Z・α世代をターゲットにした「推し活ナイト」
飯髙:まず、清水エスパルスと石川さんについてご紹介いただけますか。
石川:清水エスパルスはJリーグが1993年に発足した当初から加盟している、「オリジナル10」のクラブです。創設自体は1992年で、2025年で33年を迎えます。S-PULSE MEMBERの会員数は5万名超で、ファン層(JリーグIDのお気に入り登録者)の分布は静岡が約40%、東京・神奈川・千葉で合わせて40%と関東圏にファンが多いです。

私は2020年からスタートした「フルスタジアムプロジェクト(全社横断でスタジアムを満員にするためのプロジェクト)」のリーダーをしており、2022年頃からはJリーグからの外部支援も受けています。
飯髙:マーケティング施策は静岡にお住まいの方と、関東圏の方を意識しているんですか?
石川:そうですね。集客イベントや招待事業などを実施するときは、ホームタウンである静岡市と県内10市町のファミリータウン、首都圏にお住まいの方、特にZ・α世代とファミリー層を中心にアプローチしています。もちろん、ファン・サポーターに向けたコミュニケーションも行っていますが、新規のお客様を増やしていきたいと考えています。
具体的な取り組みとして、たとえばファン投票でエスパルスNo.1イケメン選手を決める投票をメインに「推し活」をテーマにした企画「推し活ナイト」があります。オンラインで事前投票を募り、TOP5を絞り込んだ上で試合当日の会場付近に等身大パネルを置いて、ハート型のマークをファンが直接マーカーで塗りつぶす形で投票してもらいました。試合終了後に、No.1を発表する仕組みです。

TikTokでの発信を強化したり県内にOOHを掲出したりするなど、事前プロモーションも含めて、みなさんに楽しんでいただきました。2024年に実施したイベントの中でも評価が高かったですね。
飯髙:オンラインで事前に盛り上がりを形成し、試合当日の最終投票にすることで「だから来てくださいね」と行く理由を作ったのですね。この企画は若年層とファミリー層どちらをターゲットにしたものですか?
石川:「推し活ナイト」は、Z・α世代に向けたものです。大学生・専門学校生の無料招待も同時に行いました。長年、地域貢献の一環で小学生招待は継続的に実施していますが、招待対象としては機会が少ない大学生への企画をまじえた形です。「推し活ナイト」はフェイスタオルやフォトステッカーなどの商品化にも広がり、売上向上につながりました。
ファンの発信はイベント企画のヒント
石川:2024年からは部活動を積極的に打ち出しています。部活動は、ファン層が呼びかけあって、選手応援タオルを持って写真を撮る「タオル部」が発足したことから始まりました。その後、スイーツ好きの選手が「スイーツ部」を立ち上げたり、既存の「犬部」に、愛犬家の選手が出席したりと発展しています。

2025年からは公式に「アイスタ学祭」として部活チケットを販売し、たとえば「カメラ部」は、ピッチサイドから選手のウォーミングアップを見学するときに写真を撮れるなど、いろいろな部活を楽しめるコンテンツにしました。
飯髙:クラブ側が拾ってくれると、ファンとしてもうれしいですよね。さらに、しっかりとファンのコミュニティに意味を持たせて参加型のイベントにしている点は、エンタメ以外の業界でも施策のヒントになりそうです。