SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

広告産業のパーパスを考える

インサイトでマーケティングをドライブする――米田恵美子氏が指摘する本来あるべきマーケティングモデル

 博報堂/SIXのクリエイティブディレクター藤平達之さんが、様々な立場・役割の方とのディスカッションを通して「広告会社の強み」や「これからの可能性」を見つけていく本連載。第6回は、インサイト・ピークス 代表取締役社長の米田恵美子さんをゲストにお迎えしました。今回のテーマは、マーケティングの起点となる「インサイト」です。実は、多くの企業でインサイトとマーケティングが接続されていない? インサイト分析における大きな課題と、本来あるべき「インサイト×マーケティング」の形を探ります。

インサイトは「売上」につながらなければ意味がない

藤平:本日はよろしくお願いします。この連載では、「広告産業のパーパスを考える」というテーマで様々な業界の識者との対談を重ねています。今日は「インサイト」をとことん深掘りする回ということで、AIによる代替も発展も見えている生活者理解の領域で、広告会社の存在意義を考えていければと思います。

 はじめに「インサイトの定義」を確認させてください。何百回も聞かれてきたかと思いますが、米田さんはインサイトをどのように定義されていますか?

(左)藤平さん、(右)米田さん
(左)博報堂/SIX クリエイティブディレクター 藤平達之さん、(右)インサイト・ピークス 代表取締役社長 米田恵美子さん

米田:インサイトは人によって定義に違いがあるので、まずそれを定義することはとても重要だと思います。私が5年以上サポートさせていただいているアサヒビール社の松山社長にコンサルのご依頼をいただいたときも、まずはインサイトを定義するところから始めました。

 そこで握ったのは「ターゲットの態度や行動が変容するホットボタンを見つけられたら、それをインサイトと呼びましょう」という定義です。

 事業会社のマーケティングには、売上増、ユーザー数増加、ブランドイメージのアップといった目的(≒課題)がありますよね。その目的に基づいて、誰の・どんな態度/行動変容を起こしたいのかを定め、それを実現できる切り口が得られれば、それをインサイトと見なします。

藤平:なるほど。「直接的に売上を増やすことに資するものだけがインサイト」ということではなく、「目標やKPIを達成できるものである必要がある」ということですね。

米田:その通りです。「これまでは商品に興味がなかった人が興味を持つ」といった一段階の上昇でもOKです。何かしらポジティブな態度変容を起こすことができれば、間接的・中期的には売上につながっていきますから。

 この「ターゲットの態度/行動変容に繋がるホットボタン」というインサイトの定義付けは、それ以来、私にとっても大きな基盤になりました。業種業界を限定しない汎用性があるので、アサヒビールさんに限らず、インサイト関連のコンサルにはこの定義を使わせていただいています。

インサイトは変化する。けれど「PDCA」の概念がない

藤平:その定義に基づき、「いいインサイト」の解像度を上げていきたいのですが、たとえば「優れたインサイトは普遍的である」とよく言われますよね。これについて、米田さんはどう考えますか?

米田:「優れたインサイトは普遍的でありながらも、変化していく」というのが私の実感です。市場環境やブランドのフェーズが変わると、以前まで効いていたインサイトが効かなくなるということはしばしば起こります。

 たとえば、新商品を市場に投入したときは好調だったけれど、日が経つにつれて、どんどん売上が鈍化してくる……といったケースがありますよね。これも、発売当時は効いていたインサイトがもう効かなくなっている可能性が大きいです。

藤平:なるほど、それはイノベーター理論で考えるとイメージがしやすそうですね。「キャズムの前後で大きくインサイトが変わる」というようなイメージでしょうか。

米田:そうです、そうです。イノベーター理論で考えた場合、イノベーター層に響くインサイトと、その後のアーリーアダプター層やレイトマジョリティー層に響くインサイトは当然違います。

 普遍的なインサイトのベースはあるかもしれませんが、それをターゲットやブランドのフェーズ、競合の状況などに合わせて変化・最適化していくことが求められます。インサイトは終わらない戦いなんです。

藤平:言われてみると、インサイトは企画の時点で“良し悪し”が判断されていることが多いですね。そのインサイトを表現したクリエイティブは効果測定されますが、大元にあるインサイトに関してはPDCAを回す(事後調査をする)という概念があまりない気がします。

次のページ
そもそも「マーケティングモデル」自体に課題がある?

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
広告産業のパーパスを考える連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/11/13 09:30 https://markezine.jp/article/detail/50045

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング