ソニーマーケティングが支援する、リアル店舗のデータ活用
ソニーマーケティングはB2B事業において、クライアント企業の課題解決およびビジネスを支援するソリューションを提供している。ソニーが培ってきた独自の映像・AI技術を中心としつつ、課題解決のためには外部パートナーの技術も組み合わせる。こうしたマーケットインでの提案が特徴だ。
その中で、今回はリテール業界向けのソリューションについて解説された。
リテール業界においては消費者行動の変化が加速しており、リアル店舗に求められるものも変化している。そんな中で長澤氏は、「ECではSNSなどを通して容易に効果・反応を把握できるが、リアル店舗はお客様の課題やニーズをつかむことが難しい」と、オフラインの店舗運営の課題を指摘した。
B2Bビジネス本部 エンタープライズ営業部門 プロダクツソリューション営業部 長澤 一樹氏
長澤氏は、こうした課題に対して「3つのポイントで貢献する」と語る。
一つ目は、「データの収集」。ソニーのAI搭載デバイス「AITRIOS(アイトリオス)」によって来店者の情報をデータ化する。二つ目は、「データの蓄積・分析」で、収集したデータの可視化やソニーのAIによる来店者・商品販売の予測分析を可能にする。そして三つ目の「データの活用」では、分析したデータを生かして効果的なデジタルサイネージを実現するという。
長澤氏は、三つのソリューションそれぞれについて詳しく説明した。
エッジAI「AITRIOS」によるデータ収集
一つ目の「データ収集」を実現する鍵となるのが、ソニーが提供する「AITRIOS」というエッジAIプラットフォームだ。
AITRIOSは、エッジAI技術を採用しており、AI処理を内蔵したインテリジェントセンサーを搭載しているのが特徴だ。クラウド系AIと比較してクラウドリソースの負担が少なく通信含めたコストを抑えられるうえ、顧客の映った画像・映像データをクラウドに送信する必要がないためプライバシー保護の観点でも安心できる。
また、手のひらサイズの超小型デバイスなので、いたるところで活用しやすい。たとえば、店舗の外に設置することで、店前を行きかう人の属性や人数を検知できる。また、店内でどういう動きをしているのかという人流解析やヒートマップ化も可能だ。
実際には、下図のようにAITRIOSのデバイスとプラットフォーム、ソニーマーケティングのクラウドサービスを組み合わせたSaaSとして提供される。AITRIOS上で処理されたメタデータを、ソニーマーケティングのクラウドにアップロードすることで、ダッシュボード化やAI予測分析などさらなるデータ分析が可能になる。
さらに、用途に合わせて学習済みAIモデルを選択できることもAITRIOSの特徴だ。長澤氏はいくつかのAIモデルを説明した。
たとえば、「通過ライン・エリア滞留検知」に特化したモデルを利用すると、店舗内の設定した特定のラインを通過した人や、特定のエリアに滞留した人の属性を記録することができる。大規模なショッピングモールなどのエスカレーターの前に設置すれば、フロア間を移動する顧客の人数や属性をデータ化することも可能だ。また、特定のエリアにどんな人が滞留しているか、あるいはどんな人が滞留せずに通過しているか、といった分析もできる。

また、サイネージ広告の課題に対応する「顔向き目線検知」のAIモデルも用意されている。従来はサイネージを設置しても「実際に視聴されているか」を捉えられないという課題があったが、このモデルではサイネージに視線を向けた来店者を検知できる。どの放映コンテンツを、どんな人がどれくらい視聴したかを測定することで、コンテンツごとの視聴分析が可能になり、A/Bテストなどの検証がより有効になるという。

