高広伯彦氏による連載「B2Bマーケティングの教科書」がスタートします。B2Bマーケティングの「基本」を解説する書籍が数えきれないほど出版されている中、高広氏が「(B2Bマーケティングの)教科書」を書こうと思ったのはなぜなのか? 連載の序章として、執筆の背景と以降の連載のスタンスを示します。
世の中はすべてB2Bでできている、にも関わらず…
産業ネットワークは複雑であり、単純にB2CとB2Bを明確に分けるのは困難だ。また日本国内においてもそれらを明確に分けた産業統計が存在せず、グローバルでも包括的な統計が存在しないため、両者の市場規模を厳密に比較することは非常に困難である。
数少ないソースに頼ることになるが、海外のマーケティングコンサルタントによる算出やMBA他いくつかのソースによると、B2B市場はB2C市場よりもはるかに大きく、そのサイズは1.5〜2倍とされている(Vlems, 2015; Knowles, 2020)。そうした市場規模が想定されるので、たとえばインド工科大学のMBAにおけるB2Bマーケティングの授業は、「B2Bマーケティングを学ぶことは、B2Cマーケティングよりも遥かに就職の機会とビジネスチャンスの面で有利である」というイントロダクションから始まっている。
日本国内においても、町工場のレベルから大企業まで多くのB2B企業が存在している。たとえば、生活者として慣れ親しんでいる一般消費財のメーカーも、その製品を生産するために他の企業から原料や部品、製造機械を購入し、また製品を最終消費者に届けるために卸売業者や小売業者などの中間流通業者、輸送業者などが介在しており、B2B取引を不可欠なものとして行っている。
このように普段B2C企業と考えている企業であっても、製品やサービスの生産・販売にはB2B取引が前提条件として存在しており、企業(Business)と消費者・生活者(Consumer)との関係性以上に、企業(Business)と企業(Business)の関係のほうが数も多く複雑なものなのである。「サービス・ドミナント・ロジック」の提唱者である S.L.Vargoと R.F. Luschの論文のタイトル(“It's All B2B…and Beyond.”)を借りれば、「世の中はすべてB2Bでできている」のであり、その中にB2Cが存在すると考えるほうが道理に合う (Vargo & Lusch, 2011)。
しかし、それほど重要な社会・経済的な活動であり、産業構造であるにもかかわらず、B2B取引におけるマーケティング=「B2Bマーケティング」に関しては、実務家が体系的に学べる機会が非常に少ない。
日本国内の大学、特にビジネススクールにおけるプログラムを調べてみたところ、実務家をゲストや客員待遇で講師としているところはあれど、専任教員を置いてB2Bマーケティングの授業が開講されているところはほぼない。また、そうした講座のシラバスを見ると、「ある実務家の経験と知識の”範囲”でのプログラム」となっており、国内外のマーケティングや経営学の研究者が培ってきた研究成果が反映されておらず、ある時、ある場面での知恵や知識の提供にしかなっていないように思える。
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高広 伯彦(タカヒロ ノリヒコ)
博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、電通、Googleを経て2009年に独立。コミュニケーションプラニングや事業開発支援を行う一方、2012年にアジア初のHubSpotパートナーとして株式会社マーケティングエンジンを設立。2013年・2014年と2年連続International Agency of the Y...
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