米国最新情報レポート「MAD MAN REPORT」を毎月発刊している榮枝洋文氏の視点を借り、国内外の企業の動きやグローバルの潮流を解説している本連載。今回は、「グローバルプラットフォーマーの広告収益激増」という変化にフォーカス。これを入り口に、いま広告市場で起きている地殻変動を読み解いていく。
プラットフォーマー5社で広告収益31兆円純増の衝撃
「生成AIが普及すれば、検索広告は減る」――2024年から2025年前半にかけて、そうした見方が市場を支配していた。AI Overviewsが検索結果の上位を占有し、ユーザーは企業サイトやデジタル広告をクリックしなくなる。いわゆる「ゼロクリック検索」が進み、広告露出の課金は痩せていく。そのはずだった。
ところが、いま起きているのは“ま逆”の現象である。Alphabet、Meta、Amazon、Microsoft、TikTokの5社が直近の3年間で積み上げた「広告」関連収益は、合算で約60.7兆円(4,046億ドル)から、約92.3兆円(6,152億ドル)へ。約31.6兆円(2,106億ドル)もの激増が起きている(図1参照、以下本文のドル円レートは一律1ドル150円)。
電通の「日本の広告費」によれば、日本の総広告費は2025年時点で約8.1兆円だった。つまり、たった5社が3年で積み上げた広告純増分だけで、日本の広告産業まるごと4年分の規模が新たに生まれた。
AWSやGoogle Cloudなどのクラウド事業や、EC事業を除いた「広告収益」に絞った金額だけで、この巨額度合いだ。これは「米国の広告が好調」という対岸の出来事ではない。広告予算という「財布そのものの定義」が変わりつつあると読める。ここから、新しい「AIアテンションエコノミー」を解剖していこう。
広告費が「別腹の財布」で膨らむ
広告関連収益の伸び率で成長を引っ張っているのは、TikTokの+184%、Amazonの+81%、続いてMetaの+72%。Google本体の検索広告・YouTube広告も2桁成長を維持している(図2参照)。
一方で、Google Networkセグメント(AdSenseなど旧来型のサードパーティ広告誘導課金)は3年で-9.1%縮小となっている。ゼロクリック化の影響を受けているのは、まさにこの縮小部分だ。つまり、同一プレイヤーの中で、旧来の広告誘導モデルは痩せ、AIにより近い広告費が太っている。広告市場全体が縮んでいるのではなく、重心がシフトしているのだ。
その上で、上振れ分はどこから流れ込んでいるのか。ひとことで言えば「別腹の財布」である。
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榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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