そのメディア投資は、本当に効いているのか?
「このメディア投資判断は、本当に正しいのだろうか?」
日々マーケティングの業務に携わるなかで、そう迷う場面は少なくないのではないでしょうか。
日本の総広告費の半分以上をデジタル広告が占めるようになり、さらに海外では、リテールメディアへの投資規模がテレビ広告を上回るなど、現在のメディアを取り巻く環境は、引き続き大きく変化しています。
生活者が情報に触れる場所やタイミングはさらに多様化し、ブランドにとってメディアが果たす役割も広がっています。クリック数や購入件数など、目の前の数字は見えやすくなった一方で、ブランド全体にとっての「正解」は見えにくくなっているのです。
このように、メディアへの投資判断はますます難しくなっています。そうしたなか注目されるのが、これまでプランニングの「常識」とされてきた考え方を問い直すようなファクトが、次々と明らかになっていることです。しかもそれらは、感覚論や一部の事例ではなく、量的な調査や実証研究をもとに示されているものです。
私たちはいま、当たり前だと思ってきたメディアプランニングの前提そのものを、改めて捉え直すタイミングに来ているのかもしれません。本コラムでは、メディア投資がブランドの成長にどう貢献しているのかという視点から、複雑化する時代に押さえておきたい「新しいメディアプランニングの視点」を紹介していきます。
新視点1:メディアは「見られたか」で評価 CPMからACPMへ
CPMという絶対的指標
長い間、メディアプランニングでは、ブランド広告の効率を測る指標としてCPM(Cost Per Mille)が使われてきました。CPMとは「1,000人に広告を届けるためにいくらかかるか」を表す指標です。この考え方は19世紀の新聞広告の時代から使われており、テレビ、雑誌、ラジオ、デジタル広告などが発展した現在でも、異なるメディアを横並びで比較できる便利な物差しとして、マーケティング業界で広く活用されてきました。
実際に視認されている広告は約6割
ところが近年、CPMだけでは広告効果を十分に評価できないことが明らかになってきました。業界団体MRCの調査によると、配信された広告のうち、実際にユーザーの目に留まっているものは約61%。さらに、しっかりと注視されているものは17%にとどまります。つまり、広告は配信されたからといって必ず見られるわけではなく、本当に注視されているのは2割未満にすぎないのです。
この「注視されていること」は、広告効果を考える上で重要な要素です。Havas社の調査でも、広告を注視した時間が長いほど、ブランド認知や購入検討への影響が大きくなることが確認されています。累計広告視聴秒数とブランドリフトには明確な比例関係が見られており、広告効果を高めるには「どれだけ届いたか」だけでなく、「どれだけ見られたか」を見る必要があることが示されています。
ACPMという新しい指標
そこで注目されているのが、ACPM(Attention Cost Per Mille)という新しい指標です。これは、「広告がユーザーに1,000秒注視されるためにかかるコスト」を測るもので、単なる表示量だけでなく、メディアの“質”も評価に加える考え方です。
この視点でメディアコストを比較すると、従来のCPMでは見えなかった違いが浮かび上がります。たとえば、イギリス市場で行われた調査では、CPM(到達コスト)だけで見るとシネアド(映画館のスクリーンで配信する動画広告)は「効率が悪い」メディアと評価されます。しかし、ACPM(注視コスト)で見ると、テレビに次いで効率の良いメディアとして捉え直すことができます。
このように、ACPMでメディア投資を考えると、ブランドリフトにより直結する“本当の効率”を把握しやすくなります。現段階では、視認や注視を正確にトラッキングするにはまだ限界があり、実務での活用には課題もあります。それでも、ACPMを提示するメディアは少しずつ出てきており、ブランド効果に直結する「メディアの質」を測る指標として、今後さらに注目されていくと考えられます。
