“広告が嫌い”の背景に「スマホ利用時間」の長時間化
「Z世代は広告が嫌い」
こういった言説が一般化して久しいですが、果たしてそれは正しい認識なのでしょうか? デジタルネイティブとして生まれ育ったZ世代(16~24歳)にとって、広告は日常に溢れる情報の一部です。そして、その受け止め方は上の世代とは大きく異なっています。
我々、サイバーエージェント次世代生活研究所が調査した「2023年若年層メディア利用実態定点調査」では、Z世代の1日のスマホ利用時間は平日230.4分、休日265.6分でした。これは、ゆとり世代の利用時間、平日195.4分、休日217.6分と比較しても、大きく上回っています。YouTube広告接触がテレビCM接触率を抜き、YouTube広告がZ世代が最も接触する広告になりつつあります。

(クリックすると拡大します)
つまり、テレビCMのような質が担保された広告への接触がほとんどだった時代から、多様な品質の広告に、大量に触れる時代が到来していることがわかります。これらのことから、Z世代は幼い頃からデジタル広告に接触し続けてきたために、広告を見抜く目が肥え、表面的な宣伝手法では心を動かされなくなった世代だと言えるでしょう。
Z世代に受け入れてもらえる広告とは?
結論から言えば、Z世代は「広告そのものが嫌い」なのではありません。彼らが嫌うのは「質の低い広告」「一方的な押し付け」「自分たちを理解していない広告」です。
実際、我々の調査データからも興味深い事実が見えてきます。Z世代は確かにYouTube広告に対して「不快」と感じる割合が最も高い一方で、Instagram広告については「最も興味・検索行動を促す媒体」として高く評価しています。つまり、広告の内容や見せ方次第では、むしろ積極的に関与する世代でもあるのです。
では、どういった広告なら受け入れてもらえるのでしょうか?
研究所では、所属する研究員たちが話題になった広告やトレンドを持ち寄り、その背景にあるインサイトを分析を行うトレンド発表会を毎月開催しています。
持ち寄られる事例は、実に多種多様です。動画広告だけでなく、OOH(屋外広告)やポップアップストアといったリアルな体験につながる事例がよく見られています。その中でも、2023年~2024年にかけてZ世代の間で話題になった広告と、広告賞受賞作の中でZ世代に刺さった広告を収集し分析した結果、以下の3つの広告カテゴリーと10要素に分類できることがわかりました。
Z世代に響く3つの広告カテゴリー
-
気づかせ価値広告
Z世代に「はっ」とした気づきを与える広告。「多様性応援」「未知体験提供」「脱タイパ価値」の3要素を含む。 -
共感価値広告
Z世代のトレンドを取り入れており価値観に共感を示す広告。「ノスタルジーコミュニケーション」「イマ―シブ願望」「若者ノリ便乗」「良い人表彰」の4要素を含む。 -
近寄り価値広告
企業が若者目線に歩み寄る姿勢を示す広告。「近寄り親近感」「口実付与」「ぶっちゃけ企業」の3要素を含む。
10の要素のうち、いくつかを抜粋して具体的な事例とともにご紹介します。