BtoBマーケティングは顧客像も自社の価値も見えにくい
MarkeZine Day 2025 Kansaiでは、「パナソニック コネクトに聞く!BtoBマーケターが顧客の解像度をぐっと高め、実務に活かす方法」と題したセッションに、パナソニック コネクトの関口昭如氏が登壇。EVeMの富家翔平氏がモデレーターを務め、パナソニック コネクトの取り組みをベースに、BtoBマーケティングにおける課題とその解決に向けたヒントが示された。

パナソニック コネクトは、企業のサプライチェーンから、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメントまで幅広い事業領域を持つBtoB企業だ。範囲が広いため、いち企業として「誰が顧客なのか」がわかりにくい。
そもそも、基本的にBtoBビジネスはターゲットが組織となるため、意思決定者も多様かつ、BtoCと比べると顧客の“顔”が見えにくい特徴がある。

さらに昨今は、情報収集力の向上やAI活用といった顧客側の変化、市場のグローバル化や競争激化、プロセスの分業化といった環境の変化が加わる。そのためターゲット顧客の像も見えにくくなり、マーケティングプロセスでサイロ化が発生。また製品のコモディティ化も進み、独自価値が薄れていく。
こうした中で「マーケティングで価値を訴求しよう」といっても、顧客の顔も見えておらず、自社製品の価値すらわからない。関口氏、富家氏の両氏は「多かれ少なかれ、BtoB企業ではこうしたマーケティングの課題が起こっている」と話した。

HowよりWho・What・Whyの解像度を上げよ
これらの状況を踏まえ、関口氏は「『誰に対し(Who)、何を(What)、なぜ(Why)訴求するのか』という本質が見えず、提供できる価値もわからないまま、手段(How)に先行してしまう状態に陥っていることが、BtoBマーケティングの大きな課題」とまとめた。
なぜこうしたことが起こるのか。それこそが「顧客解像度が低い」ためだ。自社製品の価値を測るために、顧客側に表面的なヒアリングを行うだけでは意味がない。
商材やソリューションにもよるが、たとえば顧客企業側に一貫した要件がないケースがある。現場は自分たちのやり方に合ったシステムを求めているのに、経営層は全体最適を考えて新しいやり方に合ったシステムを望む場合もある。自社内にニーズがないにも関わらず、顧客の先の顧客の要請といった派生需要で新しい規格に合った仕組みが必要だったり、既存の仕組みを変えられないからその製品を使い続けたり、という例も珍しくない。
また、商材の特性によっても価値やニーズは変わる。自社対1社(1 to 1)なのか、自社対多社(1 to many)なのか、自社対ニッチな市場(1 to some)なのかによって、マーケティングで何をどう訴求するかも変わってくる。

加えて、マーケティングやインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスとマーケティングプロセスの分業化が進む中、部門ごとに接している顧客のフェーズが異なるため、市場が求めているニーズや次につながるアイデアが共有されていない場合もある。企業全体として“顧客”が見えておらず、「何のために」「誰に対して」「何を」提供しているのか、本質的な価値が把握できなくなっているのだ。