会話の「文脈」そのものを捉えて広告を配信する、新たな生成AI広告の幕開け。DMIセミナーの議論をもとに、江端氏が生成AI広告の未来と針路を解説する。前編では基礎編として、ChatGPT広告の具体的な国内展開スケジュールや、従来の検索広告との違いである「会話文脈」の重要性とその設定機能について整理した。続く後編である本稿では、実際の広告運用において生じる入札やレポートの課題と解決策、そして「親密なデータ」の商用利用がはらむ倫理的リスクやブランドセーフティについて深掘りする。AIと生活者の信頼関係の狭間で、広告主は明日からどう動くべきなのか。
★前編はこちら
ChatGPT広告の「運用上の課題」と「解決策」
前編では、ChatGPT広告における会話文脈の設計として「Context Hints」をいかに入力するかが、今後の広告運用における最大の差別化要因になることを述べた。では、実際にこの新しい広告を運用していくにあたり、現場ではどのような課題が生じ、どう解決していくことになるのだろうか。
セミナーでは続いて、Shirofuneの菊池満長氏より、ChatGPT広告運用の具体的な課題3点が挙げられた。
1つ目が、入札・予算管理。現時点では広告グループ別で手動入札調整が必要であり、日予算の2倍まで利用されてしまう可能性もあると説明された。2つ目が、レポート・分析だ。管理画面上では、日別、週別、月別、期間比較などの分析が十分にできず、分析できる切り口が限られているという課題がある。3つ目が、アカウント構成。広告グループごとのContext Hintsの設計や細かい設定には手間がかかる。
入札・予算管理、レポート・分析の具体的な対策には、菊池氏がShirofuneを一例とした支援ツールの活用を挙げる。同ツールでは入札と予算管理の自動化、様々な切り口でのレポート・分析を可能にし、さらにAIで要因分析などを行えるという。また、アカウント構成に対しても、Google広告などで成果の良いクエリをもとに、Context HintsをAIで自動作成・入稿する構想も紹介された。広告ごとの細かい設定は必要であるが、そこもAIを活用したソリューションが出てくるだろうと筆者は期待している。
計測面において、現時点の管理画面やレポート項目は、従来のデジタル広告に近い部分が多い。一方で、ChatGPT広告において何を成果として見るべきかについては、セミナー内でも「これから議論していく領域」として扱われていた。
パネルディスカッションでは、従来のCPAやCPCだけで評価するのではなく、認知、比較検討、購入といったファネル全体の中で、ChatGPT広告がどこに効いているのかを見ていく必要があるのではないかという問題提起があった。また、登壇者からは「KPIを発明する」という表現も出ており、会話型AI上の広告にふさわしい新しい評価軸は、今後の実践の中で作られていくという印象だ。
現時点では、クリックが発生すれば、その後の行動を一定程度追うことはできる。一方で、ChatGPT上で広告を見たもののクリックしなかったユーザーが、後に別の経路でサイトを訪問した場合、その接点をどう評価するかは難しい。今後は、直接クリックだけでなく、アトリビューションやインクリメンタリティのような考え方も含めて、ChatGPT広告ならではの効果測定が議論されていく可能性がある。
AI上に出る広告のリスク:信頼性・透明性・ブランドセーフティ
SEARCHLIGHTの瀬戸亮氏は、AI上に広告が表示されることのリスクについて、信頼性と透明性の観点から問題提起を行った。AIサービス側に広告が組み込まれることで、構造的に2つの問題が発生すると整理した。
1つ目は、「親密なデータ」の商用利用に関する倫理である。AIはユーザーにとって、何でも相談できる親密な存在になりつつある。そのやり取りの履歴をベースに広告が提示されることに対して、プライバシーや心理的安全性の問題が生じ得る。
2つ目は、経済的インセンティブと安全性のジレンマである。広告収益モデルを採用することで、プラットフォーム側には構造的にユーザーのエンゲージメントを高めようとするインセンティブが働く。そのとき、ユーザー体験や安全性をどう守るかが課題になる。
瀬戸氏はこれを前提に、AI広告が価値を提供するためには、「2つの信頼関係」が必要であるという意見も示す。
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江端 浩人(エバタ ヒロト)
iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問
米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...
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