コスメブランドのSNS活用、「当たり前」を疑うべき理由
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コスメや美容商材は、生活者と企業の両面でSNS活用が活発な業界の一つです。生活者の視点では、若年層を中心に、商品を購入する前にUGCを確認する行動が一般化しています。たとえば、同年代や似た肌悩みを持つ人のリアルな声、パーソナルカラーとの相性などを参考にしながら、「自分に合う商品をきちんと選びたい」と考えるユーザーが増えています。SNSは生活者にとって、化粧品や美容商材の購入時に大きな影響力を持っているのです。
一方で、ブランド側の視点に立つと、コスメブランド特有のSNS活用の難しさがあります。他の業界と比べて制限が多く、ブランド特性も多岐にわたるため、一つの成功事例をそのまま別の商品やブランドに適用することが難しいと言えます。
たとえば、SNSでは親近感のある投稿が反響を呼びやすいものの、高価格帯のブランドであれば、ブランドイメージの維持も大切です。SNSライクな“くだけた”口調や自由な表現は、取り入れづらい場合も多いでしょう。もちろん、薬機法に配慮した表現も求められますし、さらには継続的な投稿に必要な写真素材の確保やクリエイティブ制作も課題に……。
このような状況下で、限られたリソースを効果的に活用するには、ブランド独自の最適なSNSマーケティング戦略を立てることが重要です。他ブランドの成功事例を参考にしつつも、そのまま模倣するのではなく、自社の特性に合った戦略や運用方針を見つけることが成果につながります。
「流行っているから」ではなく「合っているから」
では、どうすれば「自社の特性に合ったSNS活用」を設計できるでしょうか。筆者は、「ブランド特性」と「SNS媒体の特性」を掛け合わせることが大切だと考えています。
ブランド特性には、商品カテゴリー(メイク、スキンケア、ヘアケアなど)、販売チャネル、価格帯、ターゲット層、新商品の発売頻度などが含まれます。次の表の通りです。

SNS媒体の特性としては、各プラットフォームの投稿形式や拡散性、どのような属性のユーザーが利用しているのかなどを考慮する必要があります。

たとえば、新規顧客の認知拡大を目指す場合、拡散性を重視したSNSの選定が有効です。特にXは、リアルタイム性とシェアのしやすさという設計上、情報が短時間で広がりやすい傾向があります。TikTokを選択する場合には、利用者層とブランドのターゲット層が合致しているかを確認しましょう。
「あのブランドがXでバズっていたから」「TikTokが今流行っているから」という理由だけで発信先のプラットフォームを選んでしまうと、思うような成果につながらないケースは少なくありません。価格帯や購買導線、求められる情報の粒度が異なるため、同じ施策でもユーザーの反応は大きく変わります。
では、どのような掛け合わせ方が有効となるのでしょうか? 戦略の考え方をお伝えするため、具体的に2例を紹介します。