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ただの水がプレミアムに? 海外で話題の「水ソムリエ」に学ぶ体験型ブランディング

 「水」というありふれた商品が、今体験設計とストーリーテリングの力で、新たなブランド価値を創出している。その象徴が、ワインのように水を語り、選ぶ「ウォーターソムリエ」の存在だ。本稿では、海外で注目を集めるウォーターソムリエや水メニューの事例を紹介しながら、マーケティングにおける体験型ブランディングの可能性を探っていく。

水がワインのように語られる時代

 「水」は最もありふれた存在である。誰もが日常的に口にし、差別化の余地などほとんどないと考えられてきた。しかし、近年ヨーロッパやアメリカの一部の高級レストランやホテルでは、この「ただの水」が新たなプレミアム体験へと昇華し始めている。

 その象徴が“ウォーターソムリエ”の存在である。ワインと同じように産地やミネラル成分、口当たりの違いを語り、料理に合わせて水を選ぶ。ときには専用のメニューが用意され、氷河水や火山岩の天然水が高額で提供される。単なる飲料ではなく、「物語と体験を伴った商品」として水が消費されるのだ。

 この潮流は、凡庸に見える商品であっても、体験設計やストーリーテリング次第でプレミアムブランドへと変貌し得ることを示している。

なぜ今、“ただの水”が注目されるのか?

 なぜ「水ソムリエ」が注目されるのか。その背景には、いくつかの社会的潮流がある。

 第一に、健康・ウェルネス志向の高まりである。特に欧米ではアルコール消費を控える「ソバーキュリアス」と呼ばれるライフスタイルが広がり、外食や社交の場でも「ノンアルコールでいかに楽しめるか」が重視されるようになっている。水はその需要に自然に応える存在であり、体験や文化的意味をまとわせることで、アルコールに代わる選択肢となる。

 第二に、飲料市場のプレミアム化・体験化の潮流である。コーヒーやクラフトビール、ナチュラルワインのように、日常的な飲料がストーリーテリングとテロワール(産地性)を伴って差別化されてきた。同じ文脈で「水」もまた、ミネラル成分や採水地、味わいの違いを語る対象になりつつある。

 第三に、消費者の“体験志向”の強まりが挙げられる。単なる消費ではなく「どのような場面で、どのように体験するか」が価値の源泉となる時代において、水をワインのように選び、料理に合わせて楽しむ行為は、消費体験を一段引き上げる。

 つまり水ソムリエは、健康志向・プレミアム志向・体験志向という三つのトレンドが交差する地点に生まれた新しい文化的存在なのである。

次のページ
海外で広がる水ソムリエの事例

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49992

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