「自社の商品・ブランドは、どれくらいの期間でどの商品と一緒に買われているか」この問いに答えることは、生活者の購買習慣や利用シーンを把握するうえで欠かせません。購入タイミングがずれやすいカテゴリでは、同時購入だけでは捉えきれない結びつきが数多く存在します。期間内の併売関係を正しく読み解ければ、「クロスセルの設計/棚割り・レコメンドの最適化/新商品や企画の方向性」といった「次の一手」を、より精度高く設計できるようになります。では、期間併売の構造をどう可視化し、どのように意思決定につなげればよいのでしょうか? マクロミルグループでマーケティング戦略支援を行うエイトハンドレッドのデータアナリスト上田拓朗氏が、実務で役立つ期間併売分析のポイントをご紹介します。
自社商品が「どれくらいの期間で」「どの商品と併売されているのか」を把握する
前回までは、顧客の購買行動を「量」や「継続」といった軸で捉えてきました。今回のテーマは、「一定期間の間で起こりうる組み合わせ(期間併売)」に着目します。
併売というと「同じ買い物で一緒に買われたもの」をイメージしがちですが、実際には購入タイミングがズレていても、顧客のニーズはつながっていることが多くあります。期間併売分析では、こうした期間全体での併売構造を捉えることで、より中長期の購買行動を把握できます。
たとえば、「A商品は同時購入されることは少ないが、1~3ヵ月以内にB商品を買う顧客が非常に多い」といった気づきは、クロスセル施策やレコメンド設計、カテゴリ育成、商品企画など、様々な意思決定に直結します。
「どの商品がどの商品と併売されているか」を把握するには、単純な売上集計だけでは不十分です。期間内での重複購買率やリフト値といった期間ベースの指標を用いて、本当に顧客が併売しているのかを定量的に理解する必要があります。
期間併売分析とは
同時併売(バスケット)分析が「同一の買い物カゴ(トランザクション)」に入った商品を対象とするのに対し、期間併売分析は「一定期間の中で同じ顧客が購入した商品」に着目する手法です。購入タイミングが1回の買い物の中で一致していない場合でも、
- 過去1ヵ月の間にAとBを両方買っている
- 半年の中でA購入者のうち20%がBも買っている
といった「期間内での併売傾向」を捉えられることが特徴です。
ここで重要なのは、単に「同じ期間に買った回数」だけでは十分ではない点です。商品ごとの売れやすさが異なる場合、頻度が高い商品は併売されているように見えてしまうため、組み合わせの強さを正しく評価できません。
そのため実務では、期間併売の関係性をより客観的に判断するために、次の4つの指標を用いるのが一般的です(図1)。
- 支持度:ある期間において、AとBを両方購入した顧客の割合
- 信頼度:Aを購入した顧客のうち、期間内にBも購入した人の割合
- 期待信頼度:Aとは無関係に期待されるBの購入割合(Bの期間購入率)
- リフト値:信頼度を期待信頼度で割って計算する、A購入がB購入を偶然以上に増やしているのかを表す指標
期間併売分析でも、リフト値の解釈は同時併売(バスケット)分析と同様です。業界や商材によるところも大きいですが、おおよそ以下の目安で判断することが多いです。
1未満:むしろ一緒に買われにくい
1前後:偶然レベルで、特段強い関係は見られない
1.5~2.0:一定の意味のある併売傾向があると考えられる
2以上:比較的強い併売関係が示唆される
期間併売分析における注意点
期間併売分析は、一定期間の中で起こりうる顧客ニーズの把握に非常に有用ですが、解釈を誤ると誤った判断につながることがあります。おおよそ同時併売(バスケット)分析でも同じことが言えますが、注意すべきポイントについていくつかご紹介できればと思います。
1.売れ筋商品は期間内の併売率が高く見えやすい
売れ行きの良い商品は、期間内に購入する顧客数が多いため、特に関連がなくても同じ期間に買っている人が一定数出やすくなります。結果として、信頼度(A購入者のうちBも買った割合)や支持度(期間内で両方買った割合)が過大に見え、「AとBは期間内で相性が良い」と誤って解釈してしまうケースが発生します。特に、ユーザー数の多い商品群(人気カテゴリ、ベーシック商材)はこの傾向が顕著です。
【対処法】
- 信頼度だけで判断せず「期待信頼度(Bの期間購入率)」と比較する
- リフト値で偶然の重なりを除去する
- 母数が大きい商品同士の高信頼度は慎重に解釈する
信頼度の高さは「商品が売れているから」であり、関連性そのものを反映しているとは限らない点に注意が必要です。
2.季節性・施策(キャンペーン)の影響で期間特有の併売が発生する
期間併売分析では、特定のシーズンやキャンペーンに依存した併売まで拾ってしまい、それを恒常的な併売関係だと誤認してしまうリスクがあります。たとえば、
• 冬の防寒期に「アウター × インナー」が一気に併売される
• ホリデー需要で「ギフト雑貨 × ラッピング」が急増
• ポイントアップ施策で同期間に複数カテゴリを買い足しただけ
といったように、期間内の併売率やリフト値が跳ねても、それが一時的な要因であることは珍しくありません。
【対処法】
- 平常月と比較し、季節要因を除外する
- キャンペーン期間にフラグを付けて別扱いにする
- 複数期間で安定して同じ関係が見られるかを観察する
3.購入が少ない商品は期間併売の指標が不安定になりやすい
購入件数が極端に少ない商品は、1~2人の偶然の併売だけで指標が大きく動くことがあります。たとえば、信頼度が100%になる、リフト値が異常に高く見えるなどです。
これは「期間内に買った人が少ない」ことが原因で、SKU数が多い業態ほどノイズが頻繁に発生します。
【対処法】
- 最低購入者数(例:30人以上)を条件にしてフィルタリングする
- SKU単位ではなくカテゴリ単位で併売を見る
まずは「解釈に耐えるだけの母数がある組み合わせ」を優先的に扱うことで、期間併売のノイズを大幅に低減できます。
期間併売分析で比較をするための方法
ここからは、期間併売分析のアウトプットの仕方についてご紹介します。
組み合わせランキングによる比較
最もオーソドックスでよく使われるのが、組み合わせ(併売)ランキングです。商品Aを購入した顧客が、期間内に商品Bをどれだけ買っているのかを集計し、「支持度/信頼度/期待信頼度/リフト値」といった指標を並べることで、意味のある併売パターンを上位から確認できるようになります。
たとえばドラッグストアを例にしてみましょう(図2)。
- 「サプリ(ビタミン)」 と「サプリ(鉄分)」は期間内での併売人数も多くリフト値も高いことから、相性の良い組み合わせであることが示唆される
- 「シャンプー」と「リンス」は期間内の併売人数は多いものの、リフト値は低いことから、単に両方が日常的に買われやすい商品である
といった具合に、期間内での自然な併売ニーズが浮き彫りになります。
また、先に触れたとおり、ランキングを作成する際には、購入数が極端に少ない商品はあらかじめ除外しておくことが重要です。
ヒートマップによる比較
次に、有効なのがヒートマップによる併売傾向の可視化です。行と列にそれぞれの商品の組み合わせを配置し、信頼度やリフト値を色で表現すると、カテゴリ間のつながりや全体構造が一目で把握できるようになります(図3)。
ヒートマップでは、「どの商品同士が強くつながっているか」、「中心となるカテゴリ(商品)がどれか」といった、全体を俯瞰した読み解きがしやすいところです。
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- この記事の著者
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上田 拓朗(ウエダ タクロウ)
株式会社RONNABYTE ブランド&マーケティンググロースDiv マネージャー
西日本旅客鉄道株式会社を経て、2022年に株式会社エイトハンドレッドへ入社。購買行動データ、Webアクセスログ、意識調査データ等を活用した業界横断的なデータ分析に従事。直近では、大手レジャー予約プラットフォームにおける販促・プライシング戦略...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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