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ブランドは気まぐれな消費者とどう向き合うべきか?

ブームから浸透へ。第3の消費潮流「トキ消費」を生み出すための3つのヒントを解説

 モノ消費、コト消費に続く消費潮流「トキ消費」とは? 時代背景や情報環境の発展、社会状況の変化などを踏まえ、“一つのブーム“ではなく、より大きなくくりで注目すべき消費潮流について、博報堂生活総合研究所 上級研究員の夏山明美さんにお話しいただきました。

コト消費とは? モノ消費、コト消費との違い

MarkeZine編集部:はじめに、トキ消費とはどのような消費体系を指すものなのか、定義を教えてください。

夏山:私たちはトキ消費を「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」と定義づけ、モノ消費やコト消費との違いを明確化するために、次の3つの要件を定めています。

株式会社博報堂 生活総合研究所 上席研究員 夏山明美氏
株式会社博報堂 博報堂生活総合研究所 上級研究員 夏山明美氏

 1つ目は、時間と場所が限定されていて、同じ体験が二度とできないという「非再現性」。2つ目は、不特定多数の人と体験や感動を分かち合うという「参加性」。3つ目は参加することで、その場の盛り上がりに貢献していると実感できる「貢献性」です。多数の消費事例を研究する中で、トキ消費と考えられるものには、この3要件が共通して見られました。

MarkeZine編集部:博報堂生活総合研究所では、いつ頃からトキ消費の兆候を捉えられていたのでしょうか?

夏山:トキ消費の潮流は2010年頃から見られるようになったと分析しています。ハロウィンで渋谷に人が集まるようになったり、ライブで観客も歌って踊って盛り上がったり、映画の応援上映が始まったり。また、フェスブームが到来し、フェスが夏の娯楽イベントとして定着しつつありました。こうした従来のモノ・コトとは違う、生活者も参加して楽しむような消費行動が、広がっていく兆候が見られたのです。

 ちなみに、これは私の個人的な見解ですが、音楽業界で起こる事象の中には、その他の業種業態にも広がっていくものがあると見ています。たとえば、CD売上の縮小後、いち早くサブスクを取り入れたのは音楽業界でしたし、ライブやフェスなどトキ消費の兆候が見られ始めたのも音楽業界からでした。消費動向を把握し、次の流れを読むために、音楽業界には昔から注目しています。

「今、ここに存在すること(=Be)」に価値が見出される時代

MarkeZine編集部:次にトキ消費が出てきた背景について、教えていただけますか。

夏山:トキ消費は、モノ消費・コト消費の次に出てきた消費の潮流であると位置付けています。

 1970~80年代、人々の生活にはまだそれほどモノが溢れていませんでした。なにか新しいモノ、みんながまだ持っていないモノを“所有”することに価値があった。「Have」が人々の喜びだった時代です。

 そこから1990年代に入り、モノが一通り行きわたると、モノを持っているだけでは欲求を満たせなくなってきます。モノを持つことより、持っているモノでどんなコトを成すか? が大事になったんですね。体験をすること(=Do)が、この時代の喜びでした。

 そして2010年代に入ると、ソーシャルメディアが興隆し、生活者は日々たくさんの情報に触れるようになります。人々の体験に関する情報に常にアクセスしていると、おもしろいことに、自分で体験していないことでも、「なんとなくわかっている」ような気がしてくるんです。

MarkeZine編集部:たしかに、その感覚はわかるかもしれません。「誰が・どのように・何をして・どうだったのか」まで見聞きすることが日々無数にあり、「それ知ってる」の状態から先に進まないことも多々あります。

夏山:そうですよね。けれど、質感や食感、光や香り、音の響きなど、その時・その場所に存在しなければわからない五感による情報もあります。「今、ここに存在すること(=Be)」に人々が価値を見出すようになった――トキ消費が生まれた背景には、こうした要因があると考えています。

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この記事の著者

塚本 建未(ツカモト タケミ)

ライター・編集者・イラストレーター。早稲田大学第二文学部を卒業後、社会人を経て再び早稲田大学スポーツ科学部へ進学。2度目の学部卒業後は2つの学部と高校デザイン科で学んだ分野を活かすためフィットネス指導者向け専門誌「月刊Fitness Journal」編集部に所属してキャリアを積み、2011年9月から同雑誌の後継誌「月刊JAPAN FITNESS」編集部の中心的な人物として特集・連載など数多くの誌面を担当した。現在はWebメディアに主な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/21 09:30 https://markezine.jp/article/detail/45503

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