“グミブーム牽引”のカンロと“新主食を増やす”ZENB
カンロは大正元年創業、113年の歴史を持つ企業で、キャンディとグミに特化した事業を展開してきた。スーパーやコンビニでの販売のほか、直営店「ヒトツブカンロ」をはじめ、コミュニティの運営などを通して様々な取り組みを実施。直営店専用商品として挑戦した「グミッツェル」なども話題を呼び、グミ・飴を含むキャンディの市場が伸長する中、売上・利益の過去最高を更新している。
一方ZENBは、1804年創業のミツカングループからD2C事業として2019年に立ち上がったブランドだ。ミツカンは本来捨てられる酒粕を酢の原料として活用するなど、創業時からサステナブルな事業を展開していた。この精神を受け継ぎ、人と社会と地球の健康に貢献しようという強い思いで作られたブランドがZENBだという。通常食べられていない部分、これまで捨てられてしまっていた部分まで丸ごと「全部」活用するブランドコンセプトのもと、サステナブルでプラントベースの商品を展開。「ZENB ヌードル」や「ZENB ブレッド」を中心に、累計3,000万食を突破している。

株式会社Mizkan Holdings マーケティンググループ ZENB事業ブランドマネージャ 田中 保憲氏
suswork株式会社 代表取締役 田岡 凌氏
戦国時代のグミ市場 ピュレグミが成長した鍵は?
著しい成長を遂げ、マーケティング面でも注目を集めているカンロとZENBだが、事業成長の鍵となったインサイトはどのように発掘したのだろうか。
カンロは「ピュレグミ」と「グミッツェル」を例に説明した。
1つ目のピュレグミは、元々子ども向け市場が主だったグミを、F1層(20~34歳の女性)にターゲットをシフトして大人向けに発売しようとした商品だ。F1層の最も多い話題が恋に関することというデータがあったため、2012年に「恋の味」をコンセプトとして発売した。
「インサイトは『かわいいものに心ときめく気持ちは、人生を通じて変わらない』です。かわいいものに心ときめく気持ちは変わらない一方で、なかなかときめく場面がないこともあるでしょう。大人になればなるほど、ときめく気持ちを抑えながら日々を送っている方も多くいらっしゃいます。2022年以来、『ハートをあげるひと粒』をベースとしたコミュニケーションメッセージを展開しています」(内山氏)

もちろん、事業は常に順調だったわけではない。内山氏が「毎週のように新商品が出ている戦国時代」と語るように、グミ市場の競争は激しく、ピュレグミも何度か踊り場を経験したという。
この状況を打破し、再成長する大きなきっかけとなったのが2021年のリブランディングであった。バリエーション豊かなカラフルパッケージなどで情緒価値を強化し、ユーザーの気分に寄り添ったコミュニケーションを設計。「暗い時代に少しでも明るくなりたい」という当時の人々のインサイトに対し、ピュレグミの存在が強く響いたと分析する。
塞ぎ込みがちな日常の中で、ピュレグミが発売当初から大切にしてきた「かわいいものに心ときめく気持ちは変わらない」という普遍的なインサイトや、「ハートをあげるひと粒」というメッセージが、小さな喜びや癒やしを求める人々の心と特に強く共鳴し、成長を後押ししたのだろう。