「変数」の増加と多様化により、消費者行動の分析は複雑に
フルファネルマーケティング成否の鍵を握る分析を、2つのトレンドが難しくしている。「動画コンテンツの台頭および視聴者数増加」と、「消費者の購買行動の多様化」だ。
「動画コンテンツの視聴者数増加」は、マーケティングチャネルとタッチポイントの増加を意味し、「購買行動の多様化」は、コンバージョン(購入)のタイミングや場(たとえばAmazonのストア、自社オンラインストア、実店舗など)の多様化を意味する。これらにより、どの施策にどの程度予算を投下すべきかを最適に判断できないまま、マーケティング施策が決定・実行され、費用対効果の最大化はもちろん、実施後の評価もできていないケースも少なくない。
しかし中村氏によると、Amazon Adsを活用すれば簡単にインサイトを分析でき、より効果的な施策につなげられると言う。たとえAmazonで商品を販売していなくてもだ。
まずここで、Amazonを販売チャネルとしても活用している、ロボット掃除機大手のアイロボットの事例が紹介された。
届けたいオーディエンスに、届けたいメッセージを
アイロボットジャパンは、2025年4月16日にフルラインアップ6機種を一新した。これまでは対象としていなかった消費者層向けの製品も新たに加わっている。
「マーケティング上の最大のチャレンジは、新製品の認知から行動転換までを短期間で実現することでした」と同社でMedia & Customer Engagement部門でSr. Managerを務める豊泉 伶奈氏は言う。

今回同社では、オンオフデジタルの両軸で、認知の“量”と“質”を意識して戦略的なマーケティングを展開した。期間は3段階に分け、Amazon Adsはすべてのファネルで活用している。
具体的には、新製品発表直後の「認知の量」を増やす時期には、あらゆるデバイスを対象にPrime Video広告、Fire TV広告、Twitch広告を活用した。そして、購入の新規検討が始まる時期には「認知の質」を深めることを狙い、テレビ画面中心の戦略にシフトし、Prime Video広告、Fire TV広告に絞り込んでいた。

そして最後の段階である毎年恒例の夏のセールを迎えるタイミングでは、Amazon DSPとスポンサー広告の活用も開始して、行動転換を促した。
まず、「認知の量」を増やす段階では、同一オーディエンスに対してPrime Video広告、Fire TV広告、Twitch広告という3つの広告を利用したが、インクリメンタルリーチ(既存の広告施策ではリーチできなかった新たな層)がPrime Video広告単体利用のケースに比べて2倍以上となるなど、功を奏した。