なぜ「脱・全国一律」は進まないのか?現場を縛る「データ不足」と「勘頼み」
MarkeZine編集部(以下、MZ):昨今、デジタル化で「場所」の制約はなくなったと言われます。現場の実感として「全国一律施策」の限界を感じる瞬間はありますか?
篠木:確かにデジタルの普及で情報の伝達スピードは均一化されました。しかし、だからといって全国どこでも同じアプローチが通用するわけではありません。本来は地域ごとの特性に応じたコミュニケーションが不可欠ですが、業務効率化の観点から、どうしても地域性が軽視され、「平均的な施策」に落とし込まれる傾向にあります。
篠木:よくあるのが、全国一律のマスキャンペーンにおいて、クリエイティブの方言だけを変えて「ローカライズした」とするケースです。しかし、東名阪以外の地域において、その解像度で本当に生活者に響くでしょうか?たとえば、同じ宮城県内でも「仙台市」と「それ以外」では、同じシニア層でもライフスタイルが大きく異なります。企業側も地域特性があることは理解していても、それを裏付けるデータが不足していたり、分類の基準が曖昧だったりするため、結局は担当者の経験や勘に頼らざるを得ないのが実情です。
そこで私たちは、2025年度よりグループの垣根を超えた特別チーム「グループ戦略営業チーム」を立ち上げました。これは、総合広告会社である「オリコム」と、折込広告をルーツに持ちエリアマーケティングに特化したグループ会社「evolia(エヴォリア)」のメンバーによる混成チームです。広告×販促のシナジーと、組織の壁に縛られない機動力。このチームなら、従来の「勘と経験」頼みの手法を脱却し、データという「根拠」に基づいた精緻なエリアマーケティングが可能になります。
「勘」から「根拠」あるエリア施策へ
MZ:その根拠を導き出し、施策に落とし込むための具体的なメソッドが、御社の提唱する『ローカルデータドリブン設計』ということでしょうか。
鷹野:その通りです。ローカルデータドリブン設計とは、「全国一律」の発想では届かなかった生活者に対して、地域ごとに本当に効果的なメッセージと手段を届けるための仕組みです。「診断→設計→実装→検証」を一気通貫で行います。特徴的なのは、evoliaが長年蓄積してきた「町丁目単位」のエリアデータ(媒体浸透率・住民特性・来訪動線)をベースに、クライアントが保有する顧客データ(会員情報、アプリ利用ログなど)を掛け合わせる点です。
鷹野:さらに近年はGPSデータの活用が容易になったため、利用者の居住・移動情報や駅の人流データのような基盤的な情報も取得できるようになりました。エリアごとに「どんな人が住み(居住者)」「どう動き(移動者)」「どこに集まるか(来街者)」という三つの視点から光を当てるイメージで、生活者の実像を浮き彫りにします。
特に力を入れているのが、アナログ施策の効果検証です。デジタル広告では詳細な数値計測が当たり前ですが、交通広告や折込広告などのアナログメディアでは「これだけの乗降客数に向けて掲出しました」という“媒体スペック”の説明で終わってしまうことが多くありました。私たちはGPSデータを活用することで、アナログ施策であっても「広告接触後に実際に来店したか」というビフォーアフターの検証を可能にしています。「出しっぱなし」ではなく、確かなデータでエリア施策の価値を証明できる点が、多くのマーケターに評価されています。

