アナリティクスの高度化:協調フィルタリングの導入
期間併売分析によって「商品同士のつながり」や「カテゴリ横断での購入行動」が可視化されました。ここから、クロスセルの方向性や棚割りのヒントを得ることができます。
しかし、期間併売分析はあくまで「商品の組み合わせ」に着目した集計であり、「この顧客が次にどの商品に興味を持つか」という顧客の個別最適までは行えません。そこで役に立つのが、協調フィルタリングです。協調フィルタリングは、顧客の過去行動(購入履歴、閲覧履歴)に基づき、次に買われやすい商品を推薦する手法です。その中でも代表的な、「ユーザーベース協調フィルタリング」と「アイテムベース協調フィルタリング」についてご紹介します。
ユーザーベース協調フィルタリング
ユーザーベース協調フィルタリングは、その名のとおりユーザー間の類似性に基づく手法です。あるユーザーの購入履歴や閲覧履歴といった過去行動をもとに「行動が類似している顧客」を見つけ出し、その類似顧客が購入した商品を推薦します。AさんとBさんがこれまで似た商品を購入・閲覧している場合、Bさんが最近購入した商品はAさんも興味を持つ可能性が高いと判断されます(図7)。
この手法は、ユーザーの嗜好性に沿って拡大的に推薦を行える一方で、購入・閲覧履歴が少ない新規顧客に対しては類似顧客が見つけづらく、レコメンドが不安定であるという課題があります。
アイテムベース協調フィルタリング
一方、アイテムベース協調フィルタリングはユーザーではなく、商品間の類似性に着目する手法です。「商品Aを購入したユーザーが商品Bも購入している」といった情報をもとに、商品ごとの「行動ベースの類似度」を計算します。そして、顧客が購入した商品と類似性の高い商品を推薦します。たとえば、食品Aと飲料Bは多くのユーザーに併せて購入されているというデータがあれば、食品Aを閲覧・購入したユーザーには飲料Bを優先的に提示するといった使い方です(図8)。
この手法では新規ユーザーに対しても「閲覧・購入」の履歴さえあれば推薦を行えるという利点がある一方で、新商品はまだ併売データがないため類似商品を導けず、初期段階では推薦することが難しいという課題もあります。
こうしたレコメンド手法を用いることで、顧客一人ひとりの嗜好や行動履歴に基づいた、よりパーソナライズされた商品推薦の仕組みを構築することができます。また、ユーザーベース・アイテムベース協調フィルタリングはいずれも履歴情報に依存するため、先ほど紹介したとおり、新規顧客や新商品のように十分なデータが蓄積されていないケースでは推薦が難しいという課題があります。
この、いわゆるコールドスタート問題に対しては、商品のカテゴリ・価格帯・素材といった属性情報を活用する「コンテンツベースフィルタリング」など、補完的な手法を組み合わせることで対応することが可能です。
これらのレコメンド技術は、AmazonやNetflixをはじめとする大規模サービスでも広く活用されており、膨大な行動データをもとに顧客がCVしやすくなる次の一手を高い精度で予測しています。期間併売分析で明らかになった「商品のつながり」をベースの理解として、協調フィルタリングやコンテンツベースといった機械学習手法を組み合わせていくことで、より高度なパーソナライズ施策やクロスセル戦略へと発展させることができます。
今回取り上げた期間併売分析では、一定期間で併売されやすい商品を明らかにすることで、顧客の購入背景やカスタマージャーニーへの理解を高めることができます。その仮説をもとに棚割りやクロスセルの仕掛けを構築し、それを検証して改善していくことで、自社・顧客体験の双方にとってより最適な取り組みにつながります。
まずはお手元の自社行動データ、QPRを活用して併売構造を可視化し、狙いたい顧客ニーズと照らし合わせてみてください。これまで気づけていなかった購買パターンや潜在的なクロスセルの糸口が見え、価値ある打ち手の創出につながるはずです。
