ECにチャレンジしたのは、キャリアの逆張りからだった
――今回はMarkeZineの20周年特別企画として、コメ兵でのEC立ち上げやユナイテッドアローズのCDOを経て、現在は300Bridge代表として企業のBX(ビジネストランスフォーメーション)支援を手掛ける藤原義昭さんにお話を伺います。藤原さんがコメ兵でECを立ち上げたのは、2000年頃でしたね。
まだ「EC」が「ネット通販」と呼ばれていた時代です。2000年というと、IT企業各社がオークションサービスを始めた頃で、Amazonが日本に上陸したばかり。通信回線も光回線ではなくADSLが主流でした。
そのタイミングで、コメ兵の新規事業としてネット通販を始めようという話が出ました。私はPCもほとんど触ったことがなかったのですが、手を挙げて始めたのがキャリアのスタートです。
――未経験から手を挙げた理由は何だったのでしょうか。
自分のキャリアを作るうえで、世の中に「逆張り」する思考を大切にしていたからです。小売業のキャリアといえば、店舗での経験を経て店長になり、エリアを統括して部長、そして役員を目指していくがよくあるキャリアのルートです。しかし、私は人と同じことをやるよりも、面白い仕事や新しいことを始める方が好きでした。
当時はECをやっている人も少なく、競合もほとんどおらず、検索すれば必ずヒットするような状況でした。そこで、ジュエリーのECからスタートしました。
――コメ兵では時計やバッグなど様々なブランド品を当時から扱っていたと思いますが、最初はジュエリー専門のECだったのですね。
ジュエリーは、顧客の平均単価が高く、店舗で売られている全商品の平均単価と比較すると3倍以上はする高価格商品でした。最初は1人で立ち上げたので、やれることには限りがあったため、ECでは高価格商品を絞ってサイトに登録し、販売する戦略をとりました。
ECサイトの制作も自身でHTMLを学び、協力ベンダーさんと二人三脚で作りました。マーケティングの知識があったわけではありませんが、「誰に、どんなものを、どう売るか」という商売の基本を徹底し、トライアンドエラーを繰り返しました。
「取り寄せて比べたい」ニーズを満たすべく、オムニチャネル化へ
――その後、ジュエリーだけでなく時計などもECで扱う商品を広げられ、Web事業部という部門横断の組織を立ち上げ、オムニチャネル化を推進されました。実店舗とECを融合させる道のりは、どのような背景から生まれたのでしょうか。
大前提として、オムニチャネル化に踏み切ったのには3つの理由があります。1つ目は、中古品特有の「商品を見たい」という顧客ニーズです。たとえば同じ型番の時計でも、在庫が10個あれば10個とも状態が違います。消費者としては、実物を見て状態を確認したいと思うのが当たり前ですよね。
2つ目は、そのユニークな在庫をEC専用の倉庫に眠らせておけないという点です。基本的には、店舗にある商品をECでも同時並行で販売せざるを得ない状況でした。
3つ目は、EC専業で高額なブランド品を売ることへのハードルの高さです。ECだけで完結させようとすると、傷の状態などの細かい記述や大量の画像掲載など、オペレーションの負荷が膨大になります。
それならば「画像を数枚載せておくので、あとは店舗で見て買ってね」というコミュニケーションのほうが、会社としてもコストが下がり、効率的だったのです。
――なるほど。顧客目線と会社の課題解決が見事に一致したわけですね。
この話で大切なのは「顧客解像度をどこまで上げるか」です。たとえば、当時の社内では「何個も商品を取り寄せたら送料がかかる」といった会社都合の意見も出ました。
しかし、お客様からすれば「1つだけでなく、複数取り寄せて比較して買いたい」のが本音です。時計など長く使う高額商品は、比較できずに買うと「あの時、別のものにしておけばよかった」と心残りになります。お客様を中心に考えれば、何をすべきかは自ずと決まってくるのです。
