データにはお客様との絆を深める可能性がある
――本日はよろしくお願いいたします。まずは、再春館製薬所が、長年大切にされている「お客様個人に向き合う応対」を続ける中で、本格的なAI活用に踏み切きるに至った、その背景からお聞かせいただけますか。
再春館 古江:弊社は「大きな個人商店」という理念を掲げ、「100人に1回より、1人に100回」という末長いお付き合いを目指しています。お客様お一人おひとりに深く寄り添う対応を重ねた結果、30年、40年とドモホルンリンクルをご愛用いただくお客様もいらっしゃって、再春館製薬所全体への信頼につながっています。
再春館 古江:その応対品質を支えているのが、お客様プリーザー(Pleaser)です。お客様プリーザーは注文や質問に答えるだけでなく、お客様それぞれのお悩みを聞き、提案をしてきました。その応対履歴はデータで蓄積しており、どのお客様プリーザーが応対しても、同じ品質を担保できる仕組みです。言わば、お客様との関係性を「紡ぐ」ためのデータが、社内に大量に眠っている状態でした。
この膨大なデータを、応対以外の新たな体験創出として、最大限活用していくことが、経営的な課題となっていました。
そんな中、2032年の創業100年に向けた新たな挑戦「ポジティブエイジカンパニー」を掲げる中で、AIへの取り組みが必須であると経営層が判断しました。生成AIのブームが加速したことも追い風となり、機械学習から生成AI活用まで、全社的なAI推進が本格的に始動しました。
再春館 園田:全社的にAI活用の火がついたのは、やはりChatGPT-3.5の登場でした。それ以前からチャットボットなどの取り組みはありましたが、当時のAIは現場にとって自分事化しにくいものでした。
しかし、私たちがAIの勉強会を社内で集中的に実施したところ、製造部門やオペレーター部門など、PC業務が限定的な部門でもAIに触れるようになり、一気に社内のAIリテラシーを向上することができました。
今では、システム部門ではない社員が自らAIを使って業務効率化のプログラムを作る動きも加速しています。この全社的なAIを使ってみようという土壌が、その後のGROWTH VERSE様との取り組みを加速させる大きな要因になったと感じています。
ラストワンマイルを埋める伴走支援
―― AI活用の必要性が高まる中で、数あるAIベンダーの中からGROWTH VERSE様をパートナーに選定された理由、そしてどのような初期の取り組みからスタートされたのでしょうか。
再春館 古江:弊社はシステムをフルスクラッチで構築していることもあり、システムの根本的な重さやデータ活用の課題を感じていました。
GROWTH VERSE様の「AIMSTAR」というCDP・MA統合プロダクトと、データ活用を推進するパートナーとしての姿勢が、当時の弊社の課題と今後の成長戦略に合致したため、協業が始まりました。
GV 葉山:再春館製薬所様の代表取締役CEOである西川様をはじめ、経営層が素早い意思決定をしてくださったのが、プロジェクトの大きな推進力となりました。ただ、全社を巻き込むには段階が必要なため、まずは古江様、園田様を中心とした専任チームを立ち上げていただきました。
私たちGROWTH VERSEは、短期的な成果だけでなく、中長期でお客様とのコミュニケーションを大きく変えていくお手伝いをしたいと考えていました。再春館製薬所様の強みは、お客様プリーザーによる親身なコミュニケーションの履歴というデータ資産にあります。
しかし、コミュニケーションが電話だけでなく、LINEやメールへとシフトしていく中で、お客様の理解を深め、チャネルを問わない真のOne to Oneコミュニケーションを実現するための伴走支援が必要でした。
GV 葉山:そこで、まずはクイックに成果が出せる領域として、ダイレクトメール(DM)とメールの領域でのPoCを定義しました。私たちのミッションは、クライアント企業様のグロースを実現するためのAIを作ること。まずは成果を出し、経営パートナーとして認めていただくことに注力しました。
チャネルに関して言えば、私たちはすべてのチャネルで最適なものを届けたいという考え方でスタートしました。DMやメールの施策で得られた知見を、LINEや手書きのお手紙の施策にも横展開し、最適なお客様に最適な体験を届けることに挑戦しています。
単なるチャネルごとの最適化に留まらず、お客様のジャーニー全体を捉え、複数のチャネルをまたいだシナリオ設計をご提案しました。どのチャネルで、どのタイミングで、どういうクリエイティブをお届けするかまで、現場のメンバーと密に協業しながら運用サポートをさせていただいています。

