SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

これからのパーソナライゼーション

生成AIでパーソナライズをどう実現?中川政七商店が挑む「仮想人格」を活用した施策とその成果

 工芸をベースにしたSPA(製造小売)で、生活雑貨の企画・製造・販売を行う中川政七商店は、生成AIを活用して「顧客体験の向上」と「業務効率化」を両立させる取り組みを進めています。同社の接客の根幹にある「接心好感(せっしんこうかん)」というブランド体験を、デジタルでいかに実現するのか。その挑戦は、パーソナライズされたコミュニケーションによって、メールマガジンのクリック率を最大150%向上させるなどの具体的な成果を生み出しています。本記事では、同社でマーケティング・ブランディングを手掛ける中田勇樹さんにインタビュー。データプライバシーの課題をどう乗り越えたか、10年先のAIエージェント時代への展望まで、取り組みをご紹介します。

顧客体験の向上が生む従業員負荷という課題

──中川政七商店は、この22年で売上が約20倍という驚異的な成長を遂げています。同社で中田さんは、中川政七商店独自のCRMシステム「MONJU」の開発とともに、CRMデータを活用したデジタルコミュニケーションを手掛けられてきました。最近取り組まれている業務やミッションはありますか。

 以前はコミュニケーションデザイン室に所属していましたが、2025年4月から経営企画室に異動しました。経営企画室では、事業部を横断してより広い視点でお客様の体験設計はもちろん、従業員の業務効率化にも取り組んでいます。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社中川政七商店 経営企画室 中田勇樹氏

 異動の理由は、社内で生成AI活用を広めるためです。他の事業部も含めて管轄できる経営企画室のほうが、AI導入を全社的に進めやすいからです。ただし、これまで担当していたデジタルマーケティングは引き続き行っています。

──AI活用の旗振り役となられているのですね。経営企画室に異動したことで、何か変化はありましたか?

 コミュニケーションデザイン室にいた頃は、お客様の体験をどう良くするかということが主なミッションでした。その経験を経て経営企画室に異動してからは、その体験を支える従業員の業務にも目を向け、双方が良くなる仕組み作りが必要だと感じています。

 そこで現在は、従業員側のUI/UXも改善しながら、うまくサイクルとして回してより良い顧客体験を作っていこうという、表と裏を両立させる取り組みが主なものになっています。より良い顧客体験のために手数を増やすという従来のアプローチから、生成AIを活用し、裏側の仕組みを整えることで持続可能な体験向上を目指しています。

マーケティングにおける生成AIの活用は?

──マーケティングにおける生成AIの活用についてより詳しくお伺いしていこうと思います。その前に、改めて中川政七商店の基本的なデジタルコミュニケーションの方針について教えてください。

 「お客様の心に接し、心地よいブランド体験を提供することで、商品、お店、ブランド、会社を好きになってもらう」ことを意味する当社の接客ポリシーである、「接心好感(せっしんこうかん)」の考えが基本となっています。この「接心好感」のブランド体験を、オンライン上でも実現するためのCRMツールが「MONJU」です。

 中川政七商店では、従来型の購入金額に応じたランク分けではなく、お客様が中川政七商店をどのように利用しているのか、どんな付き合い方をしているのかという行動データを元に「MONJU」で分析し、類似の購買傾向を持つ8つのクラスターに分類しています。

 たとえば、手土産を中心に購入されるクラスター、衣類を中心に購入するクラスターといった具合です。このように、お客様の行動や期待に合わせて振り分けたクラスター別に、コミュニケーションをパーソナライズしています。

次のページ
生成AIを活用したパーソナライズをどう実現しているか?

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
これからのパーソナライゼーション連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/10/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49539

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング