ドメスティックな市場を「世界標準」へ。オリコムが描くOOHの未来地図
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、山本さんが現在取り組まれているミッションについてお聞かせください。
山本:OOHメディアプロデュース局のメディアアクティベーションディレクターとして、オリコムのOOH事業における価値創出やソリューション開発に取り組むかたわら、日本のOOH業界全体を「世界標準」の価値観へとアップデートし、変革を後押しすることをミッションとして活動しています。そのための活動の軸として、世界各国のWOO(World Out of Home Organization)主催のカンファレンスに参加し、そこで得たグローバルな「気づき」を日本へ持ち帰り、還元する役割を担っています。
山本 正博氏
オリコムは、OOH事業に携わっておよそ100年という長い歴史を持ち、古くは交通広告を事業化したという経緯があります。また、過去50年以上にわたって、人流を測る「サーキュレーション」データを発行し続けてきた実績もあります。そうした知見の蓄積がある一方で、日本のOOH市場は、ある種「ドメスティックな進化」を遂げてきた側面も否めません。
しかし今、広告主の方々の価値観は、アカウンタビリティ(説明責任)を求める「世界標準」へと向かっています。このギャップを埋め、日本のOOH市場にもグローバル基準に則った「国内統一メジャメント」や評価基準を落とし込んでいく。それが私の役割だと考えています。
世界では常識のROI計測。日本市場を阻んでいた「業界構造」の壁
MZ:グローバルにおけるOOHの最前線は、日本市場と比較してどのような違いがあるのでしょうか?
山本:グローバルでは、OOHの接触をインプレッションベースで標準化し、他メディアと同じ土俵で設計・比較することが一般的になっています。ヨーロッパやオーストラリアなどでは、統一メジャメントの整備が進み、OOHはマーケティングプランの中で自然に組み込まれる存在となっています。
一方、日本では「共通指標の不在」が、横並びでの比較や統合設計を難しくしてきました。
MZ:なぜ日本では、グローバルのような「共通指標」が作られてこなかったのでしょうか?
山本:大きな要因として、古くからの「枠売り」という商習慣が残っていたことが挙げられます。デジタルサイネージ(DOOH)が登場し、プログラマティックな取引が一部で始まってもなお、「場所とモノ」を売買する「一物一価」の感覚が根強かったのです。
また、業界構造の問題もありました。日本のOOH業界は、鉄道会社が主体の「交通広告」と、ビルオーナー等が主体の「屋外広告」などに分かれており、いわば「縦割り」の状態でした。OOHという同じジャンルでありながら、業界を横断して価値を議論する場がなかったことも、指標の整備が遅れた一因だと言えます。

