アプリ広告の効果計測を取り巻く課題
Meta東京オフィスでリアル開催された本イベントは、ユーザー一人ひとりの行動の多様化や流入経路の複雑化が進む現状を踏まえ、より適切なアプリ広告の評価手法を再考する場となった。「脱・ラストタッチCPI」をキーワードに、最新の市場環境を反映した効果測定をいかに実現するかが、各セッションを通してアプリ事業に携わるマーケター・担当者に共有された。
はじめにUNICORNの須藤恵輔氏とFacebook JapanのEllie Lee氏が、アプリ広告の効果計測・評価における現状と課題、そして今後考えていくべきことを語った。
まずアプリ広告では、正確な効果計測が非常に難しいことが課題となっている。計測の指標にはラストタッチアトリビューションが使われることが多い。だが、直接CV(クリックスルーCV)ではこの評価の起点となるクリックがユーザーの意思によるものか、誤クリックによるものか判断ができない。間接CV(ビュースルーCV)においても、どう表示された広告か、ユーザーに適切に見られているのかなどが可視化できず、態度変容を測ることは困難となる。

また、元々アプリをインストールするつもりだった人に表示された分など、広告の効果が過剰評価されている面もある。広告効果を高く見せるために、誤クリックの誘発や、過度なビュースルーの発生をさせるなどのアトリビューションをハックするような手法が使われている場合も存在する。さらにiOSのオプトアウト設定によって、約59%のインタラクションデータが欠落しているという調査結果もあり、データの正確性に欠けると言える。
それらに加えて、効果を測定するソリューションやメニューによって計測指標の定義がバラバラだったり、アトリビューションの内容によって判定の優先順位が異なったりするなど、広告効果を同じ基準で計測・比較できない課題があるのだ。
「CPI向上を目標にすると、広告効果を高く見せるアトリビューションのハックや不正確なデータによって、実際は効果の高くないところに誤って投資してしまうリスクがあります。アプリ広告が事業成長に貢献できているのか、ROI視点で見ることが大切です」(須藤氏)

正確な効果を計測する方法の一例として、広告の非接触者と接触者を比較することでコンバージョンリフトを測り、インクリメンタリティ(広告によるユーザーの純増)を指標にすることが挙げられる。また、統計学を用いてアプリ広告の貢献度を測るMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)という方法もある。
Ellie氏は「一つですべてを計測できる万能なツールは今のところ存在しません。ツールや手法ごとに得手・不得手があるため、複数を組み合わせて使っていくことが重要です」と、インクリメンタリティリフトの計測、ラストアトリビューションモデルによる計測、統計学を用いMMMを活用した効果計測、それぞれの強みを相互に活かしお互いの不足を補完し合うことが重要とした。

ラストタッチアトリビューションモデルのみでの評価への懸念
「MMPとMMMの理想的な融合、『次世代の広告効果検証PDCA』」と題したセッションでは、サイバーエージェントでゲームアプリのマーケティングを手掛ける家門真明氏が登壇。同社を支援するMetricWorks Japanの神田佑貴氏とともに、アプリ広告における現状の課題を踏まえ、チャレンジしている取り組みについて紹介した。
家門氏も、ラストタッチアトリビューションモデルでの評価によるアプリ広告の計測に課題を感じているという。たとえば、iOSがオプトアウトされるようになったことでデータが取りづらくなり、広告計測ツールで獲得したとされるコンバージョンを合算すると実際の獲得数をオーバーすることがあった。また、広告配信先として、Webサイトに比べてアプリメディアの効果が何十倍も良く出ることがある。サービスとの親和性が高いと考えられると想定したWebメディアよりも、あまり知られていないクーポンアプリで効果が高く出たことで、不審に感じることもあった。
「とある配信メニューのラストタッチアトリビューションモデルでの計測評価と、アプリストアによる実際の計測結果との比較では、170倍ほどの差が出る配信メディアがありました。計測ミスの可能性も疑いましたが、別の場所でも同じような結果が出たため、やはりラストタッチアトリビューションモデルはハックされやすい指標だと考えられます」(家門氏)
現在は、より確度の高い計測を実現できるように様々なチャレンジを続けているという。

