LTVと新規顧客の質を“自然言語”で分析する時代
セッション「Accelerate time to decisions: Amazon Marketing Cloud's next-generation AI-powered analytics suite(AMC次世代AIアナリティクス)——広告判断は「勘」ではなく『即時に検証できる問い』へ」では、AMCのプロダクト責任者であるJamie McGill氏とDoug Pereira氏が登壇。AMCの本質を「組織全体の意思決定速度を上げるためのGPS」と位置づけた。
従来、広告主がLTVや新規顧客の質を把握しようとすると、専門スキルを持つアナリストが複雑なSQLを書き、インサイトが得られるまでに数週間かかることも珍しくなかった。この“分析までの距離”こそが、マーケティングのスピードを阻害していた。
AMCが提示した打開策は、AIアシスタント「Ads Agent」による“自然言語アナリティクス”である。
Doug氏は、サプリメント企業のマーケティングマネージャー「Manu」を例に、どのように意思決定が変わるかを描いた。Manuは従来数日かけて確認していた「新規顧客を最も多く連れてきている商品」を、AMCの推奨テンプレートから数クリックで分析し、すぐさま投資配分を見直すことができた。
さらに、Manuが直面した「高LTV顧客に似た新規を増やすにはどうするか」という課題に対し、Ads Agentは“上位30%のLTVを持つ顧客の類似オーディエンス”をSQLなしで生成。配信結果としてリピート率が大幅に改善したという。高度な分析ができるアナリストがいないチームでも、LTVという本来最重要のKPIに基づいた運用へ移行できるという意味で、これは大きな進歩である。
また、AMCのデータ体系そのものも進化している。Prime Videoの視聴シグナル、広告接触の25ヵ月履歴、購買データの5年分といった“長期的な文脈”を踏まえた分析が可能になった。これにより、単一タッチポイントの評価ではなく、上流接触が下流へどう波及するかを一貫して捉えることができる。たとえば、ある保険ブランドは「見積もりページに訪れたユーザーが、どのPrime Videoジャンルをいつ視聴しているか」をAds Agentに自然言語で尋ね、配信のジャンル選定とデイパーティングを刷新した。
AMCの本質は、「人間の判断を置き換えるAI」ではなく、「人間が問いを立てれば、即座に答えが返る環境」である。読者の皆様の現場でも、LTVや新規の質に関する仮説検証のハードルがこれほど下がったことは、データドリブン運用への大きな転換点となるはずだ。
