ITがルーツのトライアルが指す、ムダ・ムラ・ムリのない世界
九州を中心に店舗を拡大してきた流通小売企業、トライアルホールディングス。2025年の西友買収によって、売上高1.3兆円規模の「トライアル経済圏」を構築したことも、多くのマーケターにとって記憶に新しいトピックスだろう。
西友をはじめとしたスーパーマーケットの印象が強い同社だが、意外にも祖業はITだった。「ITで流通を変えたい」という創業者の強い思いを原点に、あらゆる場面での「ムダ・ムラ・ムリ」をなくしていくための挑戦を続けている。それは今回のテーマとなる「広告」でも同様だ。
広告の「ムダ・ムラ・ムリ」をなくすために、テレビ・新聞等のマスメディアからデジタルメディアへの移行を進めている企業も多いだろう。総務省のデータでも、マスメディアの影響力は2020年以降、急激に低下していることがうかがえる。
一方、認知経路・購買促進の代替手段として注目を集めているのが「リテールメディア」だ。リテールメディアには小売各社が展開するアプリ内でのクーポン広告なども含まれるが、トライアルが特に注力するのは店頭の「サイネージ」だという。
「サイネージなら、来店したお客様全員がターゲットとなりますし、買い物中に何度も、棚前で広告に接触させることが可能です。お客様の買い物をする“瞬間”に効果を発揮できれば、テレビと同等、またはそれ以上の手法となり得るのではないでしょうか。トライアルは本気でこれを実現しようと考えています」(野田氏)
トライアルでは直近、首都圏の西友 74店舗に店内サイネージを“爆速”で設置中だ。視聴率5%相当の世帯リーチを見込み、購買効果で既存メディアを凌駕する、新たな巨大メディアが売り場起点で生まれ始めている。
首都圏で加速するトライアルの新しい売り場づくり
現在トライアルは九州での成功モデルを携え、首都圏での展開を急速に広げている段階だ。その一例として、サテライト型小型店「TRIAL GO」と、既存の西友店舗をリニューアルした「トライアル西友」が挙げられる。
「TRIAL GO」は、近隣店舗や製造拠点から高頻度で商品を配送する都市型のサテライト店舗。2026年3月時点では笹塚や中野など東京5店舗のみの展開だが、3年で100店舗にまで拡大させる計画となっている。
「TRIAL GO」の特徴の1つが、店内外のあちこちに取りつけられたサイネージ。時間帯に合わせて訴求する商品を細かく差し替えられるのも、デジタルならではの強みだろう。「想定されるお客様の気分や店頭の品揃えに合わせて、コンテンツの出し分けを検証していくことで、サイネージ効果を最大化していきたい」と野田氏は話す。
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また、西友の既存店舗を改装し「トライアル西友」として生まれ変わらせる取り組みも進めている。これまで九州を拠点に拡大してきたトライアルは、郊外の平屋店舗が中心だった。一方で都内の駅前にあるような総合スーパーマーケットは多層階型が中心。いかにお客様を上層階へと誘導するかがカギとなる。
ここでもサイネージを積極活用し、売り場と連動して展開。花小金井店では、2階への送客強化などが功を奏し、改装後の2ヵ月間で売上高が約42%増、客数が約36%増という驚異的な初動を記録した。
さらに、同社は首都圏や中部で広く展開するスギ薬局と2026年1月に包括的協業をスタートさせている。プライベートブランドの相互供給や、物流・仕入れの最適化のみならず、リテールメディアとしての可能性も模索中だ。スギ薬局が抱える約2,500万人の会員データと、トライアルの約1,200万人の会員データを合わせれば、3,700万人以上にリーチ可能な巨大メディア圏が誕生することになるだろう。
