顧客体験を軸に、マーケティングとデザインを掛け合わせる
これまでの連載で、マーケターとデザイナーの間にある「共創の溝」がプロジェクトの失敗要因となること、そしてその乗り越え方を考察してきました。
しかし、この溝が埋まったとしても、それはまだスタート地点に立ったに過ぎません。対話を円滑にすることは第一歩であり、真の成果に結びつけるためには、さらに一歩先の視点が不可欠です。私たちが挑むべきは、マーケティングとデザインが一体となった新たなプロセスを通じて「顧客体験を軸に事業課題を解決する」ことです。
顧客の期待は、かつてないほど高まっています。もはや、優れた機能や効果的なプロモーションだけでは、顧客の心を掴み続けることはできません。顧客は、製品やサービスとの出会いから、利用、そしてその後のサポートに至るまで、あらゆる接点で一貫した「自分のための、自分の課題を解決してくれる体験」を求めています。
最終回となる本稿では、この「顧客体験を軸にした施策」がどのように事業課題を改善し、成長を加速させるのかを具体的な事例を通じて紹介します。マーケティングとデザインが一体となった時、何が起きるのか。その成果をご覧ください。
顧客体験を軸にしたWebサイトのリニューアル例
多くの企業は「プロダクト開発」と「価値訴求(マーケティング)」の接続の仕方に頭を抱えています。広告やプロモーションで顧客を誘導しても、訴求ページが複雑でわかりにくければ、製品の価値を十分に理解される前に離脱されてしまいます。
プロダクトの価値に自信があるほど企業側が打ち出したい情報ばかりが前面に出てしまい、ユーザーが本当に知りたい情報に辿りつきにくい──作り手とユーザーとの間に“すれ違い”が起こるのは珍しくありません。
こうした課題を、顧客体験を軸に乗り越え事業成果につなげた一例として、グッドパッチが「デザインパートナー」として弥生様と取り組んだWebサイトリニューアルをご紹介します。
当時の弥生様では「ユーザー視点でのWebサイト・サービス設計が不十分で、コンバージョンレート(CVR)が伸び悩んでいる」「ブランドイメージを打ち出すためのビジュアルが確立されておらず、Webサイト全体に一貫性がない」といった課題を抱えていました。
そこで両社は、単なる商品訴求を目的にしたリニューアルではなく、顧客体験を軸にしたリニューアルに挑戦しました。結果として、プロダクト利用者の増加という確かな事業成果へと繋げました。
