1兆ドル時代、OOHは街で何を担うのか
デジタル広告の伸びに支えられ、世界の広告費はついに「1兆ドル時代」へと突入しました。2028年には広告全体の75%がアルゴリズム主導になると予測されるなど、文字どおりAI時代が本格化しています。(世界の広告費成長率予測(2026〜2027)より)
しかし、こうした潮流の中で確かな存在感を放っているのがOOH(屋外広告)です。OAAA(全米屋外広告協会)が2026年6月に発表した最新データでは、米国のOOH売上は2026年第1四半期に過去最高の21.2億ドルに達し、20四半期連続の成長を記録。OpenAIをはじめとする生成AI関連企業が“リアルな看板”への投資を急伸させています。スクロールで飛ばせず、物理的に「そこにある」OOHの特性が、代替しにくい手段として再評価されているのではないでしょうか。
1兆ドル時代、OOHは街で何を担うのか。本稿では、2026年上半期に私が撮影してきた広告の中から特に注目した事例をピックアップし、現地の体験を基に考察していきます
「見られる」前提の没入型広告
OOH活用において持っておきたい選択肢が、視界そのものを物理的に覆ってしまう"見られる"前提の展開です。没入型広告とも呼ばれますが、ここ最近は空間全体を抑え込める媒体も増えました。
たとえば、4月に展開されたカロリーメイトゼリー アップルの広告では、渋谷駅の山手線ホームに向かう動線途中の階段で両サイド壁面と正面をジャック。この階段を使う人は、否応なしに「りんご」の巨大ビジュアルが目に入る展開となっていました。
同様に4月に大手町タワーで遭遇した、みずほフィナンシャルグループのブランド広告も圧巻。周辺には他の広告はなく、同社クリエイティブが独占状態。ブルーで空間全体を染め上げた展開となっていました。
2月に遭遇した、Netflix 渋谷リアル・イカゲームのOOHも印象に残っています。東急プラザ渋谷3階の会場に誘導する形でズラッと展開、国道246号の横断デッキでは、その壁沿いがすべて広告でジャックされていました。
多くのOOHは、歩行者に「見る・見ない」の判断を委ねます。ゆえに「見てもらうためにフックを作る」ことに労力を使いますが、これら事例のように、空間を丸ごと押さえてしまえば(=その場所に自社しか広告がない状況を作れば)、「気づいたら見ていた」という状況を作り、ほぼ全員の視界に入れられます。
また「見られる」前提なら、クリエイティブから「フック」の役割を外せるので、結果的にシンプルに伝えたいことにフォーカスできる利点も。クリエイティブ制作費を媒体費に回して、面の規模感を担保……といったリソース配分もぜひ検討してみてください。
