう。
今後の消費トレンドを担う世代である
Z世代は1990年代後半から2010年代序盤にかけて生まれた世代で、現在の「若者」「若年層」と言われる年代が該当します。すでに社会人として仕事をしている層もいれば、まだ学生でこれから社会へ進出する層も含まれています。Z世代はこれから社会で活躍して収入を増やしていき、日本社会の消費トレンドを創り出していく層だと言えるでしょう。
そのため、今後の消費の中心となるZ世代に早い段階からアプローチすることで、将来につながる関係性を構築していく必要があります。これから購買力を高めていくZ世代へのマーケティングは、現在だけでなく未来の収益にもつながる重要な取り組みです。
新しいアプローチが必要となる
Z世代は、みずからインターネットを駆使して情報を収集し、購入するかしないか決定するスキルを持っています。インターネット上の広告やSNS上のレビューなどの中から、自分にとって必要な情報を取捨選択して「この商品を購入する価値があるか」を見極められるのです。
また、社会的課題に対する価値観を大事にしているため、企業にも社会的な取り組みを求める傾向にあります。株式会社博報堂が「環境や社会に与える影響を意識して商品を購入しているか」を10点満点で調査した結果、16~19歳は平均5.48点、20~29歳は平均5.22点で、全年代の平均4.98点よりも高い数値となりました。このことからも、Z世代は社会的な取り組みを行っている商品を購入したいと考えている傾向が強いと言えるでしょう。
このような背景から、Z世代には今まで通りのマーケティング手法は通用しなくなっています。新たな価値観を持つZ世代に対し、企業も新たなアプローチが求められているため、従来とは異なる視点でのマーケティングが必要とされています。
発信力・拡散力が高い
SNSネイティブのZ世代は、気軽にSNSで情報を発信します。また、良いと思った投稿は積極的に拡散するため、波及効果は計り知れません。
発信力・拡散力が高いZ世代を味方につけられれば、企業は膨大なコストをかけて広告を出稿したり手間をかけてコンテンツを作成したりしなくても、自社の商品・サービスを大々的に広めることが可能です。実際に、SNSで活動するインフルエンサーに紹介されてヒットした商品や、投稿を拡散されてファンを増やした企業は少なくありません。
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Z世代の購買行動の特徴
Z世代に対するマーケティングを強化するうえで、購買行動の特徴をつかんでおく必要があります。Z世代の購買行動に関する主な特徴を以下にまとめました。
多様な消費体験を望んでいる
従来は、ブランド品を購入したり高級車を所有したりするなど、形のある「モノ」を消費・所有する「モノ消費」が重視される傾向にありました。しかし新しい思考や信念を持つZ世代には、体験や価値観などを重要視する消費体験が好まれています。
具体的には「コト消費」「トキ消費」「イミ消費」「エモ消費」などがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
コト消費
「コト消費」とは、商品やサービスの利用などを通じて得られる体験・経験を重視する消費行動です。コト消費の一例は、以下の種類があります。
- 旅行
- マッサージ、エステ
- スキューバダイビングやスキーなどのアクティビティ
- 遊園地
- 映画や舞台の鑑賞
- キャンプ
市場が成熟してモノがあふれている日本では、モノを消費・所有するだけでなく、その先にある「体験」に価値を見いだすコト消費が重視されていったのは当然の流れとも言えるでしょう。
トキ消費
「トキ消費」とは、その時・その場所でしか体験できない一回性の盛り上がりや貢献を楽しむ消費行動です。コト消費と同じく体験を重視する消費行動ですが、トキ消費を定義した博報堂によると以下の3つの要件が設けられています。
- 非再現性:時間と場所が限定されており、同じ体験が二度とできない
- 参加性:不特定多数の人と体験や感動を分かち合う
- 貢献性:その場の盛り上がりに貢献している
たとえば、以下のようなものはコト消費に該当します。
- 音楽のフェスやライブ
- ハロウィンイベント
- 映画の応援上映
このように、その時・その場所で多くの人と一緒に体験し、自分が楽しむと全体も盛り上がることに価値を見いだしたのがコト消費なのです。
イミ消費
「イミ消費」とは、社会的・文化的な意味を意識した消費行動を指します。「この商品を購入するとどのような社会的意味があるか」「このサービスは文化的に貢献できるのか」といった意識で選択するため、モノを購入する場合にも、コトを体験する場合にも当てはまると言えるでしょう。
具体的には、以下のようなものはイミ消費として挙げられます。
- サステナブルな商品
- 復興支援商品
- ふるさと納税
- クラウドファンディング
社会的課題への意識が高いZ世代ならではの消費行動と言えるでしょう。
エモ消費
「エモ消費」とは、商品・サービスの価格や機能性ではなく、その商品・サービスの利用によって感情的(エモーショナル)に得られる満足度を重視する消費行動です。
Z世代の若者を中心に、精神的な満足を感じたときや心が揺れ動かされたときに「エモい」という言葉がよく使われていますが、エモ消費とは「エモい」という感情を得るために商品・サービスを購入・利用することだと言えます。
エモ消費の具体例には、以下のようなものがあります。
- 好きなアイドルやキャラクターの推し活をする
- 開発秘話や社会的価値も考慮して商品を購入する
- 現像が大変なフィルムカメラをあえて使う
エモ消費は、単に物欲を満たすのではなく、好きなモノ・コトや達成感を得られるモノ・コトにお金をかけて「エモい」という感情を得ます。同じコンテンツやトピックという共通点を持っている知らない人とも感情を共有でき、コミュニティを創出しやすい傾向にあると言われています。そのため、孤独を感じやすい現代社会では、エモ消費を求める人は増えていくのではないかと予想できるでしょう。
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あらゆるチャネルから情報を収集する
デジタルネイティブのZ世代はデジタルを活用した情報収集に優れており、多様なチャネルを活用します。たとえば、コーポレートサイトやサービスサイトなど企業が発信しているWebサイトのみならず、SNSや動画プラットフォーム、レビューサイト(口コミサイト)、広告など、あらゆるチャネルが情報収集源です。企業が発信している情報だけでなく、第三者によるレビューや世間的な話題性など、さまざまな情報が購入・利用の判断基準となっています。
さらに、Z世代はこれらの情報収集源をうまく使い分けているという点も特徴です。「このサービスの機能を知りたいからサービスサイトを確認しよう」「この機能が役に立つのか、SNSで口コミを探してみよう」というように目的に応じてチャネルを使い分けます。
利用後に情報を発信する
SNSネイティブのZ世代はSNSの利用が当たり前になっているため、気軽に情報を発信する習慣がついており、ポジティブな情報もネガティブな情報も共有したいと思う傾向です。そのため、Z世代は商品・サービスを利用して終わりではなく、その後に感想や要望などの情報を発信する傾向が強く見られます。
また、SNSは拡散力が高く、発信された情報がすぐに拡散されて大きな影響につながる場合も。今までその商品・サービスを知らなかった層にも情報が届き、新たな顧客を獲得できることもあります。
効率性を求めている
コスパ(コストパフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ世代は、コストや時間の無駄を嫌い効率性を求めています。一例として、以下のような商品・サービスが好まれるでしょう。
- リーズナブルながら使い勝手の良いプチプラ商品
- スキマ時間を活用できる学習サービス
- 自宅で注文・宅配してくれるデリバリーサービスやネットスーパー
商品・サービス自体の効率性だけでなく、選びやすさや買いやすさなど購入・利用までの効率性も重要視されます。
Z世代の購買行動モデル「EIEEB」も登場している
AIDMAやAISASといった定番の購買行動モデルがありますが、Z世代の購買行動はこれには当てはまらないと言われています。そこで、Z世代の購買行動に合わせた新たなモデル「EIEEB(イーブ)」が登場しました。
- Encounter:スマホで情報収集していると、魅力的な商品・サービスを出会う
- Inspire:その商品・サービスに感化される
- Encourage:SNSなどの情報源を通じて不安を解消して、購入の後押しをしてもらう
- Event:購入を「イベント」と捉え、最適な方法で購入する
- Boost up:自分の感想を他者と共有して高め合う
このEIEEBの背景には「ときめき」があります。自分がときめきを感じる商品・サービスを、ときめきを感じられる方法で購入し、自分が感じたときめきを共有したいという想いがあるため、従来の購買行動モデルとは一線を画しているのです。
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Z世代マーケティングを実施する8つのポイント
Z世代の購買行動の特徴をふまえ、Z世代をターゲットとしたマーケティングを実施するポイントを8つ紹介します。
信頼性の高い情報を発信する
Z世代はあらゆるチャネルを駆使して情報を収集し、自分にとって価値のある情報を見極めるスキルを持っています。そのため、企業が一方的に発信している営業色・宣伝色が強い情報は「信頼できない」と捉えられ、敬遠される傾向です。また、透明性のない情報や誤った情報を発信すると、すぐに拡散されて炎上するリスクもあるでしょう。
Z世代に限った話ではありませんが、質の高い情報を発信して信頼を得ることが重要です。
- 裏付けとなるデータを提示する
- 製造工程や製造工場などの情報を開示する
- 第三者機関からの認証や評価を得る
このように、信頼性のある正確な情報を発信しましょう。
さまざまな消費体験を提供する
Z世代はコト消費やトキ消費などの多様な消費体験を望んでいるため、単に商品・サービスを提供するだけではなく、それに関連する体験や意味の提供も重要です。
- 環境問題や社会問題に配慮した素材を使用する
- 購入金額の数%が寄付になる
- リアルイベントを開催する
- アイドルやキャラクターとタイアップする
Z世代のニーズに合わせたマーケティングを行うことで、Z世代はさらに商品・サービスやブランドに対する信頼感を高め、長きにわたってファンになってくれる可能性もあります。
トレンドを取り入れる
変化の激しい時代で生まれ育ったZ世代は、新しいことを受け入れて適応する力があるため、トレンドもいち早く取り入れたいという傾向が見られます。そのため、Z世代マーケティングではトレンドを取り入れた施策が効果的です。
トレンドに関する情報を手に入れるには、SNSの活用が欠かせません。主にSNSで情報収集をするZ世代に合わせてSNSを活用し、トレンドに関する情報を入手しましょう。
また、コミュニティサイトを運営したりアンケートを実施したりして、Z世代から直接ニーズや意見を聞きとるのも有効です。時代に合わせてニーズも変化するため、トレンドを取り入れつつニーズを反映したマーケティングを展開できます。
SNSを活用する
SNSの利用率が高いZ世代をターゲットとするならば、SNSを活用したマーケティングは必須です。
SNSと一口に言っても、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなど多様なSNSがあり、Z世代は目的に合わせてSNSを使い分けています。SHIBUYA109 lab.の調査によると、「Xは自分が興味のあることを知る」「Instagramは友だちの近況を知る」「TikTokは暇つぶし」など、SNSによって利用目的が異なるようです(※)。
そのため、企業はそれぞれのSNSの特徴をふまえたうえで、どの情報をどのSNSで発信するか使い分ける必要があります。また、「Xは短いテキスト」「Instagramは見栄えの良い写真」というようにSNSごとに発信方法も異なるため、情報の“魅せ方”も重要になるでしょう。
動画コンテンツを活用する
YouTubeやTikTok、Instagramなど動画を投稿できるプラットフォームやSNSの台頭により、Z世代は動画による情報収集も一般的です。動画はテキストや画像だけでは伝えきれない魅力を訴求したり、キャッチーで印象に残るアプローチをしたりするのに効果的なため、動画コンテンツをうまく活用してZ世代へアプローチしましょう。
ただし、タイパを意識するZ世代は短尺動画を好む傾向にあるため、動画コンテンツを制作する際にはコンパクトにまとめる必要があります。また、Z世代は長尺動画は倍速再生をするため、長尺動画を制作する場合は倍速再生にしても要点が伝わるように編集を工夫しましょう。
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インフルエンサーとタイアップする
Z世代はSNSなどで活動しているインフルエンサーの影響を受けやすく、インフルエンサーが発信する情報をきっかけにして商品に興味を持つケースが少なくありません。Z世代への影響力のあるインフルエンサーとタイアップすると、大きな効果が期待できます。
インフルエンサーを起用する際には、自社のターゲット層から支持を得ているかどうか見極めましょう。いくらフォロワーの多いインフルエンサーでも、フォロワー層が自社のターゲット層と異なると、期待している効果が得られません。
また、ステルスマーケティングは景品表示法違反にあたるため、インフルエンサーに商品紹介を依頼する際には法規制を遵守しましょう。
シェアできる仕組みを作る
SNSの利用が日常的なZ世代は、商品・サービスの利用後に感想や意見などをシェアする傾向にあります。シェアしたくなるような魅力的な商品・サービスを開発するのはもちろんのこと、シェアできる仕組み作りも必要です。
- ハッシュタグキャンペーン
- 写真投稿コンテスト
- 投稿してくれたユーザーに対する特典
このような仕組みを作り、SNSによる情報発信と拡散を促しましょう。
パーソナライズしたアプローチをする
情報を見極める力に長けているZ世代は、企業からの画一的なアプローチや宣伝色の濃い情報はシャットアウトすることがあります。一人ひとり価値観や意見が異なるため、個々に最適化したパーソナライズなアプローチが求められます。
たとえば、属性や閲覧履歴に合わせて訴求するキャンペーンを変えたり、過去に購入した商品に合わせて別の商品を提案したりするなど、パーソナライズしたマーケティングが効果的です。
まとめ
Z世代はこれからの日本を背負う層であり、今後ますます影響力を高めていく世代です。今のうちから早めに関係性を構築することで将来につながる可能性を秘めています。
ただしZ世代は新たな価値観を持っているため、今までのマーケティングでは効果が得られない場合があります。SNSや動画コンテンツ、インフルエンサーなどを活用し、企業も新たな視点でマーケティングを実施する必要があるでしょう。
本記事で紹介したマーケティングのポイントを参考に、Z世代の心をときめかせる施策を打ち出してみてください。