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AI時代こそ「人の温度」が武器に。オンワード樫山『23区』が新業態路面店で描く新たな顧客体験

 アパレル業界において、EC化の波と並行して「リアル店舗の存在意義」が改めて問われている。長年、百貨店などの商業施設(インショップ)を中心に展開し、確固たる地位を築いてきたオンワード樫山の中核ブランド『23区』は、2026年3月、東京・青山に新業態のフラッグシップストア「SALON 23区 AOYAMA」をオープンした。なぜ今、あえて路面店という新たな顧客接点を設けたのか。そこには、館の集客に依存せず、自ら新規顧客を開拓し、既存顧客のロイヤルティを深めようとするブランドの強い意志があった。ブランドの販売戦略全般を担当する秋山 亜希氏に、新店舗を通じた顧客コミュニケーションの変革について聞いた。

確かな質で幅広い層に支持される『23区』の現在地

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株式会社オンワード樫山 執行役員 第一カンパニー 副カンパニー長 秋山 亜希氏
営業職として入社し、店舗営業(リテール部門)を経験。その後、ショッピングセンター(SC)や百貨店外流通のブランドを担当し、本部販売やEC、商品企画(MD)との連携などに携わる。2022年に『23区』へ異動。現在は同ブランドの販売戦略全般、予算・利益管理、ブランディング向上を牽引し、リアル店舗とオンラインを横断した新たな顧客体験の創出に取り組んでいる

——まずは秋山様のご担当業務とミッションについて教えてください。

 第一カンパニーの副カンパニー長として、『23区』ブランドの販売戦略全般を担当しています。主なミッションは、売上と営業利益の予算を達成することと、ブランド価値を向上させることです。具体的には、予算の組み立てから、ものづくり、仕入れ、価格設定、在庫管理までを一貫して見ています。実際の販売を担うリテール部門や、EC・販促部門とも密に連携しながら、ブランド全体の数字を作っていく役割です。

——オンワード樫山における『23区』の位置づけや、ターゲット層、ブランドの強みについて改めてお聞かせください。

 『23区』は、売上規模・店舗数ともに当社を代表する、中核ブランドの一つです。
ターゲットについても、年齢や着用シーンをあえて限定せず、「ここに来れば、自分に合う一着が見つかる」と感じていただけるブランドを目指しています。

 世間的には、“スーツブランド”という印象をお持ちの方も多いのですが、実際にはデニムやシャツなどのカジュアルアイテムも高い支持をいただいています。オン・オフを問わず、日常に寄り添う幅広いスタイルを提案できることも、『23区』の強みのひとつだと考えています。

 また、ブランドとして大切にしているのは、「価格と価値のバランス」です。百貨店のバイヤーや雑誌のスタイリストの方々からも、「この素材や縫製クオリティで、この価格は驚きがある」と言っていただくことが少なくありません。

 良いものを、一部の限られた方だけではなく、より多くのお客様へ届けていく。そのために、品質と価格の最適なバランスを追求し続けていることも、『23区』らしさだと思っています。

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同社提供

なぜ今「路面店」なのか?新業態オープンの狙い

——2026年3月にオープンした新業態「SALON 23区 AOYAMA」の概要と、空間へのこだわりを教えてください。

 「SALON 23区 AOYAMA」は、単なる物販店舗ではなく、『23区』の世界観や過ごす時間そのものを体験していただくためのフラッグシップストアとしてオープンしました。

 百貨店などのインショップと比べ、路面店は空間演出や体験設計の自由度が高いことが大きな特徴です。その強みを活かし、一から“心地よい空間”を作り上げました。

 店舗は、奥行きのある空間構成を活かし、「1日の時間の流れ」をテーマにした3つのエリアで構成しています。

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店舗内の様子。左から「OFFICE(Morning)」「TERRACE(Daytime)」「ROOM(Evening)」と異なるテーマを持った空間になっている(クリックすると拡大します)

 エントランスに近いエリアは、朝の“OFFICE”をイメージした、白を基調とした明るくクリーンな空間。中央は昼の“TERRACE”として、グリーンや石畳を取り入れ、リラックスして過ごせる空間に。そして最奥部には、夜の“ROOM”をテーマにした、木目を基調とした落ち着きのある空間とVIPルームを設けています。

 また、自然光の入り方や照明のバランスにもこだわり、『23区』が展開する多彩なラインアップを、それぞれ異なる世界観の中で表現できるよう設計しました。

 お客様がその日の気分やライフスタイルを重ねながら、自然にブランドの世界観を体感できるような空間を目指しています。

——これまでインショップ展開が中心だった中で、なぜ今回、路面店でのオープンに踏み切ったのでしょうか?

 最大の理由は、「自分たちでお客様を呼び込む店舗」が必要だったからです。

 長年、百貨店などのインショップを中心に出店してきましたが、どうしてもその「館の集客力」に頼った運営になっていました。優秀なスタイリスト(販売員)のおもてなしによって顧客化を進めてきましたが、ブランド自身が主体的に新しいお客様を呼び込めていたかというと課題があります。

 既存顧客のロイヤルティをさらに高めること。そして、今まで『23区』に触れてこなかった新しいお客様の視界に入り、接点を持つこと。この2軸を実現するためには、館の枠を超えて、独自の取り組みができる直営のフラッグシップストアが必要不可欠だと判断したのです。

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1日9枠限定のイベントも。特別な顧客体験と店舗の新たな役割

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50742

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