BtoCの強固な基盤を活用し、BtoB展開を進めたオリーブヤング
オリーブヤングは1999年に韓国で創業したヘルス&ビューティーストアだ。2018年には「オムニチャネルビジネス基盤の確立」を掲げ、チャネルもオフラインからオンライン、そしてオムニチャネルへと拡大。2022年には、アプリダウンロード数1,000万人を突破した。また顧客も幅広くなり、以前は20~30代の女性が中心だったが、10代や男性層まで取り込んでいる。現在、韓国の店舗数は1,371店舗(2024年12月)となっている。
事業面では顧客体験を向上すべく、当日お届けする「オヌルドゥリム」、プレミアムのリテールブランド「Luxe Edit」、ウェルネス専門の「ヘルス+」など多様な付加サービスを展開。単なる商品販売を超えた包括的なライフスタイルサポートを提供している。2025年5月に開催したセール「OL Young Sale」では、過去最高のトラフィックと売上を記録したという。コマースメディアは、こうした同社の成長に支えられ、キム氏が主導・導入してきた。
「当初は、店内で適切なマーケティングができていないと考えたところから、検討し始めました。これまでのビジネスモデルはBtoC、BtoBをターゲットに素晴らしい製品を提供することでしたが、コマースメディアは新しいビジネスモデルとなりうると感じ、導入しようと考えました」(キム氏)

だが、スムーズには行かなかった。キム氏は「社内でこのモデルが効果的であることを説得する必要があった」と明かす。
懐疑派からは「事業がうまくいっているのになぜ新しい収益源が必要なのか」と声が上がったという。また広告が、ユーザー体験を阻害するのではないかと懸念もあった。そこで、商品に広告を表示するパターン、表示しないパターンとA/Bテスト実施。ユーザー体験に悪影響はないことを示した。結果をより詳しく見てみると、広告がユーザーのニーズを反映していたため、ポジティブな影響もあったという。
その後同社はMolocoと協業し、広告のレコメンドや製品のレコメンドがユーザーに悪い影響を与えないことが確認できた。「機能する広告モデルを作成できた」とキム氏は振り返った。こうしてオリーブヤングはB2Cで構築した強固な基盤を土台に、B2Bマーケティングソリューション事業にも拡大。コマースと広告の両輪で収益を上げる仕組みを構築したのだ。
コマースメディアの3つの魅力
オリーブヤングは現在、オンラインとオフラインの2つの柱でコマースメディアを展開している。
オンラインでは、オリーブヤングWebサイト内ではMolocoの技術を利用してパフォーマンス広告を、オリーブヤング外のオフサイトメディアでは、Meta、TikTok、Googleなどと提携している。たとえばMetaとの広告の場合、2024年の目標は1,000億ウォンだったが、「目標を上回ることができた」とキム氏は話す。
オフラインでは、インストアメディア、デジタル屋外広告(DOOH)などを展開している。全体の戦略としては「オムニチャネル広告にフォーカスしている」とキム氏。中でも「Molocoを使ったパフォーマンス広告、コラボレーション広告は素晴らしい成果が出ている」と続けた。
キム氏によると、MolocoのAIベースの収益化ソリューションであるMCMによって構築されたオリーブヤングのコマースメディアを活用することで、2倍のパフォーマンス向上を実現しているという。MAUや受注量は堅調に増加しており、パフォーマンス広告の注文数は、140%以上の増加を示しているそうだ。
キム氏は、ブランドから見たコマースメディアの特徴を、「購入やページ閲覧、カードの商品といったファーストパーティデータを使ったジャーニープロセスを作成し、ユーザーのニーズを分析したり、より絞ったターゲティングができたりする」と話し、そのメリットを「近接性(Proximity)、正確さ、透明性」という言葉で表現した。