主要ブランドの固定化が続く炭酸飲料市場
──まずは大槻さんのこれまでのキャリアと、現在のご担当業務について教えてください。
私は入社以来、サントリーで酒類のマーケティングに6年ほど従事していました。焼酎や梅酒、輸入酒など複数のブランドに携わった後、飲料部門へ異動し、缶コーヒーの「BOSS」や「クラフトボス」を担当しました。炭酸飲料カテゴリーの開発担当になったのは2025年の春からです。現在は、新炭酸飲料ブランド「NOPE(ノープ)」のブランドマネージャーを務めています。
──炭酸飲料カテゴリーの市場環境について説明いただけますか?
炭酸飲料市場はロングセラー商品が非常に強い、いわゆる“成熟市場”です。新ブランドの成功例は、2012年発売の「オランジーナ」まで遡る必要があるほど顔ぶれが固定化しています。そのため、昔から炭酸飲料を愛飲している人は変わらず飲み続けている一方で、20代や30代といった若い世代が新しく入ってきづらい状況が続いていました。
そうした環境の中で、既存の炭酸飲料ブランドの延長線上の提案をしても若い世代を振り向かせることは難しい。だからこそ、今あるブランドの資産に頼らない新ブランドを0から開発し、話題性という最初の取っ掛かりを生み出す必要があると判断しました。
若手社員との会話がギルティニーズ把握のきっかけに
──「ギルティ(罪悪感)」というキーワードには、どのようなプロセスを経て辿り着いたのですか?
まずは対象となる若年層の生活を調査することから始めました。炭酸飲料の飲用シーンを深掘りすると、20代・30代は他の世代と比べて「ストレスを解消したいときに飲む」という回答が非常に多かったんです。SNSの普及などを背景に、若い世代も深刻なストレスを抱えていることが見えてきました。
調査を進めるうち、今の若者は一人で過ごすことを好み、ストレス解消にも「非日常的な刺激を受けて発散する」より「一人でだらだらしながらストレスを溶かす」という方向を求めているのではないかと感じました。
決定打となったのは、同じチームに所属する2年目の若手社員とのディスカッションです。彼女が「土日のどちらかは自宅のベッドの上でカップ麺を食べながら、動画ストリーミングサービスで映像を見て、誰にも会わずに過ごす。それがストレス解消になる」と話してくれました。
その感覚が個人的なものなのか、それとも一般的なものなのかを探るために追加調査を行ったところ「一人でギルティなものを楽しみながらだらだらする」というニーズに手応えを感じました。隣のフード市場では既にギルティフードが活況でしたから、これを飲料に持ち込めば、ストレスをだらだらと溶かしていく世界観が炭酸飲料で作れると考えたんです。
──健康志向という市場の大きな流れには逆行するコンセプトですが、社内の反応はいかがでしたか?
大きな反対はありませんでしたが「本当にギルティで大丈夫か」という懸念はありました。ただ、ギルティフード市場は健康市場と同じかそれ以上に伸長している事実があります。加えて、調査で100人以上の方と対話した結果とともに「体の健康も大事だが、心の健康のためにストレスを溶かす時間も必要だ」というバランスの重要性を示すことで、社内の合意を形成していきました。
炭酸飲料カテゴリーを盛り上げることは会社にポジティブな影響をもたらすはずですし、そのためには新しい“角”を取りにいかなければなりません。新商品というよりは「ギルティ炭酸」という新しいカテゴリーを創造するような取り組みでした。
