AIネイティブ化を"1年前倒し"で現実に
冒頭に登壇した電通グループ 代表執行役 社長 Global CEO兼dentsu Japan CEOの佐野傑氏は、グローバル全体のAI戦略「AI For Growth」のコンセプトを改めて説明。AIを単なる効率化・最適化ツールではなく、その先にあるクライアントの成長と変革を支援する存在——Opportunity beyond Optimization——と位置づけ、クライアントの成長支援を通じたグループの収益基盤にするという基本姿勢を強調した。
dentsu JapanのAI戦略「AI For Growth」は、段階的に進化してきた。2024年8月に「AIと高め合う」というビジョンを掲げてスタートし、2025年5月には「マーケティングのすべてをAIネイティブ化する」構想(2.0)を発表。そして今回の3.0が意味するのは、構想を現実に落とし込む「実装フェーズへの移行」だと佐野氏は語る。
「2027年の未来像として描いていたマーケティングのAIネイティブ化が、1年前倒しで現実になりつつあります」(佐野氏)
社内での進捗は既に数字に表れている。現在、dentsu Japan社内では4,500以上のAIエージェントと1,300以上のAIアプリが稼働。2025年度の業務創出時間は年間10.7万時間を突破し、2026年度は20万時間超を見込むという。また、クライアント・パートナーへのAI変革支援も200件以上の実績を積み上げており、2026年度には1,000件を目標に掲げる。
「PDCA」は「PSDCA」へ
今回の発表の核心とも言えるのが、電通 執行役員(マーケティング担当)の貝塚康仁氏が説明した新しいマーケティングフレームワーク「PSDCA」だ。従来の「PDCA(Plan→Do→Check→Action)」との違いをひと言で表すなら、「Doの前にSimulateを挟む」プロセスへの転換である。

従来のPDCAには、構造的な限界があった。どれだけ精緻な計画(Plan)を立てても、実際の生活者や市場の反応は「Do(実施)」してみなければわからない。新商品でも、広告キャンペーンでも、コストと時間をかけて市場投入して初めて、仮説が正しかったかどうかが検証できる——それがマーケティングの長年の制約だった。
この課題を解決するためのキーインフラが、dentsu Japanが独自開発した「AI Market Twin」だ。製造業では、実際に製品をつくる前にデジタルツイン上で仮説検証を繰り返す「シミュレーション設計」が一般化している。AI Market Twinはこの発想をマーケティングへ移植したものだ。

具体的には、dentsu Japan独自の大規模生活者データをもとに、市場ごとに異なる購買行動や意思決定プロセスを持つAIペルソナ群を構築。このAIペルソナたちが集合することで「仮想の市場全体」が形成される。マクロな市場トレンドの把握と、ミクロな個々の購買ジャーニーの再現が同時に可能になるという。
