変容する金融業界のマーケティング
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登録者数57万人超え!松井証券のYouTubeチャンネル
──はじめに、松井証券のYouTubeチャンネルについて教えてください。
武藤:松井証券では現在、公式チャンネルとサブチャンネルの2つのYouTubeチャンネルを運用しています。公式チャンネルは10年以上前から運用していましたが、明確な戦略を立てて活用していたわけではありませんでした。本格的に活用を始めたのは、私が担当となった5年前の2020年からです。当時のチャンネル登録者数は2,000〜3,000人程度でしたが、現在は公式チャンネルは45万人、サブチャンネルは12万人を超え、多くの方にご覧いただけるチャンネルに育っております(2025年5月時点)。

──2つのチャンネルはどのように使い分けているのでしょうか?
武藤:公式チャンネルは、情報の鮮度よりも、普遍的な情報をわかりやすく伝えることを主眼としています。たとえば、「資産運用!学べるラブリー」シリーズでは、お笑いタレントのマヂカルラブリーさん、総利益100億円を超える株式投資家テスタさんに出演いただき、普遍的な投資のテーマを扱っています。難しい内容も含まれますが、投資を始めたばかりの初心者の方や、これから投資を始めようとしている方の道しるべとなるような内容を意識して制作しています。
武藤:また、現在人気のコンテンツとして「予約の取れない株相談所」があります。「資産運用!学べるラブリー」が座学形式であるのに対し、「予約の取れない株相談所」は実際に投資をしている方々が自分の悩みを専門家に相談するという形式です。お金の話はなかなか友人や家族には相談しづらく、投資家の方々は基本的には一人で孤独に取り組まれています。そして自己流でうまくいかない、相談したい……と悩む方が多いです。そこで専門家に相談するという設定が面白いのではないか考え、作ったシリーズとなります。これが現在の公式チャンネルの二大ヒットコンテンツです。
武藤:一方サブチャンネルは、2021年に立ち上げました。サブチャンネルが重視しているのは速報性です。相場は生ものですので、タイムリーな情報を速報として発信しています。またサブチャンネルでは「既に投資をしている方々」により多くの情報を提供し、取引を活性化することを主目的としています。
たとえばエコノミストのエミン・ユルマズさんが毎月株式と為替の相場解説を行う「エミンの月間株式相場見通し」「エミンの月間為替相場見通し」や、経済アナリストの森永康平さんが毎週旬のテーマについて独自の視点で解説する「森永‘sVIEW」などを展開しています。
証券会社がYouTubeチャンネルに取り組むワケ
──そもそもなぜ、YouTubeチャンネルの活用を本格化させたのでしょうか?
武藤:証券会社としては、お客様への情報発信が非常に重要です。相場は「生もの」であり、お客様は常に取引の材料を探しています。情報を発信する媒体は様々ありますが、証券会社はそのような情報発信源の一つにならなければなりません。そうでなければ、お客様がその証券会社を選ぶ理由も薄れてしまいます。
また、情報発信の手段については、以前は私のような社員が会場で説明するというのが一般的でした。しかし現在では、YouTubeをはじめとした様々なSNSなど多様な手段があります。その中で私たちがYouTubeを選んだのは、情報の速さや内容の奥行き、面白さといった要素をうまく表現できるからです。