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第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

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横山隆治氏が「新トリプルメディア」で示す、次世代広告の勝ち筋

 トリプルメディアといえば、「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」。こんなマーケターにとって当たり前の常識も、アップデートを迫られる時が来た。15年前にトリプルメディアを提唱した横山隆治氏は、2025年7月発売の著書にて、「新トリプルメディアマーケティング」を提唱する。本記事では、書籍発売に先立って5月に開催されたウェビナーの内容を紹介。新概念が「テレビ1強」の広告コミュニケーションからの脱却に有効な理由や、3つのメディアの役割などを、提唱者が直接解説していく。

記事最後には、ウェビナー時に寄せられた質問への回答も収録しています。時間の関係でお答えできなかった質問にも横山氏にご回答いただきましたので、ぜひ合わせてご覧ください。

今こそ「テレビ1強」のコミュニケーション設計から脱却を

 「某局のテレビCMを止めたが、売上に変化は見られなかった」──ある報道をきっかけにキー局のテレビCMを取り下げた企業で、この現実に直面しているマーケターもいるのではないだろうか。たった1局と言えども、主要な局からCMを取り下げたにも関わらず、売上に影響が出ないことが意味するところは大きい。

 もちろん、テレビCMの効果は短期的に見られるものではなく、これだけで「テレビCMは意味がない」と判断するのは早計だ。ただ、「この状況をきっかけに“脱テレビ1強”にいよいよ本腰を入れて向き合う企業は増えていくだろうし、今こそ従来の広告コミュニケーションを見直すべき時だろう」と横山氏は強調する。

 加えて、横山氏は「テレビの極端な高齢化」も指摘する。以下は、年代別にテレビCMとデジタル広告のインプレッションを比較した図である。注目すべきはテレビCMとデジタル広告の比率ではなく、「テレビを見ている世代の年代比率」だ。2018年には43.4%だった「60代以上」が2023年には58.3%へと拡大していることがわかる。

年代別の月間imp内訳(2018年推定) 
年代別の月間imp内訳(2023年推定) 

 「若年層を中心とした主要な年代には、テレビCMがほとんど見てもらえない時代に突入しています。この実態に即して、『テレビ1強時代の仕組み』から『脱テレビ1強の新たな広告コミュニケーションの仕組み化』に移行する必要があるのではないでしょうか」と横山氏述べる。

テレビが「主」から「従」になる時代、積み重ねるべきはSNSの評判

 続いて、横山氏は「まず伝えたいこと」として5つのトピックを提示した。

1、テレビ1強時代の広告コミュニケーション開発を見直す

 「テレビ1強」時代の終焉は誰もが認識しているはず。それにもかかわらず、代理店にまず「テレビCM案」を提案させ、その他の広告については「テレビCMの副産物」として素材を再利用している企業は多い。まずはこの構造に疑問を持つべき

2、SNS起点のコミュニケーション開発を思考する

 これまではブランド起点で伝えたいメッセージを作り、広げようとしてきた。だが、今や消費者に響くメッセージは、SNSの投稿から見えてくる時代だ。今後は一般消費者起点の「バズるフレーズ」をもとに、ブランド発信の「シズるメッセージ」を考えていく必要がある

3、従来の広告フォーマットだけで考えない

 かつて、テレビCMは数ヵ月間かけて制作し、年単位で使うようなものだった。しかし、「バズるフレーズ」には「賞味期限」がある。またそれを出すべき適切なタイミング・出稿面もダイナミックに変化していくため、これまでの広告制作の考え方からはアップデートしなくてはならない。

4、テレビは「主」から「従」になる

 従来「主」の存在であったテレビCM(リニアテレビCM)は、「補完」の役割になっていく。主軸はSNSやリテールメディア、ストリーミングTVなどだ。昨今のテレビCMは、1本単位で購入できるようになったり、インプレッション単位で取引できたりと、新しい選択肢が増加している。これを活かし、「補完」としてどう使うかを考えるフェーズに入った。

5、「ワンボイス・ワンメッセージ」から「最適なメッセージ」の動的配信へ

 かつて、「ワンボイス・ワンメッセージ」が通用したのは、「皆がテレビCMを1度は見ていたから」である。前提が崩れた今必要なのは、ブランドの統一感は保ちつつも、場面ごとにメッセージを最適化させていくことだ。

 加えて横山氏は、「テレビCMでの『コミュニケーションストック』による売上が期待できなくなった時代において、意識すべきはSNSによる『レピュテーションストック(評判の積み重ね)』である」と語る。

 「テレビは良くも悪くもマーケティングの時間軸が長いメディア。CMの効果はすぐに見えるものではありませんが、徐々に認知度やブランド力が積み重なっていき、継続的に売上の底上げに寄与します。テレビが見られなくなった現代において、これに代わる『ストック』の概念は、『SNSでの評判』に移り変わったと言えるでしょう」(横山氏)

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横山氏が考える「新トリプルメディア」

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/24 10:23 https://markezine.jp/article/detail/49231

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