2026年の年明け、マクドナルドが少し意外な形で話題をさらった。英国とアイルランドで、同社は初の公式「シークレットメニュー」を発表したのである。裏メニューといえば、ファンの間で半ば都市伝説のように語られ、非公式に楽しまれてきた存在。それを、世界最大級の外食ブランドが正面から“公式化”したのだ。この施策は、単なる新年向けの話題づくりでも、遊び心あふれる限定企画でもない。SNSで自然発生したファンの「メニューハック」を、商品として採用し、販売判断そのものに組み込んだ点にこそ本質がある。UGCをどう扱い、Z世代とどう向き合うのか。その問いに対する、マクドナルドなりのひとつの答えが、このシークレットメニューなのである。
マクドナルドUKで何が起きたのか
2026年1月、英国およびアイルランドのマクドナルド(以下、マクドナルドUK)は、同社初となる公式「シークレットメニュー」を期間限定で展開した。特徴的なのは、ゼロから新商品を開発したのではなく、SNS上で長年ファンによって共有されてきた“メニューハック”をベースにしている点である。
これらのハックは、TikTokやX(旧Twitter)などで自然発生的に広まり、実際に店舗で試され、評価されてきたものだ。いわば市場テスト済みのアイデア群であり、マクドナルドはそれを拾い上げ、オペレーションや品質の観点から整理し、公式ラインナップとして提示した。期間限定とした点も含め、リスクを管理しながら顧客参加型の商品体験を成立させる設計になっている。
ファン発のハックが公式になった「シークレットメニュー」
今回のシークレットメニューは、日本人にとっても直感的に理解しやすい内容だ。いずれも既存メニューの組み合わせで構成されており、「やったことがある」「聞いたことがある」と感じる人も少なくないだろう。
「Surf N’ Turf(サーフ&ターフ)」は、ビーフパティとフィレオフィッシュを組み合わせたバーガーである。陸と海を掛け合わせる大胆さがSNSで話題となり、裏メニューの定番として親しまれてきた。
「Chicken Big Mac(チキン・ビッグマック)」は、ビッグマックの構造をそのままに、ビーフの代わりにチキンパティを使用したものだ。過去に限定販売された経験もあり、復活を望む声が多かったメニューでもある。
「Chicken Cheeseburger(チキン・チーズバーガー)」は、ビーフとチキンという異なるタンパク源を一つのバーガーにまとめたハックだ。シンプルだが、「それを公式にやるのか」という意外性がある。
サイド的な存在として注目されているのが、「Big Mac Sauce(ビッグマックソース)」の単品提供である。これまで“味の象徴”でありながら主役にならなかったソースを、あえて前面に出した点も、ファン文化への理解を感じさせる。
ドリンクでは、「Espresso Milkshake(エスプレッソ・ミルクシェイク)」が用意された。バニラシェイクにエスプレッソを自分で注ぎ、混ぜて完成させる仕様で、完成品を渡さない点が象徴的だ。体験そのものを商品にしている。
デザートの「Apple Pie Mini McFlurry(アップルパイ・ミニマックフルーリー)」も、SNSで人気だった食べ方をそのまま公式化したものだ。温かいアップルパイと冷たいソフトクリームの組み合わせは、写真映えと実食体験の両方で支持されてきた。
これらのメニューに共通しているのは、「奇抜さ」ではなく、「すでに愛されていた」という事実である。マクドナルドは新しさを作ったのではなく、顧客の間に存在していた遊びを、正規の体験として承認したにすぎない。
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岡 徳之(オカ ノリユキ)
編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。
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