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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Autumn

MarkeZine Day 2026 Online(AD)

AIに引用されないブランドは「存在しない」も同然──アドビが示す、AIに選ばれ続けるための仕組み構築

 今やAIは消費者にとって身近な存在となりつつあり、あらゆる接点の文脈を蓄積し、次の提案・推薦に反映している。2026年5月に開催されたMarkeZine Day 2026 Onlineでは、クリエイティブツールの発展に30年以上携わってきたアドビの阿部成行氏が登壇。AIが人間の選択を仲介する新時代において、ブランド戦略のアップデートと、日々のマーケティング活動から得た知見を組織として活かす重要性を語った。

先週、あなたのブランドはAIに何回引用されたか?

 AIがビジネスの発展に欠かせなくなったにもかかわらず、「自社ブランドがAIにどう評価されているか」を即答できるマーケターはいまだ少ないだろう。

 実態は急速に変化しつつある。AIエージェント経由のトラフィック増加率は過去1年で7,851%増と驚異的な伸びを示し、Cloudflare CEOは「2027年にはbotのトラフィックが人の訪問を上回る」と予測した。加えて、AI経由の訪問は、非AI経由の訪問よりも37%価値が高いというデータまで出ている。

 つまり、AIの浸透がもたらしたのは単なるアクセス増ではなく、「人間がAIと会話した結果、ブランドサイトに訪問する」という新たな経路が確立されたことを意味する。

 アドビの阿部氏は「ポイントは『AIが答えを出す』点にあります」と語った。SEOとの本質的な違いは、AIの提案するリストから外れた瞬間、そのブランドは「存在しない」も同然になるということだ。

 低順位でも可視性がゼロにならなかった従来の検索とは、質的に異なる競争原理といえる。今後、エージェンティックコマースの普及により、この「訪問前フィルタリング」の影響範囲はさらに広がると見られる。AI時代のブランド戦略は「検索結果に並ぶ」ことから「AIの回答に組み込まれる」ことへシフトしているのだ。

アドビ株式会社 ジャパントランスフォーメーション本部 プリンシパルビジネスデベロップメント マネージャー 阿部 成行氏
アドビ株式会社 ジャパントランスフォーメーション本部 プリンシパルビジネスデベロップメント マネージャー 阿部 成行氏

 こうした状況を踏まえ、阿部氏はセッションのテーマである「ブランドビジビリティ」人間とAI、双方に対する可視性と定義。感情に訴えるコンテンツと構造化データ、どちらか一方への偏った最適化ではなく、両立を図ることが今後のブランド戦略における核心的な課題になると述べた。

 この課題への具体的なアプローチとして、阿部氏は世界のマーケターやビジネスリーダー約14,000人が集ったアドビ主催のグローバルカンファレンス「Adobe Summit 2026」での発表事例を参照しながら、セッションを展開した。

優良レビュー500件。でも、AIは「存在しない」とみなした

 まず、AI向けのビジビリティとしてゼネラルモーターズの事例が紹介された。同社では現在地の把握に取り組むべく、「Adobe LLM Optimizer」の「AI Content Visibility Checker」で自社サイトを診断。その結果、根本的な問題が明らかになった。

 500件の優良レビューがWeb上に存在していても、JavaScriptコンポーネントに包まれていればAIには認識されない。人間向けに最適化されたインタラクティブなサイトはAIの視点からは“空白同然”であり、ビジビリティスコアはわずか17%にとどまっていたのである。

LLMに認識されないコンテンツのイメージ
LLMに認識されないコンテンツのイメージ

 そこでゼネラルモーターズが実施したのは、まず「AIに読まれる状態にすること(Edge Content Optimization)」。CDN(Content Delivery Network)を活用したアクセスの振り分けである。人間からのアクセスはそのまま通常サイトへ誘導し、LLMからのアクセスにはJavaScriptを事前レンダリングした静的ページを返す。既存のWebサイト本体のシステムやCMS側のコードを書き換えることなく、最前線のサーバー層で人間とAIへの出し分けを完結させたのだ。これによりビジビリティスコアは17%から100%へと改善された。

 また、地域別オファーの検索では「ゼネラルモーターズがまったく引用されず競合が表示される」という問題も判明した。原因は、地域別オファーの情報がユーザーの操作を前提とした仕組みになっており、AIが直接読み込める独立したページ(URL)として存在していなかったことにある。そこで既にAIに引用されているURLを特定し、郵便番号単位で静的ページを整備したところ、数週間でAIによる引用数が35%向上し、一部では競合を逆転する結果も生まれた。

 阿部氏はここで、LLMビジビリティには以下の2つの階層があると整理した。

・技術的可読性:
AIがページを読めるか(クロールでき、サイト構造を認識できるかという従来の技術的要件)
・意味的可読性:
AIが「このブランドは何に強いのか」「なぜ推奨すべきか」という文脈を理解できるか(AIエージェントの推奨判断を左右する要件)

 「技術的可読性」はCMSとの連携により自動化が進む一方、「意味的可読性」は組織横断の取り組みなしには実現できない。ゼネラルモーターズの事例は、まさにその両面を示すものといえる。

コンテンツ爆増でブランドが見えない──コカ・コーラが直面した課題

 2つ目に紹介されたのは、人間向けビジビリティとしてのコカ・コーラの事例だ。同社が直面していた課題は、コンテンツの爆発的な増加である。AIによってSNSや広告があふれる中、FIFA(ワールドカップ)のような大型キャンペーンでさえ埋もれてしまう危機感を抱えていた。これはコカ・コーラに限らず、すべてのブランド企業が持つ根源的な問題といえるだろう。

 その突破口として同社が求めたのが、追加予算・追加人員なしでの郵便番号レベルのパーソナライズである。大型キャンペーンにおいてもブランドの一貫性を維持しながら、大量のコンテンツを制作・展開する仕組みを、既存の基盤を基に設計した。

 ポイントとなるのは、「Adobe Workfront」と「Adobe Experience Manager Assets」という2つの横断基盤を複数プロセスを横断する形でつなぎ、従来は手で行っていた作業をAIによって自律的に運用できる状態へと移行した点だと阿部氏は説明した。

 その結果、生産工程が93%改善、市場投入期間は95日短縮、キャパシティゲイン(組織の業務余力)49%向上という3つの目標を達成。劇的な成果を実現できたことで、PoCで証明した「数週間から数日への短縮」を、次のフェーズとして「数日から数時間」へ進化させることを目指す。

 コカ・コーラは「この変革はツールの変更ではなく、私たちのDNAの変革であり、働き方を再定義するものだ」と述べている。この言葉が示す通り、この取り組みは既存プロセスの部分最適ではなく、オペレーティングモデル全体のシフトによってもたらされたものである。

オペレーションを構築しても、今の組織で回せるかは別問題

 紹介されたゼネラルモーターズ、コカ・コーラの事例はいずれも「ブランドビジビリティ」という共通の課題に対応するものだ。エージェント向けは「AIに読まれない」、人間向けは「人の目に埋もれる」という問題の本質は異なるものの、ともに個別最適化をワークフローの自動化で実現する点で一致している。つまり、出発点の問いは別々でも、同一の運用モデルで2つの課題を同時に解決できることを意味する。

 ただし、こうしたオペレーションを自社組織で回せるかは別の話だ。実際、96%の企業がAIを試しているが、ほとんどが「ワークフローの隣にAIツールを置く」だけの“PoC地獄”から抜け出せていない。コカ・コーラの事例が示した通り、スケールには単なるツールやテクノロジー導入だけでは不十分であり、オペレーティングモデル全体のシフトが不可欠である。

 この課題に対する新しいオペレーションモデルとして、「Adobe Summit 2026」で発表されたのが「Experience Flywheel」だ。核心は「Sense(検知)」を起点に「Generate(生成)」「Reach(到達)」「Learn(学習)」のフェーズを循環させ、ブランドらしさをAIに蓄積させていくフライホイール効果にある。

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 ゼネラルモーターズもコカ・コーラも、共通しているのは「起点を変えた」点だ。「起点」を変えない限り、ブランドビジビリティの構造的課題は解決しない。ゼネラルモーターズは外部シグナルを起点に施策を展開し、コカ・コーラはグローバルキャンペーンにローカルニーズを取り込んだ。いずれも社内の内部要件ではなく外部からのシグナルを出発点としたことが、大きなポイントである。

ブランドらしさを構造化し、AIに継続的に学習させる

 AIと共に働く組織をどう構築するか。その問いに答えるためにAdobeが発表したのが「Adobe Brand Intelligence」である。

 AIと人間が共通のコンテキストを持ち、ワークフローの中で分業・判断・学習する組織への移行を実現するには、ツールの導入だけでは不十分だ。既存のメール配信ツールを入れ替えたり、画像生成ツールを部分的に使ったりするような「人間がツールを使って仕事をする組織」のままでは、スケールは生まれない。必要なのは、人間とAIエージェントが共通のコンテキストのもとでワークフロー全体を分業・判断・学習する組織モデルへの転換である。

 「Adobe Brand Intelligence」はその基盤となる仕組みだ。ブランドの明文化されたルールと、言語化されていない判断履歴・暗黙知を統合し、AIエージェントが生成・検証・予測に活用できる形へ変換する、モデル非依存の常時稼働インテリジェンスレイヤーとして設計されている。

 阿部氏が強調したのは、言語化されたブランドルールは氷山の一角に過ぎない点だ。レビュー時の修正指示やコメント、アセットへの注釈、却下された理由、例外的な承認とその根拠といった「判断の軌跡(Decision Traces)」の中にこそ、ブランドらしさの本質は宿っている。「Adobe Brand Intelligence」が差別化要素として着目するのは、最終的な制作物ではなく、そこに至るまでの人間の判断プロセスそのものを学習データ化する点にある。

 この仕組みは「Adobe CX Enterprise」のインテリジェンスレイヤーとして位置づけられ、Brand Visibility・Customer Engagement・Content Supply Chainという3領域を横断しながら、検知・生成・到達・学習という「Experience Flywheel」のサイクル全体を支える構造となっている。

 ブランドらしさを構造化してAIに継続的に学習させること。その仕組みをいかに組織の中に根付かせるかが、これからのブランド競争において企業が向き合うべき本質的なチャレンジだ。

「AIは忘れない」。その判断を、組織の仕組みが作る

 締めくくりとして、阿部氏は本セッションの内容を改めて整理した。まず、今回取り上げたブランドビジビリティには、人間向けとAI向けの2つの面があり、同時に対応していく必要がある。

 紹介されたゼネラルモーターズとコカ・コーラの事例は、実は同一の構造を持ち、一つのオペレーティングモデルで回せることが示された。その核心は「外部シグナルを起点とすること」であり、従来のデータドリブンの概念をさらに拡張し、GEO・SEOを横断する豊富なシグナルをリアルタイムかつ並列で処理することが求められる。2026年5月に発表されたSEOツールを提供するSemrush(セムラッシュ)の買収は、まさにこの包括的なシグナル処理能力を強化するための戦略的な一手だと阿部氏は説明した。

 そしてこのオペレーションを支えるのが、AIと共に働く前提に立った自己強化ループ「Experience Flywheel」である。消費者の傍らに存在する「外部のAI」と、組織の中で共に働く「内部のAI」。その両方に対して、ブランドが存在する理由と提供価値を正しく理解させなければ、価値あるアウトプットは生まれない。

 そして、その判断を形作るのは、組織が今日積み上げているものに他ならない。文脈(Context)・体験(Experience)・資産(Asset)の3つを日々蓄積する仕組みを持てているか──セッションの最後に阿部氏は問いかけた。

 「AIは忘れない。AIは、あなたのブランドを判断し続けています。その判断を形作るのは、あなたの組織が今日積み上げているものです」(阿部氏)

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:アドビ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/06/24 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50765