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マーケジン読書会

誰も登っていない山に、自社の名を刻め!ナンバーワンになるための「カテゴリー戦略」とは【お薦めの書籍】

 「このカテゴリーなら、このブランド」と顧客に想起され、選ばれ続けるためにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、ナンバーワンブランドを実現するための「カテゴリー戦略」について解説した書籍を紹介。“既存カテゴリーでナンバーワンになれないなら、新しいカテゴリーを創造する”という発想で、顧客の課題に応え価値を提供するポイントを見ていきます。

真っ先に想起されるブランドになるための「カテゴリー戦略」

 今回紹介する書籍は、『急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる』(クロスメディア・パブリッシング)。著者の田岡凌氏は、ネスレ日本で「ミロ」「ネスカフェ」といったブランドに携わるなど、外資系企業を中心に10年以上マーケティングを経験。現在はsusworkの代表として、事業戦略やマーケティング戦略の支援に取り組んでいます。

『急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる』田岡凌(著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)1,958円(税込)
急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる』田岡凌(著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)1,958円(税込)

 本書では、田岡氏が様々な事業のグロース戦略を支援する中で急成長を実現する企業が実践している「カテゴリー戦略」について紹介されています。同氏は「人々の頭の中で『〇〇と言えば、〇〇』と真っ先に浮かぶこと、それがカテゴリー戦略という武器の本質」と語ります。

 では、顧客に選ばれるブランドになるため、自社の提供する価値をきちんと届けるために、カテゴリー戦略をどうやって実践すればよいのでしょうか?

ナンバーワンになるためには、新たな市場を生み出すべし

 どれだけ素晴らしい商品を作っても、そもそも顧客に想起されなければ、選ばれることはありません。しかし、特定カテゴリーの中で人が思い浮かべられるのはせいぜい2~3種類ほどといわれます。その中に自社ブランドが入ることが重要ですが、特に後発の新規事業やスタートアップでは既存カテゴリーに食い込むこと、一番手のポジションを得ることは至難の業です。

 そこで田岡氏は、「既存カテゴリーでナンバーワンになれないなら、新しいカテゴリーを創造し、ナンバーワンを目指す」ことを提案。これこそが本書で扱われるカテゴリー戦略です。より具体的には、カテゴリー戦略は以下のように説明されています。

 深い顧客理解の上で見つけた、顧客が諦めている・言語化できていない潜在課題。自社だけが提供できる独自価値。これらをシンプルに結晶化させて、キーワードやイメージを社会に一気に浸透させること、結果として顧客に選ばれ続けること

 本書では、実際にカテゴリー戦略の成功事例として「骨伝導イヤホン」「食べるラー油」「クラウドカメラ」など、新たなカテゴリーでナンバーワンブランドを実現した事例も多く紹介されています。ブランドを初めて見た時、「その手があったか」「それなら欲しい」と感じた方もいるのではないでしょうか。

 徹底した顧客理解を土台に独自価値を生み、新たな市場を作り、そこでナンバーワンの座を確立する。このカテゴリー戦略より、顧客に選ばれ続けるブランドを実現できると田岡氏は説明します。そして、カテゴリー戦略は一定の再現性があるといいます。

新たな市場を作る5つの成功パターン

 それでは、実際にカテゴリー戦略を実行するため、新たな市場を見つけるにはどうすればよいのでしょうか。田岡氏は、カテゴリー創造の5つの成功パターンを紹介。成功ブランドは、これらのパターンが横断的・複合的に当てはまることが多いと説明しました。

(1)社会トレンドの浸透
例:健康志向の高まりという潮流を受け、生まれたグルテンフリーやナチュラルコスメ

(2)新価値の結合
例:クレヨンの色の定着性の良さとパステルの混色のしやすさという価値を両立した「パステル」

(3)業界構造の変革
例:顧客課題視点でタクシー業界の構造を大きく変えた「Uber」

(4)新技術・思想の普及
例:属人的なものと考えられていた営業活動を構造化できるものに変えた「Salesforce」

(5)まだ満たされない空白
例:満たされていなかった顕在ニーズを解決したライト層向けジム「chocoZAP」

 そして、カテゴリー戦略において重要な要素として挙げられるのは、徹底的な顧客理解です。「顧客も理解できていない、諦めている潜在課題を明確に捉えることが、カテゴリー戦略のすべての起点」と田岡氏は強調。インタビューなどを通して具体的なファクトを正確に認識し、顧客の課題を言語化していきます。

 続いてカギになるのが、自社の「独自価値」の定義です。顧客がリアリティを感じられる独自価値を明確化し、その価値を顧客がイメージできるようなキーワードを設計し、さらに価値を直感できるコミュニケーションを展開することで、新たな市場を生み出せるのです。

 このようにして一番手になれる新しいカテゴリーを作ることが、カテゴリー戦略の考え方となります。田岡氏が「誰も登っていない山に、自分の名を刻むこと」と表現するように、既存カテゴリーとは別の価値で課題を解決することで、顧客にとってのナンバーワンの存在になることができます。

 本書では、カテゴリー戦略の定義から実行のステップ、事例などを網羅して解説。勝ち筋を作るためのフェーズごとの施策や実践方法が、丁寧に解説された一冊です。顧客に選ばれ続けるポイントを学びたい、自社のブランドをナンバーワンにしたいと考えるマーケターは、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49431

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