20年間変わらない、「誰かの課題を解決する」姿勢
──リクルートの直近20年の歩みを振り返ったとき、ブランド・事業として変わったこと、変わらなかったことをどう整理されますか?
「誰かの課題を解決する」存在であるという姿勢と行動、これが「変わらないこと」だと考えています。
一方で「変わったこと」は、解決の仕方や範囲の広がり、そしてその深さだと考えています。情報のフォーマットの多様化をはじめ、サービスのインターフェースの進化や各種技術の発展により、「解決できる誰かの課題」は広く深くなっていると感じます。
Whyは変わらず、WhyのためのWhatやHowは変わってきた、と捉えています。
2008年リクルート入社後、Googleを経て再びリクルートへ。旅行、住宅、SaaS、進学・教育支援など多様な事業領域でマーケティング責任者を歴任し、2025年4月より現職。
生活者それぞれの「コンテクスト」を捉える必要性
──一方、この20年で生活者を取り巻く環境は大きく変化しましたね。
生活者の変化を表すキーワードとして、「個性の顕在化」「思慮深さ」、そして「情緒的な価値への共感」といった要素が挙げられると考えています。
特定のメッセージが多くの生活者にとって同じように受け止められることはなく、様々であることが当たり前となっています。そのため、一方的かつ販促感の強いコミュニケーションは忌避され、生活者は好みのストーリーやコンテクストをもって行動するようになっています。
──マーケティングのコミュニケーション施策はこれに応じてどう変化しましたか。
広告やコミュニケーションのあり方自体も、柔軟に変化させていく必要性を感じています。そしてそれは、自然な変化であり、マーケティングとしてはより本質に向き合うことが求められる良い変化だと考えます。
たとえば、クリエイティブは多様化が進んだと考えています。これは生活者の個性がより強く顕在化していくなかで、様々なニーズに対し、提供できるベネフィットを選択し、コンテクストやデザインといった変数を合わせ、クリエイティブで表現していくことを強く意識してきたためです。
他にも、販促目的のメッセージ配信が積み上がるほど、既存ユーザーのサービス利用確率が低下していくことが分析から見えています。我々がしたいコミュニケーションではなく、生活者にフィットしたコミュニケーションを実現する仕組みづくりが重要だと考えています。
「今一度、本質と向き合う」すべての顧客体験にブランドの思想を
──これからの時代に向けて、チャレンジしたいことを聞かせてください。
「今一度、本質と向き合う」というチャレンジです。
私たちが提供するすべての顧客体験に、ブランドとしての思想を反映し、好んで選び続けていただける存在になる営みを突き詰めたいと考えています。
この営みの起点は、「どのような体験を提供すべきか」を考え直すこと。
マーケティングの現場では、どうしても「どう伝えるか」に思考が引っ張られがちです。ただ、私が向き合いたいのはその手前——私たちがユーザーに届けるべき体験とは何か、という問いです。
その定義さえ明確であれば、コミュニケーションの1つひとつに意志が宿る。逆に言えば、その定義から外れることはしない。数を打てば当たるという発想でコミュニケーションを量産するのではなく、サービスとして提供する価値を軸に、ユーザーのニーズと純粋に向き合う。
それが、好んで選び続けていただけるブランドになるための、唯一の道だと思っています。
──リクルートさんがつくる次の20年も楽しみです。ありがとうございました!
