SaaSプロダクトと並行し、提供サービスも整理
「AI For Growth Suite」は基本SaaS型での提供となる。一部開発中のプロダクトもあるが、ほぼ既に提供が開始されている。また、プロダクトと並行して提供する「AI For Growth マーケティング変革支援サービス」は、4つのレイヤーで構成される。
- 戦略策定(Strategy):AI活用の方針策定、KPI設定、ロードマップ・人材・組織変革の4領域を一貫支援
- 業務変革(Operation):業務プロセスの分析からAIエージェント実装まで、プロセス変革を伴走支援
- IT・データ基盤構築(IT/Data):AI-Ready化に向けたデータ整備・MCP化・AIエージェント間連携の基盤開発
- 人材・組織変革(People/Organization):AIを活用できる人材育成から、新たなマーケ組織の設計まで支援
いずれもツール単体の提供にとどまらず、現場への伴走支援を重視する姿勢が強調された。さらにその先の構想として、dentsu Japanデータ&テクノロジープレジデントの松永久氏は「Marketing Agent Protocol」のビジョンを示した。AIエージェントが企業間の壁を越えてデータやナレッジを共有し合う「共進化ループ」の実現を目指すもので、LINEヤフー、マクロミル、NTTドコモなどとの実証実験も既に進行中だという。

AI開発センターを新設、グローバル連携で開発を加速
こうしたdentsu Japanのサービス・プロダクト展開を支えるのが、研究開発とガバナンスの体制だ。開発面では、2026年2月に電通総研内にAI開発センターを新設。グループ各社に分散していたAI開発機能を集約し、AI For Growth Suiteの開発・リリースを加速させる体制を整えた。大規模・ミッションクリティカルなシステム開発で実績を持つSIerとしての電通総研の強みを、AIプロダクト開発に直結させる狙いがある。

研究面では、東京大学AIセンター・未来ビジョン研究センターとの共同研究を2022年から継続。「クリエイティビティとは何か」「AIが物理空間に進出する未来」といった多様なテーマで研究に取り組んできた。また、電通データアーティストモンゴル社が最先端技術の探索・プロトタイピングを担い、インド拠点のDentsu Global Services(5,000名超のエンジニア)がそれをスケールアップする——という役割分担で、研究から実装までを一気通貫でカバーする体制も整っているという。
重要なガバナンス面では、グループ横断の相談窓口に累計1,153件(2026年4月末時点)の問い合わせが寄せられており、現場のAI活用を支える仕組みとして機能している。積み上げられた相談事例はガイドライン整備にも反映され、外部への情報発信にもつなげているという。「最先端の技術を、安心・安全とともに届ける」——そのような体制が、着実に整いつつある。
プロダクト・サービス・研究開発・ガバナンスが揃い、マーケティングのAIネイティブ化はいよいよ現実味を帯びてきた。AI For Growthは、電通グループがAIを事業成長の中核に据え、クライアントとともに変革を推進するという戦略的な意志表明とも読める。マーケターにとっては、広告会社との付き合い方が変わる可能性を示唆しているのではないだろうか。
