(※)本記事は、調査データをもとに関東および関西エリアのライフスタイルの違いを一般的な傾向として紹介するものであり、すべての人や地域に当てはまるものではありません。個人差や地域差があることを前提に、消費傾向の多様性をマーケティング視点でご紹介しています。
家族構成や職業などの基本属性に大差はないが……
田岡:本日のテーマは、「関西エリアのマーケティング」です。意外とありそうでなかったテーマではないでしょうか。まずは、関西の消費者像の解像度を高めるため、色々な角度からデータを深読みしていきたいと思います。マクロミルの三島さんから、消費者パネルデータを基に解説をお願いできますか?
三島:では、基本的なデータ(※調査概要は末尾に記載)から見ていきましょう。はじめに、基本情報に関しては、実は関東・関西でそれほど大きな差は見られませんでした。「関西では専業主婦・パート・アルバイトが多い/関東は会社員の割合が高い」などの傾向はありますが、いずれも若干の差と言えます。
そこで、2世帯同居世帯(子育て世帯)の家族像・日々の生活にフォーカスして、より細かくデータを分析してみました。カテゴリ別の支出金額を見ると、関西は3大都市圏の移動が多いためか、関東より移動費が高い傾向に。一方で、関東は住居・家電・生活サービスの占める割合が高くなっています。

昨今、東京の住宅価格が高騰し、家賃やローンの支払いが家計の中でかなり重い状態になっていると聞きますよね。とはいえ、関西もその他の地方と比べると高い傾向にあり、関東とそこまで大きく変わらないようです。

田岡:家賃は関東のほうが高い印象でしたが、データで比較するとそれほど差がないのは意外な発見です。
三島:そうですよね。東京都のみでデータを出すともっと差が開きますが、1都3県のデータのため、差がマイルドになっています。
おもしろいのは、「買い物」に関するデータです。こちらの表は全国平均を1とした際の、カテゴリ別の出費の傾向を表しています。関東は「弁当類、調理済み麺、総菜、冷凍食品、レトルト、料理の素」などの項目が高くなっています。対して関西はこれらの項目が低く、代わりに粉類が群を抜いて高いのです。関西は肉・ハム・たまごも高く、購買品カテゴリから自炊傾向が見えてきました。

田岡:粉類の消費が多いのは、さすが関西ですね。
「買い物」から見えてくる、関東・関西のライフスタイルの違い
三島:さらに、「食品の買物回数」と「1回当たりの金額・購入商品数」を全国と比較して見ると、関東は買物回数が多く、関西は1回あたりの金額や商品点数が多くなっています。加えて、関西はディスカウントショップの利用率が高く、関東はコンビニ、飲食店、食材宅配などが高い。これらのデータから、関西ではスーパーやディスカウントショップなどでのまとめ買い傾向があり、関東では通勤途中にコンビニなどに寄る、少量高頻度な購入傾向が見えてきます。
最後に、食への行動の意識について。関西では「家で朝食を食べる」「お惣菜や冷凍食品は控えて自炊すべき」「食事は家族揃って食べる」などのスコアが高くなっています。買い物は節約を心掛けて、食事は手作り重視、家族そろって食事をする傾向があります。
一方関東は「お惣菜や冷凍食品で手早く準備を済ませたい」というスコアが高く、共働きでの時間的な制約の影響か、調理済み食品やベビーフードなどを活用しながら効率的に家事をしている印象です。

田岡:なるほど。関西・関東で見られる相違点を丁寧に読み解いていくと、それぞれの生活背景が見えてきますね。
マクロミル分析仕様
・エリア:関西2府4県、関東1都3県
・分析データ:消費者購買履歴データQPR、個人支出調査サービスMHS
・対象データと年齢:QPR15~79歳、MHS15~69歳
・データ期間:2024年4月~2025年3月