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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2025 Autumn

「生成AI時代」のその先は?アクセンチュアに聞く、AIエージェントがもたらすマーケティングの未来

 生成AIの普及からわずか数年、2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれ、今まさに大きな転換期を迎えている。多くのマーケターも、AIエージェントはマーケティングをどのように変革するのか大きな関心を寄せているだろう。MarkeZine Day 2025 Autumnに登壇したアクセンチュアの横井氏は「単発作業の効率化だけでなく、専門のナレッジを持つエージェントがマーケターの下で対話しながら意思決定を進める『エージェンティックAI』時代が到来する」と話す。エージェンティックAIはマーケティングをどう変えるのか、最新事例とともに解き明かした。

2025年「AIエージェント元年」からAIの進化は加速する

 2022年に登場した生成AIは、瞬く間に社会に浸透した。そして2025年現在、注目されているのが「AIエージェント」だ。

 MarkeZine Day 2025 Autumnに登壇したアクセンチュアの横井博行氏は「AIエージェントがもたらすデジタルマーケティングの未来」をテーマに講演。冒頭で「今日、生成AIやAIエージェントが急激に進化しています。そうした中、多くの企業はこれらのテクノロジーをどのようにビジネスに適用すべきか、働き方はどう変わるのかと迷っています」と語り、AIエージェントがもたらす影響とマーケターの新しい働き方に関する最新動向をセッションで解説した。

アクセンチュア株式会社 Associate Director, Accenture Song Data&AI 横井博行氏
アクセンチュア株式会社 Associate Director, Accenture Song Data&AI 横井博行氏

 横井氏はまず、生成AIからAIエージェントへと至る過程で、現在起こっている“地殻変動”を整理した。2022年ごろに台頭したChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)は、要約やライティングといった単発の知的作業を高速化した。そして2025年現在、LLMを検索やリサーチ、議事録作成など特定のタスクに特化させた「シングルAIエージェント」が誕生。具体例を挙げると、分析調査に特化したOpenAIの「Deep Research」や、AI検索の「Perplexity」などが相当する。これらの高度なリサーチ機能やAI検索プラットフォームは、担当者の作業を肩代わりし、アウトプットを瞬時に返す。

 これらのシングルAIエージェントが、一般にAIエージェントといわれるものであり、2025年はこのAIエージェントが急速に進化した。そのため2025年を「AIエージェント元年」と呼ぶ動きもあるという。

 ここまでは「人の時間を節約するAI」の範疇だ。本セッションで横井氏は、AIエージェントの先の未来を示す。それは、AIエージェントが実在するビジネスパーソンの専門知識や人格を備えてマルチエージェント化し、エージェント同士で対話や判断、意思決定を行うリアルワールドに近い状態になることだ。

 たとえばマーケティングに関する意思決定であれば、営業、マーケティング、Z世代の消費者インサイト、シニア市場など、特定領域の専門知識を持つAIエージェント同士が仮想会議を繰り返す。経営企画が財務と議論し、オペレーションに落とし、営業と連携していくといったリアルな人間の仕事のプロセスを、デジタルで再現するイメージに近い。

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 AIは、人間と異なり工数や時間の制約がない。そのため生み出されるアイデアの幅や深さ、検討回数が跳ね上がり、人間だけでは到達が難しい思考の組み合わせや予想外の企画が誕生する。その未来は、「今後2〜3年のうちに起こる可能性があります」と横井氏。このようにマルチエージェント化したAIエージェントを、「エージェンティックAI」と定義した。

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「エージェンティックAI」をビジネス現場で適用するには

 シングルタスクのAIエージェントは、まさに現在、多くの企業で活用が進んでいる。ではエージェンティックAIは、どのようにビジネス現場で適用できるのだろうか。横井氏は「企業での実装に関しては、3つのレイヤーで捉えると理解しやすい」と話した。

 まずベースにあるのは、ビジネスデータが集約されている基幹システムと、需要予測やサプライチェーン最適化などの数理的AI、そしてワークフローで構成される「Digital Core」というレイヤーとなる。Digital Coreは、現在の企業システムの姿とそれほど変わらない。

 大きく変化するのが、最上レイヤーである「WORK」層だ。WORKとは仕事のレイヤーで、一般に組織の縦割り構造に基づいて社員が配置されている。これらの部門それぞれに専門性を備えたエージェンティックAIが存在し、さらに部門横断で情報連携をスムースにする「部門横断エージェント」が置かれる。

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 また、経営企画などのマネジメント層にもエージェンティックAIが存在し、それらが「市場」や「顧客」のエージェントを通して市場理解を深め、各部門にインサイトを落とし込んでいく。そして部門間を取り持つ部門横断エージェントの存在によって、各部門で顧客理解が深まり、部門横断の合意形成が速くなる。

 このWORKとDigital Coreの間を取り持つのが、WORKFORCEと呼ばれるレイヤーだ。「重要なのは、AIが人に置き換わるというよりも、共存によってチームの生産性と発想の自由度を拡張する設計思想です。最近の研究では、平均して4割程度の業務がエージェントに代替可能といわれていますが、代替は目的ではありません」と横井氏。むしろ、人とAIの分担設計によって、創造のスピードと質を高めることに意味がある。WORKFORCEはAI時代の人材を可視化し、AIと協働する働き方を実現するためのレイヤーであると横井氏は説明した。

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エージェンティックAIがもたらす、4つの変革領域

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/28 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49852

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