マス広告からの脱却と、統合マーケティングへのシフト
MarkeZine:はじめに辛ラーメンの日本市場におけるマーケティング方針の変遷と現在地を教えてください。
鄭:弊社は今でこそSNSやリアル体験を中心としたコミュニケーションを重視していますが、最初からそうだったわけではありません。2002年に日本法人ができた当初はまだブランドがほとんど認知されていなかったので、テレビCMやスポーツ協賛、新聞広告、韓国アイドルとのタイアップなど、マス施策を中心に展開していました。
ただ、時代の変化とともに、消費者が接触する媒体も変わっていきます。当社も潮流に合わせて、徐々にデジタルマーケティングへとシフトしてきました。現在はSNS上でのUGCなど、消費者のリアルな体験や発信を軸にしたコミュニケーションに重心を移しています。
ポイントは、マス広告かそれ以外か、リアルかデジタルかで分断せず、全体での相乗効果を狙うこと。統合マーケティング(IMC)を基本思想とし、「売れる環境づくり」を目指しています。
MarkeZine:売れる環境づくりとは、具体的にどういったことでしょうか?
鄭:たとえば、どれだけSNSで商品が話題になっても、店頭に配荷されていなければ購買にはつながりません。やみくもにマーケティング施策だけを走らせても、予算が消滅してしまうだけです。物流や小売の現場と連携し、消費者が購買できる環境を作ることが第一。そのうえで、認知、購買、トライアル、リピート、拡散といった一連の流れを統合的に設計し、マーケティング施策を組み立てています。
消費者が見つけてくれた価値を、ブランド側が広げていくUGC施策
MarkeZine:辛ラーメンはアレンジレシピ投稿などのUGC発信が盛んです。活発なUGCの裏には、どのような仕掛けがあるのでしょうか?
鄭:実は、アレンジレシピのUGCについては、当社が何か仕掛けたわけではないのです。消費者が辛ラーメンのアレンジを楽しみ、自ら発信し始めたものであり、当社にとっては「消費者に見つけてもらった価値」とも言えるでしょう。
UGC施策において、我々が意識しているのは「UGCの環境を整えて、さらに後押しする」ことです。お客様の発信がより広がるよう、ブランド側が投稿を拾い上げ拡散する。それを新たなお客様が発見し、「自分もやってみようかな」とさらにUGCの輪が広がっていく──このようなサイクルで多くの人がアレンジレシピを軸にしたUGCの輪に参加し、自然なコミュニケーションが形成されていったのだと思います。
また、人気のあるアレンジレシピは商品化することもあります。クリーミーでなめらかな「辛ラーメン ロゼ」やピリ辛のクリームパスタ「辛ラーメン トゥーンバ」も、お客様側から生まれたアイデア(レシピ)でした。UGCには、ファンのみなさまのリアルな声をキャッチする役割があり、それは商品開発にも活きています。
【右】「辛ラーメン ロゼ カップ」:農心ジャパン公式レシピの人気No.1のアレンジメニューをより手軽に味わえるように製品化
MarkeZine:ラーメンを自分好みにアレンジするスタイルは、もともとあったのでしょうか?
鄭:辛い食べ物が多い韓国にも、辛い物が苦手な人はいるので、「牛乳で割る」「卵を入れる」などマイルドにするアレンジはもともと盛んです。また、小皿で複数の調味料を混ぜて自分好みのタレを作ったり、スープを自分好みの塩加減にしたりと、韓国料理には味を自分好みにカスタマイズして楽しむ食文化があります。昨今は「モディファイ(修正する)」と「コンシューマー(消費者)」をMixした「モディシューマー(アレンジレシピを楽しむ消費者)」という言葉がトレンドになっているほどです。最近は日本でも若年層を中心に広がりを見せていますよね。
