ソフトバンクが目指すWebパフォーマンス最大化
最初に住谷氏は、ソフトバンクがWebパフォーマンス最大化を実現するために注力していることを紹介した。具体的には「ページ制作力の向上」「訪問数の向上」「UI/UX改善」、これら3つの要素の改善に注力しているという。

法人統括 法人マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション統括部
マーケティングオペレーション部 2課 課長
住谷 泰紀氏
ページ制作力の向上に関しては、誰でも簡単・迅速にサイトを作成できることを目指し、訪問数の向上は専門性の高いコンテンツとSEOでの実現を狙う。そして、UI/UX改善について顧客との接点を強化し、コンバージョン率(CV率)の向上を目指している。
法人向けビジネスのマーケティングを行う法人マーケティング本部では、これら3つの取り組みを実現すべく、イベント・PRやコンテンツ、広告宣伝(デリバリー)などの機能別に組織を分け、スマートワークやセキュリティ強化など法人ビジネスで注力しているテーマごとにチームを組んで活動しているという。
「各テーマにおいてペルソナを設定し、多岐にわたる施策を実施することで顧客体験の最適化を図り、日々トライアンドエラーを繰り返しています。ただ、Webサイトの最適化プロセスに関しては、これまで十分なスピードで回せていないという課題が存在していました」
制作プロセスの内製化で制作日数3分の1&制作量約3倍に
続いて住谷氏は、最初に挙げた3つの注力事項に関して、それぞれの課題と対策、対策によって得られた成果を紹介した。
まず、ページ制作力向上における課題は大きく2つ。1つ目は、協力会社に依存した体制のため、機動性に欠け、ページ制作に時間がかかるという点である。2つ目は、何か新しい施策を始めたい・ページの一部を改修したいと思っても、準備期間が長く、すぐに効果が出ないという問題であった。
住谷氏は当時の状況について以下のように振り返る。
「制作会社のリソースやスケジュールの確認から始まり、場合によっては予算や時間を気にして、実行できない可能性も加味しながら施策に取り組んでいました」
また、こうした外部依存により、新しい制作方法や仕組みへの変化が難しいというジレンマも抱えていた。
これらの課題を解決するため、ソフトバンクはテクノロジーの導入によるプロセス変革を決断。具体的には、クラウド型CMS(コンテンツ管理システム)を採用し、制作プロセスを内製化。CMSの入れ替えは通常、半年から1年を要する大がかりなプロジェクトとなることが多いが、選択したクラウド型CMSは導入決定から約3ヵ月でページ作成が可能になった。これにより、それまで外部に集中していた制作プロセスを内製へと段階的に広げることができた。

このクラウド型CMS導入の成果は非常に明確であった。ノーコードでの制作が可能となり、コンテンツ作成力が大幅に向上したのである。これにより、「今まで外部に委託していた制作作業を段階的に内製化し、PDCAサイクルを高速で回せるようになった」と住谷氏は語る。
たとえば、緊急で特定の情報を発信したい場合や、A/Bテストのために複数のパターンのページを短期間で用意したい場合など、これまでは不可能だった迅速な対応が可能になった。利用者の声も肯定的で、「操作は簡単で直感的に作業できる」、「作業時間は短縮され、効率は劇的に変わった」 といった感想が寄せられたという。
具体的な数値として、クラウド型CMS導入前と比較し、新規ページ制作にかかる作業日数は3分の1に削減された。さらに、制作のスピードアップによって、PDCAを回すためのページ制作量も約3倍に向上した。住谷氏は「数値としてもいい結果が出た施策」と評価しており、これにより、Webサイト改善の土台が確立されたと言えるだろう。