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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Online

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AI時代こそ「人の温度」が武器に。オンワード樫山『23区』が新業態路面店で描く新たな顧客体験

「定番品」を軸にした新規顧客へのアプローチ

——リアル店舗とECを横断して顧客エンゲージメントを高めるために、現在どのような課題感をお持ちですか?

 会員データを見ると、リアル店舗とECの両方を利用してくださるお客様のエンゲージメントや客単価が最も高いことがわかっています。そのため、ECのみを利用している方をリアル店舗へ、リアル店舗のみの方をECへと送客することが重要です。

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 課題は、データの活用です。お客様がECサイトで何を見たか、カートに何を入れたかというデータは揃っているのですが、それをリアル店舗のスタイリストが接客に活かすといった「シームレスな連携」にはまだ課題が残っています。各チャネルで適切なコンテンツを出し分け、一人ひとりのお客様に合わせたアプローチを仕組み化していくことが今後の目標です。

——新規顧客の獲得に向けて、プロモーションや訴求方法で工夫されていることはありますか?

 現在取り組んでいるのは、定番商品の“見せ方”を変えていくことです。

 以前は、どうしても「新作」や「旬の商品」を中心にプロモーションを組み立てることが多かったのですが、最近は「本当に強い定番商品を、これまで接点のなかったお客様にどう届けるかが重要だ」という考え方が社内でも強くなっています。

 たとえば、ブランドを代表する定番ダウンを、冬季スポーツの盛り上がりに合わせてアスリートの方に着用いただいた際には、これまでとは異なる新しい層のお客様から大きな反響がありました。商品自体は変わらなくても、誰が着るのか、どんな文脈で届けるのかによって、受け取られ方は大きく変わるのだと実感しています。

 またECでは、同じ商品でもモデルやスタイリング、打ち出すタイミングを変えながら、「どの見せ方が、どの層に響くのか」を細かく検証しています。まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、こうした地道なトライアンドエラーこそ、新しいお客様との接点を広げる上で非常に重要だと考えています。

AI時代に際立つ「人と人のつながり」。ファッションがもたらす高揚感を武器に

——「SALON 23区 AOYAMA」を活用して、今後挑戦していきたいことを教えてください。

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リリースより

 今後は、近隣にお住まいの方や、これまで『23区』に触れる機会のなかった方にも、気軽に足を運んでいただける場にしていきたいと考えています。

 その取り組みのひとつとして、フラワーアレンジメントやアロマオイル作りなど、ライフスタイルに寄り添ったワークショップを定期的に開催していく予定です。洋服を販売するだけではなく、ブランドの世界観や心地よい時間を体験していただける接点を増やしていきたいと思っています。

 また、これまでの大規模なブランド運営では、どうしても失敗を避けるために、ルールや運営体制がトップダウン型になりやすい部分もありました。ですが、この店舗に関しては、もっと現場主導で自由に挑戦できる場所にしたいと考えています。

 たとえば、スタイリスト自身の発想からイベントが生まれたり、お客様との会話から新しい企画につながったり。そうした小さなチャレンジを積み重ねながら、ブランドの可能性を広げていきたいんです。

 もちろん、『23区』らしい世界観や品質は大切にしながらですが、ある程度のトライアンドエラーを許容し、実践を通して“これからのブランド体験の正解”を探していける場所にしていきたいと思っています。

——最後に、これからの時代のファッションブランドにおける顧客体験のあり方について、メッセージをお願いします。

 今後、AIやデータ分析の技術はさらに進化し、合理的なレコメンドや提案は、ますます自動化されていくと思います。

 たとえばAIに、「あなたは黒いニットをすでに何枚も持っているので、新しく買う必要はありません」と言われたら、理屈としては正しいのかもしれません。でも実際には、信頼しているスタイリストから「今年の一着はここが違うんです。きっとお似合いになると思います」と熱量を持って提案されると、心が動く瞬間があります。

 私は、そこにファッションの本質的な面白さや、“人間らしさ”があると思っています。

 今は洋服が世の中に溢れていて、服はもはや「生きるために必要だから買うもの」ではなくなっています。それでも人が服を買うのは、新しい自分に出会う高揚感や、人とのコミュニケーション、そのブランドが持つ価値観や世界観に共感したいからではないでしょうか。

 だからこそ私たちは、商品の品質や機能だけではなく、人と人とのつながりや、ブランドに込められた熱量まで届けられる存在でありたいと思っています。AI時代だからこそ、“人の温度”を感じられるブランド体験が、より重要になっていくと感じています。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50742

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