元サントリー・北川氏がPR領域に挑む理由
──まずは、2025年4月よりシニア・ストラテジック・アドバイザーという肩書きでサニーサイドアップに参画された北川さんの、業務や役割について教えてください。
北川:サニーサイドアップはPRを得意とする会社ではあるものの、PRという枠からの超越を目指す「Beyond PR」というテーマを掲げています。
これを実現するためには「組織」「ミッション」「社員の意識」といったインターナルの改革が必須。シニア・ストラテジック・アドバイザーとしての私の役割は、第三者的な観点から領域や部署を横断し、組織体制の強化を支援していくことです。
1982年にサントリー株式会社に入社。商品開発・宣伝部門を経て、現在のザ・プレミアム・モルツの原型である「モルツスーパープレミアム」や、日本初の発泡酒「ホップス生」、清涼飲料の「なっちゃん」「DAKARA」などの商品を開発。その後、宣伝制作部長・食品宣伝部長として、「伊右衛門」「BOSS(宇宙人ジョーンズ篇)」「ザ・プレミアムモルツ(矢沢篇)」「PEPSI(桃太郎篇)」「サントリー天然水」「特茶」などの広告制作に携わる。2014年よりサントリー食品インターナショナル執行役員 兼 CMOに就任。2017年に株式会社サン・アド 代表取締役社長、2021年より代表取締役会長、2025年3月同職退任。2025年4月より、株式会社サニーサイドアップに参画
──サントリーで長らく広告コミュニケーションを担当されてきた中、このタイミングでPR会社のサニーサイドアップへ参画されたのはなぜでしょうか。
北川:理由は3つあります。1つ目は代表であるシーチャウ氏と、マーケティングに関する価値観や考え方が合致していること。私もシーチャウもマーケティング活動がきちんと売上や利益につながっているかを重要視しており、そのための手段がPRか広告かなどはこだわらないタイプです。
2つ目はPR会社であっても、自分の知見や経験は活かせると感じたから。PRも広告も販促も、結局は「コミュニケーション」という同じ土俵にあり、お客様の幸せや未来を創っていく活動であることには変わりません。
3つ目は会社の雰囲気ですね。初めてオフィスに訪れた時、社員のみなさんが明るくポジティブで驚いたんです。黄色を基調とした空間やセントラルキッチンも印象的で、ここなら楽しく働けるだろうなと直感しました。
変化する広告業界でも変わらない「企業価値向上」という命題
──昨今、広告やPRを取り巻く環境や顧客接点は大きく変化しています。長らく広告業界に腰を据えてきた北川さんは、時代の潮流をどのように捉えていますか。
北川:20年前あたりからインターネット広告やSNS、オウンドメディアなどの怒涛の勢いを認識していたものの、対抗心や混乱を感じたことはなく、変化を都度受け止めてきました。
──業界の急激な変化にも焦らずに、落ち着いて構えていられたのはなぜでしょうか。
北川:宣伝部門のやるべきことは、「商品やサービスのメッセンジャーになること」ではなく、「企業価値を向上させること」であると考えているからです。
サントリーで宣伝部長を務めていた頃は、1つひとつの商品スペックを宣伝するより、人の心を捉えるような本質的な発信に重きを置いていました。企業価値向上という最大の目的を叶えられるのであれば、手段がマス広告であっても、PRやSNSであっても、さらに今後新しい手法が増えていったとしても、特段問題はありません。
むしろ、様々な選択肢を選べるほうが楽しいとさえ思いますね。PR会社や広告代理店にとっても、選択肢が広がった昨今のほうが、クライアントの企業価値向上に寄与できる時代となってきているのではないでしょうか。
