先週、あなたのブランドはAIに何回引用されたか?
AIがビジネスの発展に欠かせなくなったにもかかわらず、「自社ブランドがAIにどう評価されているか」を即答できるマーケターはいまだ少ないだろう。
実態は急速に変化しつつある。AIエージェント経由のトラフィック増加率は過去1年で7,851%増と驚異的な伸びを示し、Cloudflare CEOは「2027年にはbotのトラフィックが人の訪問を上回る」と予測した。加えて、AI経由の訪問は、非AI経由の訪問よりも37%価値が高いというデータまで出ている。
つまり、AIの浸透がもたらしたのは単なるアクセス増ではなく、「人間がAIと会話した結果、ブランドサイトに訪問する」という新たな経路が確立されたことを意味する。
アドビの阿部氏は「ポイントは『AIが答えを出す』点にあります」と語った。SEOとの本質的な違いは、AIの提案するリストから外れた瞬間、そのブランドは「存在しない」も同然になるということだ。
低順位でも可視性がゼロにならなかった従来の検索とは、質的に異なる競争原理といえる。今後、エージェンティックコマースの普及により、この「訪問前フィルタリング」の影響範囲はさらに広がると見られる。AI時代のブランド戦略は「検索結果に並ぶ」ことから「AIの回答に組み込まれる」ことへシフトしているのだ。
こうした状況を踏まえ、阿部氏はセッションのテーマである「ブランドビジビリティ」を人間とAI、双方に対する可視性と定義。感情に訴えるコンテンツと構造化データ、どちらか一方への偏った最適化ではなく、両立を図ることが今後のブランド戦略における核心的な課題になると述べた。
この課題への具体的なアプローチとして、阿部氏は世界のマーケターやビジネスリーダー約14,000人が集ったアドビ主催のグローバルカンファレンス「Adobe Summit 2026」での発表事例を参照しながら、セッションを展開した。
優良レビュー500件。でも、AIは「存在しない」とみなした
まず、AI向けのビジビリティとしてゼネラルモーターズの事例が紹介された。同社では現在地の把握に取り組むべく、「Adobe LLM Optimizer」の「AI Content Visibility Checker」で自社サイトを診断。その結果、根本的な問題が明らかになった。
500件の優良レビューがWeb上に存在していても、JavaScriptコンポーネントに包まれていればAIには認識されない。人間向けに最適化されたインタラクティブなサイトはAIの視点からは“空白同然”であり、ビジビリティスコアはわずか17%にとどまっていたのである。
そこでゼネラルモーターズが実施したのは、まず「AIに読まれる状態にすること(Edge Content Optimization)」。CDN(Content Delivery Network)を活用したアクセスの振り分けである。人間からのアクセスはそのまま通常サイトへ誘導し、LLMからのアクセスにはJavaScriptを事前レンダリングした静的ページを返す。既存のWebサイト本体のシステムやCMS側のコードを書き換えることなく、最前線のサーバー層で人間とAIへの出し分けを完結させたのだ。これによりビジビリティスコアは17%から100%へと改善された。
また、地域別オファーの検索では「ゼネラルモーターズがまったく引用されず競合が表示される」という問題も判明した。原因は、地域別オファーの情報がユーザーの操作を前提とした仕組みになっており、AIが直接読み込める独立したページ(URL)として存在していなかったことにある。そこで既にAIに引用されているURLを特定し、郵便番号単位で静的ページを整備したところ、数週間でAIによる引用数が35%向上し、一部では競合を逆転する結果も生まれた。
阿部氏はここで、LLMビジビリティには以下の2つの階層があると整理した。
AIがページを読めるか(クロールでき、サイト構造を認識できるかという従来の技術的要件)
・意味的可読性:
AIが「このブランドは何に強いのか」「なぜ推奨すべきか」という文脈を理解できるか(AIエージェントの推奨判断を左右する要件)
「技術的可読性」はCMSとの連携により自動化が進む一方、「意味的可読性」は組織横断の取り組みなしには実現できない。ゼネラルモーターズの事例は、まさにその両面を示すものといえる。

