購買に効くSNS運用の在り方をデータから検証する
広告・マーケティング施策の評価軸は、長らく「どれだけのリーチを獲得したか」に置かれてきました。テレビCMのGRPからデジタル広告のインプレッション、さらには近年のインフルエンサー施策に至るまで、媒体の変遷に関わらず、その中心にあるのは常に「リーチ量」です。
一方で、食品や日用品をはじめとする消費財メーカーにとって、売上の主戦場は依然としてオフラインのリアル店舗です。「そのデジタル施策は、最終的に店頭のPOSを動かしたのか」「同じ再生数でも、実際の購買への寄与に差はあるのか」という本質的な問いに対し、オンラインとオフラインのデータ分断が壁となり、根拠をもって答えられるケースは決して多くありません。
本稿では、「デリッシュキッチン」が展開するSNSショート動画タイアップの実績と、首都圏エリアの大手食品スーパーチェーンにご協力いただき、そのID-POSデータを掛け合わせた独自分析をもとに、「SNSのリーチが実購買に寄与する条件」を再定義します。
「バズ」は店頭を動かすのか?データが示す確かな相関
まず検証したのは、「SNSでの情報発信が、本当に店頭での購買に直結しているのか」という根本的な疑問です。
「デリッシュキッチン」の公式SNSアカウントで配信したショート動画タイアップを対象に、全プラットフォーム合算の再生数と、ご協力いただいた食品スーパーのPOSデータから算出した「動画で紹介した商品」の売上実績を突き合わせ、売上リフトを確認しました(売上リフト:対象商品の配信前2週間の売上を100とした場合における、配信後2週間の売上指数)。
結果として、両者の間には統計的に有意な正の相関(相関係数 r=0.504, p≈0.005, n=29)が確認されました。オフラインの実売データにおいては、非常に強いシグナルだと言えます。
店頭の売上というのは、天候や特売、競合の動き、棚割りといった無数のノイズに左右されます。そんな外的要因だらけのオフライン実売データにおいて、単一のSNS施策だけで「0.5超」の相関が出るのは極めて稀なケースです。p値が約0.005という水準は、仮に再生数と店頭売上の間に本当は相関がないとした場合、これほどの相関が偶然観測される確率が0.5%程度しかないことを示しています。これは統計学的な有意差を判断する際、より厳しい基準とされる1%水準すらクリアしており、偶然では説明しにくい結びつきがあると言えます。
つまり、POSデータは「再生数が伸びた施策ほど、紹介した商品の店頭売上も連動して動いている」という事実をはっきりと捉えていました。
とはいえ、この結果だけで「とにかく再生数さえ稼げばモノは売れる」と結論づけるのは危険です。果たして、同じ「100万再生」を獲得したコンテンツであれば、常に同じだけの売上リフトを生み出せるのでしょうか。
では、この数値をさらに分解していきましょう。
