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DMのCV率が20%向上!再春館製薬所がGROWTH VERSEと挑む、顧客起点のAI活用

 再春館製薬所は、長年蓄積してきたお客様との深い対話をはじめとした有益なデータを活用しきれていないという課題に直面。その壁を打ち破るため、マーケティングAI SaaS「AIMSTAR」などを提供し、AI活用支援に強みを持つ企業のGROWTH VERSEとタッグを組みました。経営層の強い意思決定のもと、休眠顧客へのDMでコンバージョン率20%アップ、メールで18%アップにより粗利1億円の創出という目覚ましい成果を実現。これは、単にAIを導入するだけでなく、「AIの判断」と「現場の経験則」を融合させ、お客様になりきるという同社の哲学を体現した成功事例と言えます。本稿では、その推進の背景、葛藤、そして未来の展望を両社に伺います。

データにはお客様との絆を深める可能性がある

――本日はよろしくお願いいたします。まずは、再春館製薬所が、長年大切にされている「お客様個人に向き合う応対」を続ける中で、本格的なAI活用に踏み切きるに至った、その背景からお聞かせいただけますか。

再春館 古江:弊社は「大きな個人商店」という理念を掲げ、「100人に1回より、1人に100回」という末長いお付き合いを目指しています。お客様お一人おひとりに深く寄り添う対応を重ねた結果、30年、40年とドモホルンリンクルをご愛用いただくお客様もいらっしゃって、再春館製薬所全体への信頼につながっています。

株式会社再春館製薬所 古江 順氏
株式会社再春館製薬所 古江 順氏

再春館 古江:その応対品質を支えているのが、お客様プリーザー(Pleaser)です。お客様プリーザーは注文や質問に答えるだけでなく、お客様それぞれのお悩みを聞き、提案をしてきました。その応対履歴はデータで蓄積しており、どのお客様プリーザーが応対しても、同じ品質を担保できる仕組みです。言わば、お客様との関係性を「紡ぐ」ためのデータが、社内に大量に眠っている状態でした。

 この膨大なデータを、応対以外の新たな体験創出として、最大限活用していくことが、経営的な課題となっていました。

 そんな中、2032年の創業100年に向けた新たな挑戦「ポジティブエイジカンパニー」を掲げる中で、AIへの取り組みが必須であると経営層が判断しました。生成AIのブームが加速したことも追い風となり、機械学習から生成AI活用まで、全社的なAI推進が本格的に始動しました。

再春館 園田:全社的にAI活用の火がついたのは、やはりChatGPT-3.5の登場でした。それ以前からチャットボットなどの取り組みはありましたが、当時のAIは現場にとって自分事化しにくいものでした。

 しかし、私たちがAIの勉強会を社内で集中的に実施したところ、製造部門やオペレーター部門など、PC業務が限定的な部門でもAIに触れるようになり、一気に社内のAIリテラシーを向上することができました。

 今では、システム部門ではない社員が自らAIを使って業務効率化のプログラムを作る動きも加速しています。この全社的なAIを使ってみようという土壌が、その後のGROWTH VERSE様との取り組みを加速させる大きな要因になったと感じています。

ラストワンマイルを埋める伴走支援

―― AI活用の必要性が高まる中で、数あるAIベンダーの中からGROWTH VERSE様をパートナーに選定された理由、そしてどのような初期の取り組みからスタートされたのでしょうか。

再春館 古江:弊社はシステムをフルスクラッチで構築していることもあり、システムの根本的な重さやデータ活用の課題を感じていました。

 GROWTH VERSE様の「AIMSTAR」というCDP・MA統合プロダクトと、データ活用を推進するパートナーとしての姿勢が、当時の弊社の課題と今後の成長戦略に合致したため、協業が始まりました。

GV 葉山:再春館製薬所様の代表取締役CEOである西川様をはじめ、経営層が素早い意思決定をしてくださったのが、プロジェクトの大きな推進力となりました。ただ、全社を巻き込むには段階が必要なため、まずは古江様、園田様を中心とした専任チームを立ち上げていただきました。

 私たちGROWTH VERSEは、短期的な成果だけでなく、中長期でお客様とのコミュニケーションを大きく変えていくお手伝いをしたいと考えていました。再春館製薬所様の強みは、お客様プリーザーによる親身なコミュニケーションの履歴というデータ資産にあります。

 しかし、コミュニケーションが電話だけでなく、LINEやメールへとシフトしていく中で、お客様の理解を深め、チャネルを問わない真のOne to Oneコミュニケーションを実現するための伴走支援が必要でした。

株式会社GROWTH VERSE 葉山 裕基氏
株式会社GROWTH VERSE 葉山 裕基氏

GV 葉山:そこで、まずはクイックに成果が出せる領域として、ダイレクトメール(DM)とメールの領域でのPoCを定義しました。私たちのミッションは、クライアント企業様のグロースを実現するためのAIを作ること。まずは成果を出し、経営パートナーとして認めていただくことに注力しました。

 チャネルに関して言えば、私たちはすべてのチャネルで最適なものを届けたいという考え方でスタートしました。DMやメールの施策で得られた知見を、LINEや手書きのお手紙の施策にも横展開し、最適なお客様に最適な体験を届けることに挑戦しています。

 単なるチャネルごとの最適化に留まらず、お客様のジャーニー全体を捉え、複数のチャネルをまたいだシナリオ設計をご提案しました。どのチャネルで、どのタイミングで、どういうクリエイティブをお届けするかまで、現場のメンバーと密に協業しながら運用サポートをさせていただいています。

AIの出す理想解から人間の納得解を導き出す

―― DMなどの施策で実際に手応えを感じる一方で、AIが導き出したリストやロジックが、長年の経験を持つ現場の感覚と合わないといった「壁」はなかったのでしょうか。それをどう乗り越えられたのか、詳しくお聞かせください。

再春館 古江:特に印象的だったのは、休眠顧客向けのスリープDMです。長年のマーケティング経験から、暗黙知として「この層のお客様にはこういうメッセージが響きやすい」という認識が社内に存在しています。

 AIが算出したリストを現場が信頼できなければ、施策は実行できません。AIが出した「精度はいい」という特徴量に対しても、「これでは説明できない」と納得がいかない部分が多く、解釈性についてGROWTH VERSE様と徹底的に議論しました。

 議論の末、私たちは「AIの理詰めは不可能」という結論に至りました。そこで、AIが導き出したリストを集合体として見るのではなく、ランキング上位のお客様を「一人ずつ」画面で確認し、過去の経験則と紐づくかを検証する手法を取り入れました。

 トップ10のお客様を見て「これは絶対に送るべきだ」と現場が納得できれば、全体に対してAIの判断の「強弱」を理解できます。こうして、暗黙知とAIのロジックを融合させることで、ようやく手応えを感じる結果が見えてきました。

再春館 園田:現場が計画していた取り組みとAIの提案が衝突する場面もありましたが、乗り越えられたのは、AI勉強会で全社のAIリテラシーが上がっていたことと、管理職層に「AIは興味深い」という風土が生まれていたことが味方になってくれたからです。

株式会社再春館製薬所 園田 裕輝氏
株式会社再春館製薬所 園田 裕輝氏

再春館 園田:さらに、古江が「AIの翻訳者」として非常に長けていたことも大きいです。AIが導き出した複雑なデータを、企画職や現場の人が「お客様お一人おひとりを見てみると、こういうことだよね」と納得できる言葉に変換してくれたのです。

GV 葉山:私たちGROWTH VERSEも、「ラストワンマイル」を埋めることに注力しました。AIの汎用技術は80%までをカバーしますが、残りの20%を埋めないと成果は生まれず、そのためのノウハウやテクノロジーを当社は有していると思います。

GV 島:私たちは単にモデルを提供するだけでなく、現場の感覚にフィットさせるためにディスカッションやヒアリングを行いモデルのアップデートも何度も行います。あるモデルについては、そのバージョンアップが28回になることもありました。また、あえて精度を追求せず、解釈可能な特徴量に絞ることで、現場目線で共感・運用しやすいモデルを構築しました。私たちは外部ベンダーではなく、パートナーとして寄り添うことを最も大切にしています。

CV率向上と「AIは私たちの味方である」という文化の醸成に成功

―― AI活用を通じて、定量・定性両面でどのような成果が得られたのかをお聞かせいただけますか。特に現場の働き方や役割に起きた変化についても知りたいです。

再春館 古江:一番は、AI活用で得られた余剰の時間を、もっとお客様を知る時間に充て、さらなる好循環を生み出せたことだと思っていますが、定量的な成果としては、休眠顧客向けのDMのコンバージョン率が20%アップ、リピートをやめてしまう可能性のある顧客へのメール施策での抑止効果が18%という具体的な違いを出すことができました。粗利でいうと約1億円の貢献です。これは、AIの力を借りて、長年のデータ資産を最大限に活用できた証だと考えています。

 定性面で言えば、機械学習との向き合い方そのものが変わったことです。これまでは、お客様お一人おひとりに向き合うという哲学から、お客様を面で捉える際には多大な労力と時間をかけていました。

 それが、大事にしたい部分はそのままに、データ活用によって「より効率的にできる」という兆しが見えてきたことが、非常に大きな変化です。人手不足という社会的な課題に直面する中でも、会員数を増やし、事業を維持していくための持続可能なマーケティングの方向性が見えてきました。

再春館 園田:現場の働き方も劇的に変わりました。特に印象的なエピソードとしては、しばらく足が遠のいているお客様へのDMです。

 以前は長年の経験から「この条件のお客様にお送りするのが効果的だ」という、いわば”職人の勘”のようなものを頼りにリストを作成していました。しかし、AIが導き出したのは、私たちの想定とは全く異なるお客様のリストでした。

 そのリストを見た現場社員は、「本当にこのお客様にお送りしてお喜びいただけるのだろうか」と、AIの提案に対して半信半疑でもありましたが、AIを信じてDMをお送りした結果、CV率が20%向上するという実績につながりました。

 再春館製薬所の想いやこれまでの経験も踏まえたうえで、人では気付けなかったポイントを見つけ出してくれたことで、現場社員は「よりお客様の心に響くお手紙の内容を考えられる」など、再春館製薬所が大事にしたい部分により集中できるようになりました。

再春館 古江:また、生成AIはもはや全社で当たり前のツールです。会議の議事録作成や社内資料作成はもちろん、手書きのお手紙を書く部署が、「AIに処理させるデータ」を自ら蓄積し、よりきめ細やかな文書作成に活用しています。あくまでAIはサポート役であり、社員は「AIを使いこなす主役」として成長する文化が根付いています。

AIのパートナー選び、大事なのはツールの力より企業の理解力

――今回の取り組みにおいて、GROWTH VERSE様の支援内容について、再春館製薬所様はどのように評価されていますか。

再春館 古江:一言で言えば、「優秀な方たちに、こんなに時間を使ってもらったらずるい」と感じるほど、質の高いサポートをいただきました。レスポンスが適切であることはもちろんですが、私たちが提示したオーダーを、決してその「点」だけで捉えない姿勢が素晴らしいです。

 クライアント企業からの依頼は絶対という風潮がある中で、GROWTH VERSE様は本質的な部分についての議論を必ず取りこぼさず、時に「本当にこれで良いのか?」と問いかけてくれる。そのおかげで、より良い関係性のもとで深く話し合っていくことができました。

再春館 園田:他のベンダー様は、担当者のKPI達成に注力しがちですが、GROWTH VERSE様は再春館製薬所全体の事業をちゃんと見てくれていると感じます。「こういうところも気をつけないといけませんよ」と、私たちが気づかない点に気づかせてくれるのです。

 結局のところ、どんなに「良いツール」であるかよりも、「どれだけ本気で会社のことを考えてくれるか」が最も重要だと、今回の協業を通じて強く実感しました。その意味で、GROWTH VERSE様は真のパートナーです。

GV 葉山:AIと従業員の共存は、日本の多くの企業が直面する課題です。私たちの支援は、コストカットではなく、収益・売上の向上にコミットすることを第一としています。単なる技術提供に留まらず、再春館製薬所様という会社のミッションと経営から見たときの売上貢献を追求しています。

GV 島:私たちGROWTH VERSEの支援は、まずクライアント企業様の最上段のミッションに共感することから始まります。再春館製薬所様の「末永いお付き合い」という哲学を軸に、それを実現するために何をすべきかを逆算的に選定していきました。

株式会社GROWTH VERSE 島 孝行氏
株式会社GROWTH VERSE 島 孝行氏

GV 島:その過程で、AIに関係なくクライアント企業様が気づいていない課題も包括的に洗い出し、幅広い観点から事業をよりよくするためのソリューションを出すことを意識しています。現在、再春館製薬所様では16テーマ・20モデルほどのAI活用が進んでいますが、これは、単なるツール導入ではなく、哲学の実現のために必要な「一役割としてのAI」を一つひとつ作り上げてきた結果です。

より質の高い顧客体験を実現する

――今回の取り組みから得られた学び、そしてこれからAI活用を検討する企業に向けて、「成功に導くために大事なこと」についてアドバイスをお願いします。

再春館 古江:今回の取り組みで分かったのは、再春館製薬所にはまだまだデータが眠っているということです。これまで活用してきたのはローデータと呼ばれる粒度のデータばかりで、コールセンターで蓄積された「定性的なデータ」など、できることはまだ山ほどあると気づきました。

GV 葉山:AI活用では、「先進的な取り組み」と「成果の追求」をスピーディに行うと、必ず現場がついていけなくなるという課題に直面します。このバランスをどう取るかが、次の大きなテーマとなります。

 私たちのプロダクトであるマーケティング AI SaaS「AIMSTAR」は、CDPとMAにAIが紐づいたサービスです。本来時間がかかるデータの統合や施策の検証プロセスを効率化できたことが成功要因の一つですが、それ以上に、解釈性を持ってAIを現場に使っていただくという伴走支援が重要でした。

――最後に今後の展望を教えてください。

再春館 古江:再春館製薬所には、20万名を超える会員様がいらっしゃいます。今後はCDPの基盤をフル活用し、「お客様お一人おひとりに寄り添った対応」を、人の努力だけでなく仕組みとして実現できる体制を整え、質の高い顧客体験を提供していきたいと考えています。

GV 島:私たちが支援していきたい方向性は、すべてのお客様に「再春館製薬所が良い」と思ってもらえる世界づくりです。化粧品業界で誰に聞いても再春館製薬所様の名前が出てくるような、揺るぎないポジションを確立するために、どれだけ貢献できるかをやり切りたいと考えています。

GV 葉山:AIでできる部分はAI化しつつも、お客様とのコミュニケーションの「顔」となるお客様プリーザーの存在は変わらないと考えています。AIの活用を通じて、彼らが「興味深い」「楽になった」と思える環境を突き詰めていくことが、結果的にお客様体験の向上に繋がると信じています。

再春館 古江:これからも、GROWTH VERSE様と共に、顧客起点のAI活用をさらに深化させ、再春館製薬所の未来を築いていきます。

継続的な売上拡大のためのAIメニュー

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社GROWTH VERSE

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/30 10:30 https://markezine.jp/article/detail/49986