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第111号(2025年3月号)
特集「CES 2025より テクノロジーで変わる社会、広告、マーケティング」

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人起点の顧客関係構築を考える

観戦の熱を保ち続けるには?無料招待やIPコラボは熱狂につながる?Jリーグが語るCRMとブランド戦略

 2024シーズンは1,254万人と過去最多入場者数を記録したJリーグ。大規模招待施策などで創出した新規観戦者を、いかにしてコアファンに変えているのか。JリーグのCRM戦略を統括する執行役員・事業マーケティング本部長の鈴木章吾氏と、マーケティング部長の竹渕祥平氏、選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」を運営する飯髙悠太氏に、JリーグにおけるCRM活用への向き合い方について語っていただきました。

【期間限定無料公開】この記事はプレミアム記事(有料)です。本来ご利用にはMarkeZineプレミアムのご契約が必要ですが、3月31日(月)~4月14日(月)の間、期間限定で無料公開しています。この機会にぜひ、プレミアムなMarkeZineのサービスをお楽しみください。MarkeZineプレミアムにご契約いただくと、すべての有料記事が読み放題になります。

観戦で生まれた心の炎を絶やさないために

――はじめにお2人について教えてください。

鈴木:私はキリンホールディングス、野村総合研究所を経て2022年春にJリーグへジョインしました。一貫してBtoCマーケティング領域のCRMやプロモーションに従事してきました。JリーグIDの活用やナーチャリング施策など、CRM戦略の統括を経て、2025年から執行役員・事業マーケティング本部長を務めています。

竹渕:私は約20年間ミルボンという会社に勤め、マーケティングやプロモーションなど様々な経験し、2024年よりJリーグにジョインしました。コロナ禍後の様々な制限が緩和される中で、鈴木が状況を整え、さあアクセルを踏むぞ!というタイミングですね。現在は、マーケティング部長としてCRM戦略の統括をしています。

公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 執行役員・事業マーケティング本部 本部長 鈴木 章吾氏と、同 事業マーケティング本部 マーケティング部 部長(兼)クラブサポート本部 クラブサポート 2部 竹渕 祥平氏の写真です
写真左:公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 執行役員・事業マーケティング本部 本部長 鈴木 章吾氏
写真右:同 事業マーケティング本部 マーケティング部 部長(兼)クラブサポート本部 クラブサポート 2部 竹渕 祥平氏

――Jリーグはデジタル共通基盤を整え、クラブとリーグが全体となりCRMをはじめマーケティングに注力されていますね。その背景を教えていただけますか。

鈴木:Jリーグは2017年頃からCRM基盤の構築に着手し、JリーグIDによる顧客データの収集と活用を行うなど、私が入社した2022年時点の段階で、他業界と比べても先進的な取り組みを実施していました。一方、クラブに関してはリソース不足によりCRM運用が難しいクラブもあれば、高度化してMA活用を推進しているクラブもあるなど、取り組みに差がある状況でした。また、Jリーグの関心度が経年で下降傾向にあり、ファンベースの裾野が広がらないという課題意識もありました。

 新規のファン・サポーターを増やすためには統合マーケティングが効果的だろうと、コロナ禍が明ける頃から、大規模な招待施策やテレビCM、新聞やデジタル、交通広告を開始。結果として年間で数十万人単位で新規のJリーグIDと新規スタジアム来場者を獲得できましたが、次のステップとして「新規ファンのアクティブ化・再来場施策を十分に実施できていない」という課題が顕在化しました。

 こうした課題については、全クラブのマーケティング担当者とリーグで会議体を形成し、戦略の共有やコミュニケーションを定常的に実施しています。新規ファン向けの課題に関してもこの会議体で議論をして、リソース不足により新規ファン向けのアプローチが難しいクラブに対しては、リーグがある程度まとめてCRM施策を実施する体制にしました。

――どのような取り組みをされているのですか?

鈴木:60あるクラブのうち、J2・J3クラブを中心に、約3分の2にあたる40クラブについては、リーグが新規ファン向け・離反層向けのシナリオを設定し、コミュニケーションしています。たとえば、初めてスタジアムに来るお客様には最初にスタジアム観戦のコツや魅力、スタジアムグルメ(以下、スタグル)の紹介、当日の入場方法などを伝えます。

 また、来場後には御礼と共に次の試合の割引券を提供したり、しばらく観戦に来られていない方にはクーポンを送付したりして来場をリマインドするといったシナリオもあります。

 徐々にシナリオを細分化しながら運用しており、年間で数万人のアクティベーションにつながっています。スタジアムでのリアルなコミュニケーションや体験向上施策はクラブが主体となりますので、リーグとしてはデジタル上での後方支援策として、こうした施策に注力をしています。

リーグが40クラブのナーチャリング施策を実施する理由

――40クラブ分のナーチャリング施策のシナリオを複数管理し、さらに今後もシナリオが増えるとなると、Jリーグの負担が多くなりすぎませんか?

飯髙悠太氏の写真です
株式会社 GiftX Co-founder 飯髙悠太氏

鈴木:確かにリーグ側の負担はやや重くなります。それでも60クラブに各担当を置いて、それぞれのクラブが個別のツールを導入して……とするよりは、リーグがまとめたほうが、トータルコストやリソースは最適化できるメリットがあると考えています。

 詳しい背景からご説明すると、近年ローカル強化戦略をとっており、各地域でのJリーグやクラブの露出がかなり増えています。

ローカル強化戦略による露出効果を示した図です
ローカル強化戦略による露出効果

 すると、単にクラブを認知するだけでなく、スタジアム来場に対して興味関心を持つ人も増えてきます。とはいえ、すぐに観戦に至るわけではありません。

 2023年頃に露出の最大化による関心の向上を行い、2024年より、いよいよ集客につなげる取り組みが本格化しました。具体的には、クラブごとに通常より多い入場者数を目標とする、集客注力試合です。普段の来場者が8,000人のクラブなら20,000人を目標とするような「フラッグシップ試合」を開催し、そこに関心を持った方に対して、無料招待やリーグのテレビCMなども活用して、まずは無料でスタジアムでの観戦を体験してもらうのです。この集客注力試合では、花火やスタグルなど、様々なイベントを実施しており、新規ファンの方にも楽しんでいただける工夫をしています。

 集客注力試合には、多くの新規ファンが訪れます。初めてサッカーを観戦した人の熱を冷まさないためには、CRMやナーチャリングが重要です。クラブとリーグで連携し、新規ファン向けのCRMやナーチャリング施策を強化することで、スタジアム再来場率を高められると考えています。

竹渕:リーグはあくまでも後方支援だと考えています。リーグが持つ資産や資源をいかにクラブが有効に活用していただけるかがポイントです。この点は常に意識していますね。

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/31 13:47 https://markezine.jp/article/detail/48271

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