最前線で活躍する企業SNSのマーケティング責任者・運用担当者に、マーケティング戦略におけるSNSの位置づけと具体施策を聞く新連載。第1回は、馬の被り物をした「わかさ生活」の中の人が転職したことで話題になった、電子契約サービス「GMOサイン」が登場。BtoBサービスのSNSアカウントが、どのように事業貢献を目指しているのか。また、Xのアルゴリズム変更による逆風が吹く中で、試行錯誤から導き出されたヒントをお届けする。
今回の取材先:「GMOサイン」
「GMOサイン」は、GMOグローバルサイン・ホールディングスが運営する、電子契約サービス。上場企業の84%(※1)が利用し、国内シェアナンバー1(※2)。紙の契約書に代わり、電子文書への署名・捺印をオンラインで完結する。
SNSは、Xを2アカウント運用。うち、GMOサイン公式(@GMO_Sign)をわかさ生活のX運用担当者だった中の人が、2025年より担当。外部のパートナー会社は起用せず、GrokやClaude、ChatGPTなどのAIツールを用いて1人体制で運用中。
(※2)指定条件下の契約累計送信件数。GMOリサーチ&AI調べ(2024年12月)
GMOサインのマーケティング戦略におけるSNSの役割
──GMOサインといえば、2025年に「わかさ生活」の中の人が転職したことで話題になりました。マーケティング戦略の中で、SNSはどういう役割を担っているのでしょうか?
岡本:ローコストで認知率を上げる施策の1つとして、SNSとオウンドメディアを活用しています。当社と競合の指名検索数を比較すると、残念ながらまだ差がある状況です。本来であればマス広告でその差を埋めたいのですが、予算確保が難しいのが実情です。
岡本:SNS運用は、テレビCMなどのマス広告と比べると圧倒的にコストがかからない反面、単体での効果は限定的です。ただ今は、「SNSが育っていない状態でマス広告を打っても、十分な効果は出ない」と考えています。
そのことを実感したのが、2023年頃にGMOインターネットグループ全体で新聞一面広告に出稿した際の出来事です。出稿タイミングに合わせ、わかさ生活(当時、馬が「中の人」として運用)とGMOサインでコラボ投稿を行いました。事前にインプレッションを積み上げた状態で広告のリポストを上げたところ、グループ内でSNSに最も力を入れていたGMOサインが、最も高い反響を獲得したのです。
出稿日とその翌日には指名検索数が増加し、日経新聞の広告をまとめて紹介するSNSアカウントでも、インプレッションとエンゲージメントが通常投稿の10倍近くに跳ね上がりました。
この経験から改めて感じたのは、「口コミが生まれる場所」がSNSに移ったということです。10年前は印象的なCMが職場や学校で話題になっていましたが、今はそういう光景をあまり見かけなくなりました。マス広告だけでは話題化が難しく、公式アカウントの存在感が薄いと、広告が生んだ口コミの需要をうまく受け止められません。
また、SEOがAIに侵食され始めている現状を踏まえると、消去法的な意味でも、SNSの重要性はこれからさらに高まっていくのではないでしょうか。
BtoB企業におけるSNS運用のゴール設定と追うべきKPI
──SNS運用のゴール設定と追っている指標を教えてください。
岡本:最終的なゴールとしては「指名検索数の伸長率」に最も重きを置いています。前述の通り、マス広告に投じる予算が限られている中で、ローコストで認知を上げる手段として「SNS」「オウンドメディア」「プレスリリース」の3つを重視しています。これらをうまく組み合わせて相乗効果を生み出し、指名検索数を伸ばしていくのが狙いです。
そのため、SNSアカウント単体での指標としては、「インプレッション」と「エンゲージメント」を追っています。
──フォロワー数は、指標にしていないのですね。
岡本:はい、入れていません。私たちの最終目標は「認知を上げること」なので、毎回の投稿でしっかりとインプレッションを獲得し、「GMOサイン」という名前を目にする人を増やすことが重要だからです。極端な話、30万人のフォロワーがいても、1投稿のインプレッションが1,000しかなければ意味がありません。
また、フォロワー数を目標にすると、フォロワー獲得のためのキャンペーンを連発したり、エンゲージメントファーミングに力を入れ過ぎたりしがちです。そうなると、キャンペーンの時にしかインプレッションが増えず、Xのアルゴリズム上でも「価値のないアカウント」とみなされてしまうという、本末転倒な状態に陥ってしまいます。
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竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)
早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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