ソーシャルメディアを中心としたユーモラスな施策が注目を集め、世界最大級の学習アプリへと成長を遂げた「Duolingo」。だが大きなインパクトを生み出すマーケティングチームは、人数も予算もコンパクトだ。大胆な施策を次々と展開し成果を生み出していく秘訣を、最高マーケティング責任者(CMO)のマニュー・オーサード(Manu Orssaud)氏にインタビュー。少数精鋭チームを活かす組織マネジメントと、「スライド4枚で完結」という具体的な意思決定プロセスに迫った。
世界No.1語学アプリ「Duolingo」CMOの哲学
40以上の言語を学ぶことができる、世界最大級の学習アプリ「Duolingo」。学習時のモチベーション維持のためにゲーム的な要素を盛り込むなど、楽しく学べる仕組みが特徴だ。
「Duolingo」とは?
「誰もが利用できる、世界最高の教育を開発する」をミッションに掲げる語学学習アプリ。英語や韓国語など40以上の言語で、合計250以上のコースを基本無料で提供。全世界で、教育アプリのダウンロード数では世界1位を誇る。

Duolingoの成長を裏で支えてきたのが、全世界で約60名からなるマーケティングチームだ。売上の10%以下と限られた予算を活用し、注目を集める施策を世界中で展開して高い成果を上げるチームを牽引するのが、最高マーケティング責任者(CMO)のマニュー・オーサード氏だ。
オーサード氏はソニー・インタラクティブエンタテインメント(PlayStation)、Spotifyを経て2020年にDuolingoに参画。現在はCMOとして、Duolingoの利用者増加とブランド構築を担っている。そんなオーサード氏の哲学は、「最高のマーケティングは、メディアに頼らずともオーディエンスを見つけられる」というものだ。
失敗から学んだ、メディアに頼らない「アイデア至上主義」
この哲学に至るまでには、数々の試行錯誤があったという。Duolingoブランドを立ち上げた頃には、世界各地でテレビCMキャンペーンを展開した時期があった。しかし多額を投資したにもかかわらず話題にならず、「人々との感情的なつながりという重要な要素が欠けていた」と気づく。
そこで、自社のアピールを前面に出さない、親しみやすさを重視した内容をソーシャルメディアで発信する方針に転換。人々が関心を持つことにDuolingoブランドを自然に溶け込ませることで、テレビCMよりはるかに大きなリーチを獲得できるようになった。
「試行錯誤を繰り返しながら、何が効果的なのかを見極めて注力してきたことが、今の私たちにつながっています。中長期の戦略に基づいたプランではありませんでした」とオーサード氏は振り返る。
こうした経験から行き着いたのが、「出発点は常にアイデアから。そして人々が関心を持つものに訴えかけるべき」という考え方だ。ブランド構築で大切なのは、オーディエンスを見つける手段としてメディアを使うことではない。ペイドメディアを検討するのも「非常に強いアイデアがある時のみ」だと語る。
「良いアイデアが広まって、支持してくれる人々の獲得につながる。このこととブランド構築には、相関性がある」という信念から、指標としてはオーガニックリーチとオーガニックインプレッションを最も重視している。そして現在、Duolingoの新規ユーザーの増加分は、5割がクチコミ経由によるものだ。残りはマーケティング活動による獲得で、そのうちの3割がソーシャルメディア経由だという。
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田崎 亮子(タサキ リョウコ)
マーケティング&コミュニケーション領域の編集・執筆・翻訳を手掛ける。コミュニケーション領域の専門誌編集、コーポレートコミュニケーション領域の制作会社を経て、現在はフリーランス。
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